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悪の組織
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正義のヒーローは基本単独か、少数の戦隊である、組織力をもって迅速に警視庁、放送局、電話局、発電所などの要所を、分散させた分隊で一斉に攻撃すれば対応しきれない。怪人という現代科学を超えた化け物を作り出せるオーバーテクノロジーを持つ悪の組織の実行部隊である、正義の味方には容易にボコられる下っ端戦闘員も拳銃一丁の通常の警察力では対応できるはずもなく、さらに憲法九条の制約下にある自衛隊などは都市の要所が攻撃されていると知りつつも上からの命令を待っている間に日本は制圧された。
そして、野党の大物政治家が悪の組織の総統と面談していた。
「なぜ、総理ではなく、この私を呼んだのかね」
「感謝を述べたかったからだ」
天才科学者であり、俗に言うマッドサイエンティストの総統はにやりと笑っていた。
「感謝? いくら野党とはいえ、民主的な手続きを経ていない侵略者を喜んで迎え入れると思っているのか!」
野党一筋の政治家が、総統をカッとにらむ。
「だが、あなた方が、改憲に抵抗してくれたおかげで、我々は、自衛隊の手痛い反撃を受ける前にこの国を制圧できた。疑わしいとかお友達だからとか具体的な証拠もなく総理を国会で追求し、国防強化を遅らせてきた野党の党首に感謝するのは、しごく当然だと思うがね」
「つまり、この事態を招いたのは我々野党のせいだと言いたいのか!」
「違うのかね?」
「下らぬ言いがかりを」
「ならば、野党議員すべての収支の帳簿を独裁者である我々が強制的に調べるだけだ。そうすれば、あなたがたが、本当に自国への愛国心に満ちた政治家か分かる」
「何を言っている」
「いや、これは親切心からの忠告だ。これまでは生ぬるい民主主義の加護の中で好き勝手にやって来た君たちも、私の独裁政権下では、もう好き勝手は許さん」
「なに!」
「文句があるなら、憲法改正を妨害し、攻撃にもろい国を作った己を恨め。せめて、憲法改正だけはやっておくんだったな」
「くっ! 失礼する!」
その大物野党議員はぷいと不機嫌そうに総統の部屋を出て行った。
入れ違いに総統の部下の暗黒将軍が入ってくる。
「閣下、各地で市民の暴動が」
「始まったか。で、議員どもの贈収賄の証拠は」
武力による軍事独裁政権を築いた彼らは、その非合法なやり方で強引に全国的に捜査していた。故に検察では容易に知りえない犯罪を次々暴いていた。彼らには、オーバーテクノロジーの超高速大型コンピューターがあり、いくら巧妙に帳簿データを改ざんしてもあっさりとあばいた。資料を押収される前にデータを物理的に破壊しようとした議員秘書もいたが、彼らは容赦なく取り押さえて、データ確保と解析を行った。
「国会議員から地方議員まで、議員と名のつく者たちの帳簿の強制調査80パーセントほど済みました。贈収賄、選挙法違反、収支報告書違反など、かなりの数の不正がゴロゴロ見つかっております。おもしろいのは、忖度だ疑惑が深まったと言われていた総理周辺からは何も物証は出てきておりません」
「ほぉ、総理は潔白か。ならば、総理に疑惑ありと報じた新聞社も捜査せよ。誰が、疑惑を流させたか、突き止めよ。この私が支配する以上、今までのような平和ボケは終わりだ」
そう、この国を支配した以上は、衰退させる気はない。独裁者として、さらに強靭な国家へと発展させるつもりでいた。歴史上、独裁者は悪役に見られがちだが、結果的に滅ぶことになっても、手に入れた国を故意に衰退させようとした者はいない。むしろ、独裁者は、国が衰退していくのを憂いて、義憤で立ち上がった者が多い。
「では、市民のデモをどうしますか?」
「議員の汚職データを市民連中にばらまき、真に粛清すべきは誰か、教えてやれ」
「我々ではなく、民衆に汚職議員の粛清をさせると?」
「そうだ。それから、総理の疑惑の喧伝をした新聞社の実態を急ぎ暴け、報道の自由は嘘を振りまいていい自由ではない。まず、事実を調査し、市民に伝えよ」
「これも市民に?」
「当然だ。スケープゴートという言葉を知っているか」
「いけにえの山羊ですな」
「そうだ。われらはこの国を武力で制圧した。それに市民が反発しておる。その矛先を変える生贄になってもらうというわけだ」
「なるほど」
そして、野党の大物政治家が悪の組織の総統と面談していた。
「なぜ、総理ではなく、この私を呼んだのかね」
「感謝を述べたかったからだ」
天才科学者であり、俗に言うマッドサイエンティストの総統はにやりと笑っていた。
「感謝? いくら野党とはいえ、民主的な手続きを経ていない侵略者を喜んで迎え入れると思っているのか!」
野党一筋の政治家が、総統をカッとにらむ。
「だが、あなた方が、改憲に抵抗してくれたおかげで、我々は、自衛隊の手痛い反撃を受ける前にこの国を制圧できた。疑わしいとかお友達だからとか具体的な証拠もなく総理を国会で追求し、国防強化を遅らせてきた野党の党首に感謝するのは、しごく当然だと思うがね」
「つまり、この事態を招いたのは我々野党のせいだと言いたいのか!」
「違うのかね?」
「下らぬ言いがかりを」
「ならば、野党議員すべての収支の帳簿を独裁者である我々が強制的に調べるだけだ。そうすれば、あなたがたが、本当に自国への愛国心に満ちた政治家か分かる」
「何を言っている」
「いや、これは親切心からの忠告だ。これまでは生ぬるい民主主義の加護の中で好き勝手にやって来た君たちも、私の独裁政権下では、もう好き勝手は許さん」
「なに!」
「文句があるなら、憲法改正を妨害し、攻撃にもろい国を作った己を恨め。せめて、憲法改正だけはやっておくんだったな」
「くっ! 失礼する!」
その大物野党議員はぷいと不機嫌そうに総統の部屋を出て行った。
入れ違いに総統の部下の暗黒将軍が入ってくる。
「閣下、各地で市民の暴動が」
「始まったか。で、議員どもの贈収賄の証拠は」
武力による軍事独裁政権を築いた彼らは、その非合法なやり方で強引に全国的に捜査していた。故に検察では容易に知りえない犯罪を次々暴いていた。彼らには、オーバーテクノロジーの超高速大型コンピューターがあり、いくら巧妙に帳簿データを改ざんしてもあっさりとあばいた。資料を押収される前にデータを物理的に破壊しようとした議員秘書もいたが、彼らは容赦なく取り押さえて、データ確保と解析を行った。
「国会議員から地方議員まで、議員と名のつく者たちの帳簿の強制調査80パーセントほど済みました。贈収賄、選挙法違反、収支報告書違反など、かなりの数の不正がゴロゴロ見つかっております。おもしろいのは、忖度だ疑惑が深まったと言われていた総理周辺からは何も物証は出てきておりません」
「ほぉ、総理は潔白か。ならば、総理に疑惑ありと報じた新聞社も捜査せよ。誰が、疑惑を流させたか、突き止めよ。この私が支配する以上、今までのような平和ボケは終わりだ」
そう、この国を支配した以上は、衰退させる気はない。独裁者として、さらに強靭な国家へと発展させるつもりでいた。歴史上、独裁者は悪役に見られがちだが、結果的に滅ぶことになっても、手に入れた国を故意に衰退させようとした者はいない。むしろ、独裁者は、国が衰退していくのを憂いて、義憤で立ち上がった者が多い。
「では、市民のデモをどうしますか?」
「議員の汚職データを市民連中にばらまき、真に粛清すべきは誰か、教えてやれ」
「我々ではなく、民衆に汚職議員の粛清をさせると?」
「そうだ。それから、総理の疑惑の喧伝をした新聞社の実態を急ぎ暴け、報道の自由は嘘を振りまいていい自由ではない。まず、事実を調査し、市民に伝えよ」
「これも市民に?」
「当然だ。スケープゴートという言葉を知っているか」
「いけにえの山羊ですな」
「そうだ。われらはこの国を武力で制圧した。それに市民が反発しておる。その矛先を変える生贄になってもらうというわけだ」
「なるほど」
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