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はい、船長
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「おい、なんだ、なんだ」
ブリッジの当直を副長の彼女に任せて休んでいた俺は、けたたましい緊急サイレンの音を聞きつけ、急いでブリッジに顔を出した。
「何があった」
「機関部に異常が発生し、緊急パージを」
「緊急パージだと」
と俺が聞き返すのとほぼ同時に、まばゆい閃光がブリッジの窓から差し込む。
衝撃波で軽く船体が揺れる。
「いま、切り離された機関部が爆発しました」
「ああ、説明しなくても分かる」
もともとこの貨物宇宙船は退役しててもおかしくない旧型船だ。今日まで無事に宇宙を飛んでいただけでも奇跡と言える老朽船である。最新型の貨物船には乗員不要の完全自動化された船もあるが、こいつには操作する乗員が必要で、船長の俺と副長の二人が乗り込んでいた。
だが、よりにもよって、宇宙大学出たての新米副長と一緒の時にトラブルとはついてない。この船は貿易会社所有の貨物船であり、その船員の人事権は会社にある。俺なら、大学出たての小娘を副長に抜擢はしない。
「で、現状は?」
「機関部と貨物部分は緊急パージを行いましたが、ブリッジ周辺と生命維持に必要な居住区画はそのままで異常なしです」
「で、緊急パージとなった原因は?」
「たぶん制御系のトラブルかと、機関部内の温度が急上昇して、コンピュータが緊急パージを提案、で、それを実行に移しました。船長にお伺いする時間がなくて申し訳ありません」
「いや、いい。ほんの数秒の遅れが、取り返しのつかないことになることもあるからな。しかし、落ち着いてるな。大切な機関部がなくなったというのに」
「さきほど救難信号は出しましたし、これで、しばらく船長とふたりっきりだなと思うと、ついにやけて」
「は?」
「あ、わたし、昔、家族と旅行したとき船長とお会いしたことがあって、船長、昔は客船の船長でしたよね」
「ああ、そんな時代もあったな」
「その時から、船長にあこがれてて、で、この船に」
「憧れ? こんなおっさんに」
「いえ、あのときの船の事故で家族全員が助かったのは船長の英断のおかげです。事故を船長のせいにして客船から下して、貨物船の船長に格下げした連中が私は嫌いです」
「ま、昔の話だ。いまは、この状態から無事に生還するのが先だ、いいね」
「はい、船長」
ブリッジの当直を副長の彼女に任せて休んでいた俺は、けたたましい緊急サイレンの音を聞きつけ、急いでブリッジに顔を出した。
「何があった」
「機関部に異常が発生し、緊急パージを」
「緊急パージだと」
と俺が聞き返すのとほぼ同時に、まばゆい閃光がブリッジの窓から差し込む。
衝撃波で軽く船体が揺れる。
「いま、切り離された機関部が爆発しました」
「ああ、説明しなくても分かる」
もともとこの貨物宇宙船は退役しててもおかしくない旧型船だ。今日まで無事に宇宙を飛んでいただけでも奇跡と言える老朽船である。最新型の貨物船には乗員不要の完全自動化された船もあるが、こいつには操作する乗員が必要で、船長の俺と副長の二人が乗り込んでいた。
だが、よりにもよって、宇宙大学出たての新米副長と一緒の時にトラブルとはついてない。この船は貿易会社所有の貨物船であり、その船員の人事権は会社にある。俺なら、大学出たての小娘を副長に抜擢はしない。
「で、現状は?」
「機関部と貨物部分は緊急パージを行いましたが、ブリッジ周辺と生命維持に必要な居住区画はそのままで異常なしです」
「で、緊急パージとなった原因は?」
「たぶん制御系のトラブルかと、機関部内の温度が急上昇して、コンピュータが緊急パージを提案、で、それを実行に移しました。船長にお伺いする時間がなくて申し訳ありません」
「いや、いい。ほんの数秒の遅れが、取り返しのつかないことになることもあるからな。しかし、落ち着いてるな。大切な機関部がなくなったというのに」
「さきほど救難信号は出しましたし、これで、しばらく船長とふたりっきりだなと思うと、ついにやけて」
「は?」
「あ、わたし、昔、家族と旅行したとき船長とお会いしたことがあって、船長、昔は客船の船長でしたよね」
「ああ、そんな時代もあったな」
「その時から、船長にあこがれてて、で、この船に」
「憧れ? こんなおっさんに」
「いえ、あのときの船の事故で家族全員が助かったのは船長の英断のおかげです。事故を船長のせいにして客船から下して、貨物船の船長に格下げした連中が私は嫌いです」
「ま、昔の話だ。いまは、この状態から無事に生還するのが先だ、いいね」
「はい、船長」
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