ヒーローだって人間です

美しい自然

大都市に住んでいる人間は当たり前のように地下鉄を使い、コンビニで買い物する。
だが、ど田舎に生まれた俺は、二十四時間開いているコンビニが家の近くになく、休日におやじの車で隣町まで買い物に出かけ、まとめて買い物するという生活に慣れ親しんでいた。であるとき、家の近くに高速道路が通るという計画が持ち上がったとき、都会に本部のある環境保護団体が、自然破壊を阻止すると息巻き、多数の車で排気ガスをまき散らしながら村に乗り込んできて、工事のための事前測量を妨害した。村人は誰も高速道路に反対していなかった。むしろ、交通の便が良くなれば野菜の出荷など楽になると歓迎ムードだったのだが、その環境保護団体が起こした裁判により、高速道路の計画は中止となり、俺は、この村にこのままいたら、未来がないと感じた。
だから、旅に出た。
村が嫌いになったわけではない。むしろ、村の外に出て、一旗揚げて町おこしの手伝いができる力をつけて田舎に戻って村を救うヒーローになれたらと。それが、ただの理想論で、気が付くと俺は盆や正月にも村に帰らず、フリーターで食いつなぐのが精一杯の暮らしを送っていた。ヒーローなんかなれなかったわけである。