ヒーローだって人間です

木全伸治

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魔王城

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「陛下、また勇者一行が攻めて来ました」
「たく、今月は多いのう」
「は、これで三度目の強襲かと」
「で、余が出向くほどの勇者か」
『疲れた・・もうイヤだ・・・』
本音は、もう勇者の相手には面倒を感じていた。勇者と戦っても魔王には利がないのだ。
勇者とは、魔王に歯向かう人間の総称で、老兵のときもあれば、少年のときも、男女の区別もない。魔界の魔王討伐に向かう人間たちは、みなひっくるめて勇者なのだ。正直、有象無象であり、剣や魔法の練度が低いのに向かってくる無謀なバカも珍しくない。魔王と戦ったというだけで人々の称賛を浴びられる、それが目的の者も少なくないのだ。
「は、今回は、陛下のお手を煩わせるほどの手練れはいないようですが、一応、念のためご報告を」
「しかし、こうも頻繁に攻めてこられては鬱陶しいな」
部下で対処できるからと言って面白い話ではない。
「この城が、魔王、ここにありと誇示しすぎか」
それに、人間界から勇者の侵攻を阻止することを想定した地の利が、この魔王城にはない。
もともとここは、魔界の弱小勢力だったご先祖様が辺境で地盤固めをするために築いた城で、歴史はあるが、人間界からの勇者侵攻を想定していない城だった。
「この城も捨て時か」
魔界の中心に堅牢な城を築いて、魔界統治に力を注ぎ、人間どもがちょっかいを出せぬ大国を築くのが賢明ではないかと、まだ若い魔王は考え始めた。
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