89 / 228
勇者逃亡
しおりを挟む
今日の戦闘は、マジで死にかけた。
この異世界、蘇生魔法や治癒魔法があるからと言って、絶対に死なないということはない。
治癒魔法で傷がふさがって痛みが消えても、その味わった苦痛の記憶は残る。
俺は、この異世界に救世主として召喚され、普通の高校生だったのに、勇者にしか使えない剣や鎧を押し付けられ、勇者として戦わされる日々に嫌気がさしていた。
『もうやめてやる!』
クソッたれ、自分たちの世界の命運を他の世界のただの学生に押し付けるんじゃねぇ。
俺は、宿屋の窓から外を覗いた。陽が沈んで辺りは暗い。その窓は宿屋の裏庭に面していた。俺は勇者の剣と鎧を、その部屋に残して、宿屋を抜け出した。
勇者の証である剣と鎧のない俺は、ただの異邦人だ。幸いこの異世界に召喚された際にこの世界の言葉が通じるように魔法をかけられている。力仕事でも何でも命がけの冒険よりましな仕事はいくらでもあるはずだと俺は、勇者の役目を捨てて逃げ出した。
とにかく力仕事だが仕事を見つけ、借家を借り、この世界で生きていける生活基盤を築き、この世界の町娘と親しくなり、結婚まで行けそうになったころ、街に魔族が押し寄せ、俺は、そのささやかな生活を守るため、あの勇者の剣や鎧を探し出してまとい、戦いに赴いた。
「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」という台詞を吐いて魔族の群れに突っ込んだ。その戦いで俺は魔法で回復できないほどの肉体的欠損の重傷を負い、そんな瀕死の俺を憐れんだ神官連中は亡骸だけは元の世界へと送り出し、俺は瀕死のところを路上で見つかり救急車で救急病院に運ばれ、下半身不随になりながらもこちらの世界の医療技術で一命をとりとめた。
あの町娘が俺を心配して、この世界を訪れて、俺の介護をしてくれているというのはささやかな後日談だ。
この異世界、蘇生魔法や治癒魔法があるからと言って、絶対に死なないということはない。
治癒魔法で傷がふさがって痛みが消えても、その味わった苦痛の記憶は残る。
俺は、この異世界に救世主として召喚され、普通の高校生だったのに、勇者にしか使えない剣や鎧を押し付けられ、勇者として戦わされる日々に嫌気がさしていた。
『もうやめてやる!』
クソッたれ、自分たちの世界の命運を他の世界のただの学生に押し付けるんじゃねぇ。
俺は、宿屋の窓から外を覗いた。陽が沈んで辺りは暗い。その窓は宿屋の裏庭に面していた。俺は勇者の剣と鎧を、その部屋に残して、宿屋を抜け出した。
勇者の証である剣と鎧のない俺は、ただの異邦人だ。幸いこの異世界に召喚された際にこの世界の言葉が通じるように魔法をかけられている。力仕事でも何でも命がけの冒険よりましな仕事はいくらでもあるはずだと俺は、勇者の役目を捨てて逃げ出した。
とにかく力仕事だが仕事を見つけ、借家を借り、この世界で生きていける生活基盤を築き、この世界の町娘と親しくなり、結婚まで行けそうになったころ、街に魔族が押し寄せ、俺は、そのささやかな生活を守るため、あの勇者の剣や鎧を探し出してまとい、戦いに赴いた。
「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」という台詞を吐いて魔族の群れに突っ込んだ。その戦いで俺は魔法で回復できないほどの肉体的欠損の重傷を負い、そんな瀕死の俺を憐れんだ神官連中は亡骸だけは元の世界へと送り出し、俺は瀕死のところを路上で見つかり救急車で救急病院に運ばれ、下半身不随になりながらもこちらの世界の医療技術で一命をとりとめた。
あの町娘が俺を心配して、この世界を訪れて、俺の介護をしてくれているというのはささやかな後日談だ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる