ヒーローだって人間です

目には目を

苦痛を受けたら、同じような苦痛をお返しするのが、この世の常套手段である。異世界から召喚された勇者により、魔王軍は大打撃を受けていた。その反撃のため、こちらも異世界から助っ人を呼ぶべきとなった。
魔界の暗黒魔術師が数人がかりで、異世界の魔王を呼びよせた。が、異世界に強制的に呼び出されたその魔王は機嫌が悪かった。
「俺を、元の世界に帰せ、こっちの世界の勇者のことなど知るか」
そう、異世界の魔王にとってこの世界の出来事など他人事である。
「同じ魔王ではないか、われら、ふたりが手を組めば勇者など、造作もないはず」
異世界の魔王は、こちらの世界の魔王と双子のように似ていて、だから、二人が協力すれば、その力は単純に二倍で、勇者を圧倒できるとこの世界の魔王は思ったが、呼び出された異世界の魔王は、この世界の行く末には興味がなかった。そもそもこの世界の魔界を助ける義理は、異世界の魔王にはない。
「勇者など知るか。自分の世界の魔界ぐらい、自分で守れ。とにかく、さっさと元の世界に俺を返せ」
「それはできぬ。勇者を退治した後なら、考えてやってもいい」
「なんだと！」
激怒した異世界の魔王は魔剣を抜き、その世界の魔王を切り捨てて、その世界の新しい魔王となり、その後、異世界から召喚されし勇者に魔王として討伐された。