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アイデアノート
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高校の時、木村という同級生がいた。彼女は授業と授業の合間の休み時間になると一人机に座り、ノートに何かコソコソ書いていた。ある日、男子生徒の一人がそれを取り上げて、
「アイデアノートだってよ」
仲間の男子とともにその表紙の文字を読む
「やめて、返して!」
彼女は叫んだが、調子に乗った男子たちはやめずに中のノートを勝手に開いて読み始めた。それは漫画を描くことをひそかな趣味にしていた彼女のアイデアノートだった。
「なんかびっしり書いてある」
「おい、異能力だって」
「中二病ってやつか」
男子たちの笑い声と泣きそうな木村さんの顔が目に入った。
「いい加減にしなさいよ、上田」
彼女とは同じクラスメイトという以外共通点はない。はっきり言ってしまえば友達ではないのだが、なんかその男子が目障りなので、つい前に出てにらんでしまった。
「なんだよ、オマエ。関係ないだろ」
「うるさいのよ、ガキ」
「は、ガキ?」
「高3にもなって女子いじめて喜んでるなんて、小学生以下じゃない」
「な、何だと・・・」
上田はなにか反論しようとしたが、他の男子が気圧されてソッと彼から離れたので、自分の不利を悟った上田はしぶしぶノートを彼女に返した。
で、十年ほどした同窓会の会場の居酒屋前で、その上田は彼女に土下座していた。
「お前の描いたヒーロー漫画がアニメ化されて儲かってるんだろ。うちのおやじの工場、今、やばいんだよ。ちょっと金貸してくれよ」
それを見かけたとき、なんという喜劇だと、私は笑いをこらえながら二人に近づいた。
「上田、学生のころ彼女になにしたのか忘れたの」
「い、いや、あの頃は俺もガキで・・・」
彼女が学生の頃に書き溜めていたあのアイデアノートは、現在、漫画家として大活躍する彼女の糧となっていた。
「あ、久しぶり」
「久しぶりね、木村さん」
私たちは軽く笑い合い、上田を無視して居酒屋の中に入る。いくら昔のこととはいえ、今さら土下座されても金を貸す義理は彼女にはない。
「そうそう、あなたの原作単行本最新刊買ったわよ」
「あ、言ってくれたら、サイン入りでプレゼントしたのに」
「いいわよ、友達にねだる趣味はないから」
あの一件以来、私と彼女は仲良くなり、友人として、学校卒業後も、いまでも、たまにメールのやり取りをする程度の仲にはなっていた。
「アイデアノートだってよ」
仲間の男子とともにその表紙の文字を読む
「やめて、返して!」
彼女は叫んだが、調子に乗った男子たちはやめずに中のノートを勝手に開いて読み始めた。それは漫画を描くことをひそかな趣味にしていた彼女のアイデアノートだった。
「なんかびっしり書いてある」
「おい、異能力だって」
「中二病ってやつか」
男子たちの笑い声と泣きそうな木村さんの顔が目に入った。
「いい加減にしなさいよ、上田」
彼女とは同じクラスメイトという以外共通点はない。はっきり言ってしまえば友達ではないのだが、なんかその男子が目障りなので、つい前に出てにらんでしまった。
「なんだよ、オマエ。関係ないだろ」
「うるさいのよ、ガキ」
「は、ガキ?」
「高3にもなって女子いじめて喜んでるなんて、小学生以下じゃない」
「な、何だと・・・」
上田はなにか反論しようとしたが、他の男子が気圧されてソッと彼から離れたので、自分の不利を悟った上田はしぶしぶノートを彼女に返した。
で、十年ほどした同窓会の会場の居酒屋前で、その上田は彼女に土下座していた。
「お前の描いたヒーロー漫画がアニメ化されて儲かってるんだろ。うちのおやじの工場、今、やばいんだよ。ちょっと金貸してくれよ」
それを見かけたとき、なんという喜劇だと、私は笑いをこらえながら二人に近づいた。
「上田、学生のころ彼女になにしたのか忘れたの」
「い、いや、あの頃は俺もガキで・・・」
彼女が学生の頃に書き溜めていたあのアイデアノートは、現在、漫画家として大活躍する彼女の糧となっていた。
「あ、久しぶり」
「久しぶりね、木村さん」
私たちは軽く笑い合い、上田を無視して居酒屋の中に入る。いくら昔のこととはいえ、今さら土下座されても金を貸す義理は彼女にはない。
「そうそう、あなたの原作単行本最新刊買ったわよ」
「あ、言ってくれたら、サイン入りでプレゼントしたのに」
「いいわよ、友達にねだる趣味はないから」
あの一件以来、私と彼女は仲良くなり、友人として、学校卒業後も、いまでも、たまにメールのやり取りをする程度の仲にはなっていた。
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