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勇者の顛末
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すべての始まりは数十年前、人間界と魔界とのわずかな隙間から魔族や魔物があふれだすように侵攻してきたときから始まる。その村の少年は魔物に村を襲われ、幼馴染や両親を惨殺され、天涯孤独の身となり、復讐の旅に出て、いつしか、勇者と呼ばれる強者になり、仲間とともに魔界と人間界をつなぐ道を封印する方法として封印のための光の宝玉を光の女神から得て、それを見事に使い魔界と人間界を完全に分断し、人間界を平和に導いたが、平和になった途端、それまで共通の敵相手に協力し合っていた諸国が互いの利権のために争いを始め、世界に名を知らしめていた勇者も、知り合いの国王の依頼で、とある紛争に加勢したところ、勇者の加勢した側は勝利したが、勇者は世間から人間に刃を向けるのかと囁かれ、なんか嫌気がさして、田舎に引っ込み、魔界封印の功労である各国からの報奨金を、すべて生まれた村の再建に使い、いまは、かつての名声も忘れられ、ただの白髪の老人として片田舎で余生を送っていた。
「勇者か、会ってみたいな」
ただの貧しい村の村人から多少は冒険者として強くなってきていた俺は、かつて勇者と呼ばれた男がこの近くに住んでいると聞き会いたくなった。
「そうだな。私も、勇者の剣技には興味がある」
「私も勇者の使う魔法には興味があります」
「うむ、それも良いかもしれん」
俺の連れの女戦士と少女魔法使いに神官のおっさんもあっさり賛同する。
で、その家屋は、村のはずれに本当にひっそりとみすぼらしく建っていた。
世界を救った勇者にしては、何ともみすぼらしい建物だ。彼は人間同士の争いに一回だけ加担したのち、他者との関わりを避けて、ここに隠居したということまではあまり知られていなかった。
「あの、すみません、どなたかいますか」
返事はなく、仕方なく俺は中に入った。家の中には一人の美少女がいた。
なんか人間離れした美貌の少女で、後で知ったことだが、かつての魔界封印の際、人間界に取り残されて勇者に拾われた魔族の女性だった。
「あ、すみません、勝手に入って。返事がなかったもので。あの、ここに元勇者がいると伺ったんですが」
「あ、ご主人様に御用ですか。申し訳ありません、ご主人様は誰とも・・・」
「あ、よいよい、ちょうど退屈してたところだ。老人の話し相手になってくれんか」
家の奥から声がして、ベットの上で、けだるそうに体を起こしていた老人と対峙した。
そうして、俺は仲間の神官のおっさんや女戦士と少女魔法使いも呼んで、これまでの冒険などを老人に語り聞かせた。帝国内の皇位継承争いで魔界との封印が壊されたことを教えるともと勇者はハハハと笑った。
「そうか。わしらが数十年前に施した封印が壊れたか。ま、人間の業じゃな」
「で、このおいぼれにどうしてほしいと? また封印してくれと言われても、この老体じゃ、何も出来んぞ」
「いえ、できれば、私たち未熟者に稽古をお願いできませんか。修行を見ていただき何かアドバイスを頂ければ幸いです」
「うむ、ま、見るだけなら、いいじゃろ。ちょうど最近退屈しておったでな」
そうして、俺たちは元勇者のもとで修業を始めた。が、その修行中、その勇者の家を魔族と魔物の群れが襲撃し、激しい戦いの末、元勇者は命を落とし、俺は元勇者の剣と鎧を受け継ぎ、元勇者を弔って、その地を去った。しばらくして、風のうわさで、あの魔族の女性が元勇者の子を身ごもっていて、人目のつかない田舎で勇者の大切な忘れ形見を生み育てていると聞いた。
「勇者か、会ってみたいな」
ただの貧しい村の村人から多少は冒険者として強くなってきていた俺は、かつて勇者と呼ばれた男がこの近くに住んでいると聞き会いたくなった。
「そうだな。私も、勇者の剣技には興味がある」
「私も勇者の使う魔法には興味があります」
「うむ、それも良いかもしれん」
俺の連れの女戦士と少女魔法使いに神官のおっさんもあっさり賛同する。
で、その家屋は、村のはずれに本当にひっそりとみすぼらしく建っていた。
世界を救った勇者にしては、何ともみすぼらしい建物だ。彼は人間同士の争いに一回だけ加担したのち、他者との関わりを避けて、ここに隠居したということまではあまり知られていなかった。
「あの、すみません、どなたかいますか」
返事はなく、仕方なく俺は中に入った。家の中には一人の美少女がいた。
なんか人間離れした美貌の少女で、後で知ったことだが、かつての魔界封印の際、人間界に取り残されて勇者に拾われた魔族の女性だった。
「あ、すみません、勝手に入って。返事がなかったもので。あの、ここに元勇者がいると伺ったんですが」
「あ、ご主人様に御用ですか。申し訳ありません、ご主人様は誰とも・・・」
「あ、よいよい、ちょうど退屈してたところだ。老人の話し相手になってくれんか」
家の奥から声がして、ベットの上で、けだるそうに体を起こしていた老人と対峙した。
そうして、俺は仲間の神官のおっさんや女戦士と少女魔法使いも呼んで、これまでの冒険などを老人に語り聞かせた。帝国内の皇位継承争いで魔界との封印が壊されたことを教えるともと勇者はハハハと笑った。
「そうか。わしらが数十年前に施した封印が壊れたか。ま、人間の業じゃな」
「で、このおいぼれにどうしてほしいと? また封印してくれと言われても、この老体じゃ、何も出来んぞ」
「いえ、できれば、私たち未熟者に稽古をお願いできませんか。修行を見ていただき何かアドバイスを頂ければ幸いです」
「うむ、ま、見るだけなら、いいじゃろ。ちょうど最近退屈しておったでな」
そうして、俺たちは元勇者のもとで修業を始めた。が、その修行中、その勇者の家を魔族と魔物の群れが襲撃し、激しい戦いの末、元勇者は命を落とし、俺は元勇者の剣と鎧を受け継ぎ、元勇者を弔って、その地を去った。しばらくして、風のうわさで、あの魔族の女性が元勇者の子を身ごもっていて、人目のつかない田舎で勇者の大切な忘れ形見を生み育てていると聞いた。
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