ヒーローだって人間です

木全伸治

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宝の持ち腐れ

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政府は選挙が近くなり焦っていた。
国民に目に見える形で現政権の何らかの成果をアピールしたがっていた。
税金を集めて、予算を立てて有象無象の公共事業をやっている以上、国民に分かりやすく伝えられる成果を欲しがっていたのだ。だから俺は趣味でこっそり研究開発していた自立型二足歩行機械開発の副産物である新しい衝撃吸収素材の製造法を公開した。もとは巨大ロボットの稼働時における衝撃で内部の繊細な機械類が破損しないように内部の精密機器類を保護するために俺が独自に開発し生み出した新素材である。ロボットために生み出した新素材だが、応用の範囲は広いだろう。例えば、対震素材として建造物に使うことだってできるはずだ。電車や自動車に使い車内の揺れを軽減することもできるはずだ。
ロボット開発は、外郭やロボット全体を支える骨組みの素材軽量化や駆動を制御する人工知能や、バランス制御のための各種センサーなど複数の工業技術の集積により成り立っている。
人間の目は距離感を自動的に把握するし、またその目をつむっていても人間はその足元の地面が平らか斜めかを把握できる繊細な感覚を持っている。つまりそれらをきちんと機械に置き換えられなければ、人間のような駆動をするロボットは生み出せないというわけで、俺は、そういう複合的な技術開発ができる人間だった。で、そういう新技術情報を渡してやれば政府の役人どもは、喜んで予算をこっちに回す。
たまに野党議員からケチが付き、他所に回せと国会で追及されることがあっても、そういうときにさりげなく、俺は新素材や高感度センサー類の情報を公開し、俺の研究の有益性を世界に伝えて、政府からの予算獲得を行っていた。表向きの名目は未来の新技術の開発だが、俺の究極の目的は昔のアニメで見たようなロボットの開発だった。人間の肉体は生命が長い進化の果てにたどり着いた究極形態である、それを模倣しようというのは神の領域に踏み込んでいるのかもしれない。けど、俺は全長二十メートルほどのロボットを政府の予算で作り上げ、米軍に極秘に協力を要請し、アメリカのグレートソルトレイク砂漠での模擬戦闘で米軍の最新兵器群を圧倒したが、それを聞きつけた日本政府は、あまりにも強力すぎて専守防衛ではないと野党に突っ込まれるのを恐れ、その開発成果を極秘にするよう俺に通達し、俺からロボを取り上げて、それを封印した。
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