ヒーローだって人間です

木全伸治

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名探偵は身を隠す

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どれほど完璧な犯罪でも、その名探偵の前ではあっさり謎がとけてしまうという。
だから、その事件もすぐ解決されると思われた。だが、探偵は真犯人に拘束された。
「あんたが死ねば、この事件は迷宮入りだ」
真犯人がしてやったと自慢げに笑う。
「何と愚かな。この私を探してもう警察が動いているはずだ」
「ふん、警察に尻尾をつかまれると思うか。俺は天才なんだ。あんたさえいなければ、警察を出し抜くくらいなんでもないさ」
「おやおや、私が本物の名探偵だと思っているのかい。おめでたい犯人だ」
「なに?」
「名探偵の命を狙う犯人は、今までに何人もいてね、そこで、この私が影武者を演じていてね。本物の名探偵は、ほら、あんたの後ろに」
「なっ?」
「遅い、眠ってろ」
麻酔針で真犯人を眠らせると本物の名探偵は影武者役のおっさんを解放した。
「名探偵を囮に真犯人をおびき出す。うまくいきましたな」
解放されたおっさんが、未成年の本物の名探偵に笑い掛ける。
「ああ・・・、今回の事件、物証が乏しかったから、これで、こいつも言い逃れできないだろう」
「私に手を出さなければ、事件は本当に迷宮入りだったのに。バカな奴でしたな」
「完璧主義者なんだろ、不安な材料は確実に消しておきたい。だから、名探偵には退場してもらいたかったと。結果として自滅したわけだ」
こうして、今日も、名探偵は、難事件を解決した。
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