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ブルーの嫉妬
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レッドの胸に黒騎士の剣がグサリと突き刺さり、そのスーツより赤い血がツーと滴る。
「グッ」
黒騎士が剣を抜くと、ドッと血が胸からあふれ、レッドがひざを折る。
「ブルー・・・」
マスクで表情はわからないが、助けを求めるようにこちらを見る
「レッド」
俺は茶番だなと内心で苦笑しながらレッドに駆け寄った。すべては俺が敵の黒騎士と仕組んだ本当の茶番だった。
レッドを亡き者にするという計略に敵である黒騎士はのった。レッドはリーダー格で常に皆に命令し、ブルーである俺は、それに従うだけだった。俺たちは年齢的にも経験実績ともに変わらない。
それなのに、ブルーとレッドにスーツが色分けされただけで上下関係が生まれたことが俺は気にいらなかった。
だから、敵の黒騎士と裏で手を組みレッドを仲間から引き離し、黒騎士に止めを刺してもらったのだ。
俺が駆け寄っても、レッドはすべて俺が仕組んだ罠だと気づいていない。ただ、すがるように俺にもたれかかるだけだ。
「大丈夫か」
一応、心配そうに声をかける。いくら正義の味方でも、心臓を貫かれて無事なはずはない。
これは絶対に助からないとレッドの死を確信し、内心でにやりとする。
予定通りだ。これでレッドの死を利用して仲間を奮起させて俺が新しいリーダーとして戦隊をまとめて、敵に挑む。黒騎士もその攻勢を利用して邪魔な他の幹部や現総統を倒し、新体制を築き、新総統となった黒騎士と停戦協定を結び、この戦いを終結させるというのが、俺と黒騎士との密約だった。
どちらかが完全に滅びるまで戦い続けるなど愚行だと俺と黒騎士は考えていたのだ。
黒騎士は戦うことが好きな戦士だが、人間の皆殺しを望むような趣味は持っていない。それに比べ、うちのレッドは敵をすべて倒すのが正義だと考える脳筋の単細胞だった。
だから、俺は敵の黒騎士と手を組んだ。
黒騎士も悪の組織の幹部のくせに、正義の味方を皆殺しにすれば、すべて解決というような甘い思考はしておらず、この世界の守り手である正義の味方と手を組んだ方が、円滑に世界を支配できると考えていた。こちらも、悪の組織であれ、何であれ、地球が国境なき一つの統治機構に支配された方が、世の中平和じゃねぇかと考えていた。国境のない、統一政権を悪の組織に樹立させて、その上で、その統一政権が人類に害をなすなら、そのときは人類は主義主張を超えて一丸となって戦うだろう。
そのときこそ、民衆を救う英雄として我らヒーローが先頭に立って戦えばいいいのではないか。真の英雄とは、民衆に求められてこそだと思う。そのときに黒騎士と雌雄を決しても遅くはないのではないかと俺は思っていた。
もしかしたら、新総統となった黒騎士が、人民に対して、公明正大な専制君主になって人々に平和をもたらす名君になるかもしれない。
歴史上、民に愛された王様は実在する。
民主主義によって選ばれたからといって良き指導者になるという保障はない。むしろ、近代の独裁者には民主的に選出されて誕生している場合もある。
少なくとも、敵を倒すことばかり考えていた脳筋で猪突猛進のレッドと戦い続けるより、あの黒騎士がこの地球の支配者となったときの方が、地球が平和になるかもと俺は思ってしまった。
確信はない。だが、敵を倒すことしか考えていなかったレッドが、戦いの先の世界を見据えていたとは思えないし、少なくとも、俺はレッドより、黒騎士のほうが面白い世界を見せてくれそうだと思い黒騎士を選んだ
とにかく、レッドが死に、必然的にブルーの俺がリーダーを引き継いだ。が、
「敵はどこだ! いない?」
バシュッ!!
「ウッ!」
胸に激痛が走り、あわてて後ろを振り返ると、一緒に出動したピンクが、レッドの銃を構えていた。
「お前が撃ったのか」
まさか味方に背後から撃たれるとは思っていなかった。
「あの人の隣には、いつもあなたがいた。ねたましかった。でも、あの人と、あなたの二人なら必ず、私たちを勝利に導いてくれると思ってたのに、あの人を裏切るなんて」
予想外だった。ピンクがレッドに好意を持っていて、その復讐のために俺を撃つなんて。
「驚いた? いいわ、冥土の土産に教えてあげる。敵と内通してたのはあなただけじゃなくて、私も、敵の女幹部と知り合いでね、でも、戦いに私情は持ち込んでいなかった。その彼女が教えてくれたの。黒騎士とあんたがこっそり連絡を取り合っていたって。今頃、向こうでも、黒騎士が粛清されているころじゃないかしら」
バシュッ!!
ピンクは容赦なく、俺の額に二発目の銃弾を打ち込んだ。
「グッ」
黒騎士が剣を抜くと、ドッと血が胸からあふれ、レッドがひざを折る。
「ブルー・・・」
マスクで表情はわからないが、助けを求めるようにこちらを見る
「レッド」
俺は茶番だなと内心で苦笑しながらレッドに駆け寄った。すべては俺が敵の黒騎士と仕組んだ本当の茶番だった。
レッドを亡き者にするという計略に敵である黒騎士はのった。レッドはリーダー格で常に皆に命令し、ブルーである俺は、それに従うだけだった。俺たちは年齢的にも経験実績ともに変わらない。
それなのに、ブルーとレッドにスーツが色分けされただけで上下関係が生まれたことが俺は気にいらなかった。
だから、敵の黒騎士と裏で手を組みレッドを仲間から引き離し、黒騎士に止めを刺してもらったのだ。
俺が駆け寄っても、レッドはすべて俺が仕組んだ罠だと気づいていない。ただ、すがるように俺にもたれかかるだけだ。
「大丈夫か」
一応、心配そうに声をかける。いくら正義の味方でも、心臓を貫かれて無事なはずはない。
これは絶対に助からないとレッドの死を確信し、内心でにやりとする。
予定通りだ。これでレッドの死を利用して仲間を奮起させて俺が新しいリーダーとして戦隊をまとめて、敵に挑む。黒騎士もその攻勢を利用して邪魔な他の幹部や現総統を倒し、新体制を築き、新総統となった黒騎士と停戦協定を結び、この戦いを終結させるというのが、俺と黒騎士との密約だった。
どちらかが完全に滅びるまで戦い続けるなど愚行だと俺と黒騎士は考えていたのだ。
黒騎士は戦うことが好きな戦士だが、人間の皆殺しを望むような趣味は持っていない。それに比べ、うちのレッドは敵をすべて倒すのが正義だと考える脳筋の単細胞だった。
だから、俺は敵の黒騎士と手を組んだ。
黒騎士も悪の組織の幹部のくせに、正義の味方を皆殺しにすれば、すべて解決というような甘い思考はしておらず、この世界の守り手である正義の味方と手を組んだ方が、円滑に世界を支配できると考えていた。こちらも、悪の組織であれ、何であれ、地球が国境なき一つの統治機構に支配された方が、世の中平和じゃねぇかと考えていた。国境のない、統一政権を悪の組織に樹立させて、その上で、その統一政権が人類に害をなすなら、そのときは人類は主義主張を超えて一丸となって戦うだろう。
そのときこそ、民衆を救う英雄として我らヒーローが先頭に立って戦えばいいいのではないか。真の英雄とは、民衆に求められてこそだと思う。そのときに黒騎士と雌雄を決しても遅くはないのではないかと俺は思っていた。
もしかしたら、新総統となった黒騎士が、人民に対して、公明正大な専制君主になって人々に平和をもたらす名君になるかもしれない。
歴史上、民に愛された王様は実在する。
民主主義によって選ばれたからといって良き指導者になるという保障はない。むしろ、近代の独裁者には民主的に選出されて誕生している場合もある。
少なくとも、敵を倒すことばかり考えていた脳筋で猪突猛進のレッドと戦い続けるより、あの黒騎士がこの地球の支配者となったときの方が、地球が平和になるかもと俺は思ってしまった。
確信はない。だが、敵を倒すことしか考えていなかったレッドが、戦いの先の世界を見据えていたとは思えないし、少なくとも、俺はレッドより、黒騎士のほうが面白い世界を見せてくれそうだと思い黒騎士を選んだ
とにかく、レッドが死に、必然的にブルーの俺がリーダーを引き継いだ。が、
「敵はどこだ! いない?」
バシュッ!!
「ウッ!」
胸に激痛が走り、あわてて後ろを振り返ると、一緒に出動したピンクが、レッドの銃を構えていた。
「お前が撃ったのか」
まさか味方に背後から撃たれるとは思っていなかった。
「あの人の隣には、いつもあなたがいた。ねたましかった。でも、あの人と、あなたの二人なら必ず、私たちを勝利に導いてくれると思ってたのに、あの人を裏切るなんて」
予想外だった。ピンクがレッドに好意を持っていて、その復讐のために俺を撃つなんて。
「驚いた? いいわ、冥土の土産に教えてあげる。敵と内通してたのはあなただけじゃなくて、私も、敵の女幹部と知り合いでね、でも、戦いに私情は持ち込んでいなかった。その彼女が教えてくれたの。黒騎士とあんたがこっそり連絡を取り合っていたって。今頃、向こうでも、黒騎士が粛清されているころじゃないかしら」
バシュッ!!
ピンクは容赦なく、俺の額に二発目の銃弾を打ち込んだ。
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