28 / 228
戦闘員だって目立ちたい
しおりを挟む
モブである戦闘員だって目立ちたいという願望を持ってもおかしくはない。その夢の叶え方を考えても何ら不思議ではない。
マスクとコスチュームを脱いでしまうと悪の組織の構成員であっても、見た目は普通の人と変わらなくなる。
彼らは、仲間同士で、安くて料理が美味いのが売りの居酒屋チェーン店にいた。
「相手を少しでも疲労させてその戦力を少しでも削ぐための突撃かもしれないけど、上は、ただ突っ込めの一点張りだもんな」
「ま、もう少し戦術を考えて欲しいよな。いつもワンパターンすぎる」
「で、突っ込んでいったら、あいつら情け容赦なく、殴りかかって来るしな」
「そうそう。俺たち戦闘員が弱いの毎回戦ってて知ってるはずなのに、正義の味方のくせに、あいつら問答無用で殴る蹴るの暴力が大好きだよな」
「ああ、正義の味方とかいう割に、いつも、最後は暴力で解決だもんな」
「見せ場なく、すぐ倒されて、退場させられるモブの身にもなれって言うんだ」
「そうだよな。あ、お姉さん、生もう一杯」
「はい、ほかにご注文は?」
「とりあえず、生で、料理の追加はあとで」
「おいおい。お前、今日は飲むな」
「飲まずにやっていられるかっての。お前らは、今日はレッドとかにやられたからいいけど、俺なんか、画面隅のいつも見切れそうなピンクにやられたんだぜ」
「そりゃ、目立ちようがないな」
「あのピンク、そんなに強そうには見えないけど、なんであいつらのメンバーにいるんだ」
「だよな、他のメンバーだけで十分強いんじゃね。たまに、仲間と喧嘩したのかピンクだけ浮いてるときもあるよな」
「そう、ピンクなんていらねえよな」
「誰がいらないですって」
近くのテーブルにいた女性が、スッと立ち上がる。
「げ、ピンク…」
彼らは絶句した。戦闘以外で出会うはずのない、正義の味方と、遭遇したのである。
「な、なんでここに…」
「女一人で寂しく飲んでて何か問題でも?」
後で分かったことだが、ピンクは戦隊五人の中で、最も血の気が多く、そのため、戦闘では、チームワークを乱さないように自主的に控え目な立ち位置にいたのだ。
で、マスクやコスチュームを着ていない俺たちを、店の外に連れ出し、一方的にボコった。レッドやブルーの方が平和主義者だと、俺たちザコ戦闘員は思い知らされた。
マスクとコスチュームを脱いでしまうと悪の組織の構成員であっても、見た目は普通の人と変わらなくなる。
彼らは、仲間同士で、安くて料理が美味いのが売りの居酒屋チェーン店にいた。
「相手を少しでも疲労させてその戦力を少しでも削ぐための突撃かもしれないけど、上は、ただ突っ込めの一点張りだもんな」
「ま、もう少し戦術を考えて欲しいよな。いつもワンパターンすぎる」
「で、突っ込んでいったら、あいつら情け容赦なく、殴りかかって来るしな」
「そうそう。俺たち戦闘員が弱いの毎回戦ってて知ってるはずなのに、正義の味方のくせに、あいつら問答無用で殴る蹴るの暴力が大好きだよな」
「ああ、正義の味方とかいう割に、いつも、最後は暴力で解決だもんな」
「見せ場なく、すぐ倒されて、退場させられるモブの身にもなれって言うんだ」
「そうだよな。あ、お姉さん、生もう一杯」
「はい、ほかにご注文は?」
「とりあえず、生で、料理の追加はあとで」
「おいおい。お前、今日は飲むな」
「飲まずにやっていられるかっての。お前らは、今日はレッドとかにやられたからいいけど、俺なんか、画面隅のいつも見切れそうなピンクにやられたんだぜ」
「そりゃ、目立ちようがないな」
「あのピンク、そんなに強そうには見えないけど、なんであいつらのメンバーにいるんだ」
「だよな、他のメンバーだけで十分強いんじゃね。たまに、仲間と喧嘩したのかピンクだけ浮いてるときもあるよな」
「そう、ピンクなんていらねえよな」
「誰がいらないですって」
近くのテーブルにいた女性が、スッと立ち上がる。
「げ、ピンク…」
彼らは絶句した。戦闘以外で出会うはずのない、正義の味方と、遭遇したのである。
「な、なんでここに…」
「女一人で寂しく飲んでて何か問題でも?」
後で分かったことだが、ピンクは戦隊五人の中で、最も血の気が多く、そのため、戦闘では、チームワークを乱さないように自主的に控え目な立ち位置にいたのだ。
で、マスクやコスチュームを着ていない俺たちを、店の外に連れ出し、一方的にボコった。レッドやブルーの方が平和主義者だと、俺たちザコ戦闘員は思い知らされた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる