ヒーローだって人間です

木全伸治

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怪人と女幹部

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その喫茶店のテーブルには、カブトムシに人間の遺伝子を掛け合わせたような怪人と、やたらとスタイルのいい露出狂のようなコスチュームの女性が向かい合って座っていた。
「あんた、何で怒られてるか分かってる?」
「え、ええと、負けて敗走したからですよね」
怪人が困ったように返事する。
「負けるのはいつものことだからいいのよ」
「は? 負けても良かったんですか」
「あのね、正直に言うとね、あたしは、怪人を使い捨てるような今の組織のやり方が嫌いなの。あたしは、あんたらを使い捨ての消耗品だとは思っていないから」
「そ、それはどうも・・・、でも、あっしらは作られた身ですから、上から命令されれば、ただ突っ込むだけでして」
「だから、それが良くないって話よ、ただ単純に突っ込んでいってもやられるのは当たり前、あんたらは言葉は喋れるし、考えるだけの知能はある」
「は、そうすっね。もっと頭を使って戦えってことですか」
「その通りよ、あんた見かけより理解が早いじゃない」
「でも、姉さん、いいんですか、俺たちみたいな下っ端怪人は何も考えずに戦うことだけ考えてた方が使いやすいんじゃ?」
「ふふふ、あんたって、思っていた以上に察しがいいわね」
「ま、一応人間サイズですから、脳細胞もそれなりに」
「それなら、あたしが言いたいこと、もう何となく理解できたわね」
「ええと、あっしら下っ端怪人は、ただの消耗品ではなく、もっとずる賢く立ち回ってもいいと」
「そう、無駄にあんたらがやられるのを見るのは、もう嫌なのよ」
「姉さん、優しいっすね。こういうのを女神って言うんじゃないすか」
「ばか、何言ってるの。あんたたちの次はあたしの番だから、無駄にやられてもらったら困るから忠告してるのよ」
「いえ、姉さんの気遣い、ありがとうございます」
そのカブトムシ型の怪人は、ストローでチュウチュウとオレンジジュースを飲みながら、彼女にペコペコと頭を下げた。
後日、その怪人は、その女幹部の右腕となり、他の怪人たちもそそのかして、怪人を使い捨てにする総統に反旗を翻し、組織を乗っ取り、仲間の怪人を大切にする戦い方になったせいでヒーローたちに、結局せん滅させられた。
だが、悪の組織は壊滅したが、その女幹部と怪人だけは最終決戦のどさくさに紛れて逃げ延びた。その逃亡を手助けしたのは、彼らのおかげで待遇改善されて助けられた怪人や戦闘員の仲間たちだった。彼らは、自分たちがヒーローの犠牲になることで、女幹部たちの逃亡の時間を稼いだ。

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