ヒーローだって人間です

木全伸治

文字の大きさ
上 下
18 / 228

廃墟崩壊

しおりを挟む
敵の戦隊との戦いで連敗が続いたので、必然的に怪人の火力上げを行い、結果戦闘はこれまでにない激しいものになった。
長い間放置された廃工場で爆発が連続すれば、倒壊するのも当たり前だった。
ブルーは咄嗟に敵の女幹部を落下してきたコンクリートから庇っていた。崩れ落ちた壁や天井が密閉空間を作り、辛うじて、そこにブルーと女幹部はいた。
「ちょっと、あんた大丈夫」
巨大なコンクリートを背中で受け、女幹部が逃げる余裕を作ったブルーは、気だるそうに床に座っていた。
フルフェイスのメットをかぶってるので、表情は見えないが、痛みに耐えているのは何となく分かる。
「こんなのたいしたことねぇ。それより、狭い屋内であんなに火器を使ったら、こうなることは予想できただろ、無茶するなよ」
「無茶? そっちは連戦連勝で気持ちいいでしょうけど、こっちは、そうはいかないわ。無茶ぐらいするわよ」
これはスポーツではない。参加することに意義があるというものではないのだ。
「たく、物事には限度ってものがっ・・・」
急に何かに気づいたブルーが口ごもる。
「お、おまっ、ち、ちち、隠せ・・・」
「は? ちち?」
言われてみると、爆発の衝撃で服が破れ、 女幹部の形の良い左乳房が露わになっていた。
「なんだ、こんなもの。別に、いいじゃない。見えてラッキーとぐらいに思いなさいよ。それともなに、あんた童貞で、女のナマ乳見るの初めてとか?」
彼女は、わざと、ぐいと胸を見せつけて、軽くゆすったりして見せた。
「お、おい、やめろよ・・・」
柔らかく弾む彼女のおっぱいに、ブルーが明らかに動揺する。
「お前、恥じらいってものを知らんのか」
「悪の組織の女にそんなもの期待されてもね。まさか、命を助けたら、改心すると思ってた?」
「思ってねぇよ」
「なら、なぜ助けたの?」
「目の前で女が瓦礫に潰されるのを黙ってみている趣味はねぇ、正義のヒーローをなめるな」
「だったら、悪の組織の女に羞恥心を求めるのも、間違ってると思うけど」
「羞恥心がないなら、今度は火力を上げずに全裸で襲ってきたらどうだ? そっちの方が、俺たちの動揺を誘うと思うぜ」
「なるほど、あんたのところは、女一人だもね。品行方正くそ真面目な男の多いあんたらには、その作戦有効かもね」
そんな感じで助けが来るまでの間、二人で無駄話を続けていた。
もちろん、助けが来た後は、いつも通り敵味方に分かれて撤退した。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...