ヒーローだって人間です

木全伸治

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怪人

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怪人とは常に正義の味方に倒される存在であり、怪人にとって正義の味方とは、
「どうしても勝てない相手」であり、やられると分かっていて立ち向かうのは愚者の行動であろう。その猿人型怪人は、それまでの怪人と違って知性があり、正義の味方との戦闘を拒否して、悪の組織から逃亡した。
「敵前逃亡とは、なんて情けない」
「逃がすな。捕まえて処分しろ」
突然目の前の怪人が脱兎のごとく逃げ出したので正義の戦隊は唖然とした。
「なんだ、おい」
「内部分裂か」
「ま、潰し合いをしてくれるのなら、楽だ」
「ちょっと、みんな怪人が市街地に向かったのよ」
行動を起こしたのはピンクだけで、他の戦隊ヒーローは面倒くさそうに棒立ちだった。
ピンクはその逃亡怪人を追いかけた。
怪人は裏路地の行き止まりでひとりうずくまっていた。
「こ、殺さないで、死にたくない、死にたくない」
そいつはとても臆病だった。
「怖いの?」
怪人を殺しまくってきた正義の味方を怖がるのは、今まで考えなしで突っ込んできた怪人とは違い、多少はまともと言えるかもしれない。
そうして、悪の組織の追撃部隊から逃れる怪人とピンクの逃避行が始まった。怪人は目立つので、毛布を頭からかぶり、着ぐるみと偽りつつ逃避行を続け、流れ流れて地方のさびれたテーマパークにたどり着き、怪人は、そこで着ぐるみとして住み込みで働くことになり、そこにあった古い着ぐるみのゴリラを追撃部隊の目の前でピンクが破壊して、怪人の死を偽装し、そうして。
あれから一年後。
逃亡怪人は着ぐるみとしてそのテーマパークで子供たちの人気者となり、ピンクも戦隊の仲間の元へと戻り、悪の怪人との戦いの日々を繰り返していた。
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