ヒーローだって人間です

木全伸治

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ヒーローの苦悩

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「正義の味方なんてものは金持ちが、こっそりと趣味か道楽でやるもんだ」
「え? どうしてですか」
記者として、いつか憧れのヒーローたちのまじめな記事が書きたくて俺は記者を目指し、ようやく最近現役を引退したばかりのヒーローとコンタクトが取れて、こうして喫茶店で雑誌記者としてインタビューをしていた。が、なんか、身も蓋もない返事が返ってきて、俺はどんな顔をしていいのか分からなくなった。
「いいか、まず、定職につけない。怪人が現れたら、即駆けつけないといけないからな」
「はぁ、そうですね」
「それと、被害が出た場合の補償の問題もあるから、貧乏人にはきつい仕事だ」
「賠償ですか?」
「そうだ、正義のためとはいえ、周辺の物を壊しまくっていいわけじゃなし、政府の支援もない」
「え、政府は何も協力してくれないんですか」
「ああ、そういうものだ。宇宙や異世界から怪人が攻めてくるなんて話、政治家や官僚が信じると思うか? 信じたとしても、素性の怪しいヒーローより、警察か自衛隊を動かすだろ」
「はい。現実的に考えたら、公務員たる警官か自衛官の仕事ですよね」
「そう、向こうは国民を守るという大義名分からきちんと給料が税金から出るが、ヒーローってやつは税金から給料は出ない」
「だからヒーローは、金持ちの趣味か道楽でしかやっていけないと」
「そういうこと。俺だって、ここだけの話、倒した怪人の肉片をとある研究機関に密かに売り飛ばして、なんとかこれまで活動できたんだ。どうだ、ヒーローに幻滅したか。」
「いえ、ますます、ヒーローに興味を持ちました」
「じゃ、こういう黒い噂話は聞いたことないか。敵の組織をぶっ潰した際、その敵組織の貯め込んでた軍資金をそのままネコババしたヒーローがいるっていう噂」
「いえ、初耳です」
「あと、これを記事にするなら、俺の名前を出さないことと俺が怪人の肉片を売りさばいてた研究所の存在を調べたりするなよ」
「分かってます。当然、記事にするときは、名前・名称等は分からないようにしますよ」
「そうしてくれ。純粋な正義だけでは、この世の中メシは食えねぇんだ」
「はい」
俺は、そのヒーローの言葉に重みを感じ、納得してうなずき返した。
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