ヒーローだって人間です

木全伸治

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戦闘員

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俺は、バイトでテレビや映画のエキストラをやっていた。それも、そういう流れで受けたバイトで、現地集合、現地解散、だが、日当がよく、お昼にお弁当が出ると聞いたので、喜々として、現場の廃墟に出向いた。まず、最初に簡易に設置された受付で、身長や体重などを聞かれ、それに合わせての衣装を支給され、着替え用の大きなテントに案内された、中では、すでに他のエキストラの人たちが、その衣装に着替え始めていた。初めての現場なので、見知った顔はいない。正直、渡された衣装の着方が分からない。
「あれ、君、初めて?」
たぶん困っていたのが、顔に出ていたのだろう。このバイトに慣れていそうな30過ぎぐらいのおっさんが声をかけてくる、
「あ、はい」
「まず、下着だけになって、これを着る。結構伸び縮みするから、どんなデブでも大丈夫。で、着たら、手首のところのリングにボタンがあるから、それを押すとプシュッと体に密着して、戦闘員らしくなるから、あとは、そのヘルメットをかぶって、ザコ戦闘員の出来上がり」
「これ、すごく、出来がいいですね」
「ああ、そのメット本物だよ。通信機が内蔵されてるから、その指示に従って動くだけ。おまけにこのスーツ 、全身タイツみたいに薄いけど耐熱耐寒対ショックが完璧で絶対に怪我しないし、人工筋肉も織り込まれてるから、体の動きに合わせて、普段以上の力も出せるから」
「あれ、これって、子供向け特撮番組の収録現場ですよね」
「ああ、そうだよ」
「それにしては、この戦闘員のスーツ、すごすぎません?」
「ま、確かに子供向け特撮番組の収録だけど、放送されているのが銀河の他の星だから、スーツは、地球に比べたらオーバーテクノロジーになるんだよ」
「え? じゃ、この番組のスタッフって異星人?」
「そういうこと。自分の星で撮影すると、撮影許可とかが面倒だとかで、地球に来てるみたいだね」
「詳しいですね」
「ま、前のシリーズから、戦闘員のモブを趣味でやってるから。スタッフに顔なじみもできて、こっそり教えてくれたんだ。でも、君はあまり、他の人に話すなよ。君なら、べらべらひとに話すようには見えなかったからこの秘密を教えたんだからね」
「分かってます、こんな話、他に話しても誰も信じてくれないでしょう」
異星人が特撮番組を撮りに地球に来てるなんて、ひどい妄想だと笑われるのがオチである。

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