ヒーローだって人間です

ピンクの本音

「一対一で、この私に勝てると思って、オホホホホ」
悪の組織の女幹部が高笑いを浮かべながら、その手にした鞭でビシビシと地面を叩いて敵戦隊のピンクを威嚇していた。ただの鞭ではない。それは特殊な素材で、かなりの強度と柔軟性があり、そのしなる力と加速で刃物のごとく敵を切る鞭だった。
「そっちこそ、一対一になって本音では心細いんじゃないの」
悪の女幹部には常に怪人や戦闘員や他の悪の幹部がいたりして、たった一人になることは珍しい。今回は乱戦で、ピンクも仲間とはぐれ単独行動中だった。
正直、ピンクは今まで、一人で怪人を倒した経験はない。
だからと言って逃げ出すほどおとなしいお嬢さんのつもりもない。
一か八かやれるだけやってみる。いくら一人だからと言っても、自分は正義の味方なのだ。
無様なみっともない退却はできない。そして、女同士の戦いが始まったが、力はほぼ互角で、勝敗はつかず、互いの仲間が駆けつけ混戦になり、決着がつかずうやむやのうちに両者とも引くという毎度おなじみのパターンになったが、ピンクにしても女幹部にしても、相打ちというような最悪な結果にならずに済んで、内心でホッとしていた。二人とも、本音では悪や 正義のために死ぬことまでは考えてはいないのだ。