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魔王に会いたい
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勇者と呼ばれるほど強い、彼に従って、勇んで魔界に乗り込んだが、魔王がいるという魔王城の場所が我らには分からなかった。そもそも魔界と人間界とはほとんど交流がなく、当然、魔界の地図など容易に手に入るわけもなく、遭遇するモンスターたちを力でねじ伏せながら強引に魔界の奥へと進むだけで、魔王城に辿り着けるわけもなく、とにかく、モンスターを退治しながら魔王城を探した。魔界は、道があまり整備されていなくて、ダークエルフやゴブリンなど一部の種族が一緒に住んで村を作ってはいたが、その村々を繋ぐ道もない状態だった。しかも、我々人間と言葉を交わせる知能のあるモンスターは少なく、魔王城がどこか聞き出すことも難しかった。
そこで、ゴブリンたちを指揮していた知能の高そうなゴブリンを何とか生け捕りにして、魔王城のことを聞き出そうとした。
「魔王? なんだそれは?」
「魔界を統べる王のことだ、素直に教えてくれたら解放してやる」
「魔界を統べる、なんだそれは・・・」
「魔界で一番偉い奴のことだよ、隠し立てするなら殺すぞ」
縛り上げたゴブリンを我らは脅して詰問したが、その緑色の小鬼はポカンとするだけだった。
「この魔界で一番偉いのは、邪神様だ。魔王なんてのは知らん」
「じゃ、その邪神様ってのは、どこにいる?」
「地の底から、我らの行いを見ている。魔界の住民らしい行いを日々しているか地の底から見ている」
「魔界の宗教を聞いているんじゃない。この魔界の種族をまとめている統治者はどこだと聞いている」
「魔界をまとめる? 我らは生まれながら自由だ。同じ種族で仲間としてまとまることはあっても、他の種族となれ合うことはない」
「・・・もしかして、魔界には、みなをまとめる王が存在しないのか? まとまれば、力になるだろ」
「まとまれば、力になる? だが、みな自由に生きればよい。それが邪神様の教えだ」
「一人一人は自由に生きればいいさ、だが、何か成すとき一人より数人の方が力になるだろ。我らを見てみろ、ひとりじゃなく、攻撃魔法が得意、治癒魔法が得意の者がパーティーを組んでいたから、数の多かったお前たちを撃退し、お前を生け捕りにしただろ」
「あ、ああ・・・」
その言葉を解すゴブリンは、こちらの言葉にうんうんとうなずいていた。
「ふ~、まじで、魔界に魔王はいないのか・・・」
ため息を吐いた勇者は、ゴブリンの言葉にがっくりと肩を落として、そのゴブリンを解放した。
そして、魔王がいないと意気消沈して我らが人間界に引き返した数年後、王という存在を聞いたそのゴブリンが、他の種族を仲間にして魔界をまとめて、初代魔王となった。
そこで、ゴブリンたちを指揮していた知能の高そうなゴブリンを何とか生け捕りにして、魔王城のことを聞き出そうとした。
「魔王? なんだそれは?」
「魔界を統べる王のことだ、素直に教えてくれたら解放してやる」
「魔界を統べる、なんだそれは・・・」
「魔界で一番偉い奴のことだよ、隠し立てするなら殺すぞ」
縛り上げたゴブリンを我らは脅して詰問したが、その緑色の小鬼はポカンとするだけだった。
「この魔界で一番偉いのは、邪神様だ。魔王なんてのは知らん」
「じゃ、その邪神様ってのは、どこにいる?」
「地の底から、我らの行いを見ている。魔界の住民らしい行いを日々しているか地の底から見ている」
「魔界の宗教を聞いているんじゃない。この魔界の種族をまとめている統治者はどこだと聞いている」
「魔界をまとめる? 我らは生まれながら自由だ。同じ種族で仲間としてまとまることはあっても、他の種族となれ合うことはない」
「・・・もしかして、魔界には、みなをまとめる王が存在しないのか? まとまれば、力になるだろ」
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「あ、ああ・・・」
その言葉を解すゴブリンは、こちらの言葉にうんうんとうなずいていた。
「ふ~、まじで、魔界に魔王はいないのか・・・」
ため息を吐いた勇者は、ゴブリンの言葉にがっくりと肩を落として、そのゴブリンを解放した。
そして、魔王がいないと意気消沈して我らが人間界に引き返した数年後、王という存在を聞いたそのゴブリンが、他の種族を仲間にして魔界をまとめて、初代魔王となった。
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