勇者(ヒーロー)、がんばる

勇者と王女の結婚

それは結婚式というよりも盛大な式典だった。世界を救った勇者と王女との結婚を内外に知らしめるため、平和の到来を告げるセレモニーだった。で、勇者の仲間として、彼と冒険を共にした賢者の俺は、その結婚を祝福するように泣いた。正直、祝ってなどいなかった。ともに戦い、狭い洞窟で雑魚寝したり、同じ釜の飯を食っている間に、勇者に対して特別な感情を持った。仲間意識を越えた愛だった。
で、その感情を打ち明けられずに勇者と王女の結婚が決まり、自分の感情を殺して、感涙するふりをして泣いていた。
いまは勇者と王女の結婚を見逃すが、すでに、王女の父である国王には、勇者が国を乗っ取るつもりで王女と婚姻したと耳打ちしてあり、いずれ落ち着いたら、国王は勇者が謀反を企てていると糾弾して国から追放つもりだった。そして、国から追放されて意気消沈しているところを助けて、自分だけが勇者の味方だと思い込ませて彼を手に入れるつもりでいた。