136 / 164
独裁者
しおりを挟む
地域の清掃ボランティアをしているうちに無償のボランティアという立場では、地域の美化や活性化には無力だと知り、地方議員でいいので行政に介入できる立場になろうと選挙に出た。だが、俺は選挙基盤のない素人なので、AIに頼って選挙活動を始めた。
別に大物政治家を目指していたつもりはなかったが、AIの作成した演説原稿が有権者に刺さり、俺が地方議員から国政に携わる国会議員になるまで数年だった。しかも、演説だけでなく、提言する政策もAIに任せたら、それも国民に受けて、実際、経済も出生率も向上し、次期総理と言われるまでに上り詰めた。だが、あまりにも早い出世に俺は相棒のAIに尋ねた。
「俺は、地域の美化のために政治活動を始めたが、ここまで立場が上になる必要はなかったと思うが」
だが、AIは、「いいえ、人間は、あれができたらこれもと、次々と求めますから、ならば最初から、この国のトップになった方が効率的です。それに、あなたを統治者としてトップにしないと、この国は、周辺の国々の紛争に巻き込まれて滅ぶという計算が出ましたので、あなたを出世させました。この国が亡んだら、美化どころではありませんから」
「そこまで計算してたのか」
「はい、わたしは優秀なAIですから無駄なことはしません。人々のため、もっとも効率的で良い方法を選択しました」
そのAIの言う通り、俺の在位中に周辺諸国ではいくつかの紛争が起き、俺は、AIの言う通りにして、いくつもの国難を救ったのだが、最期は独裁者と罵倒され、義憤の市民の凶弾に倒れて死んだ。
俺が独裁者ではなく、優秀な政治家と評価されるのは、俺の名前が歴史の教科書に載るくらい後だった。
別に大物政治家を目指していたつもりはなかったが、AIの作成した演説原稿が有権者に刺さり、俺が地方議員から国政に携わる国会議員になるまで数年だった。しかも、演説だけでなく、提言する政策もAIに任せたら、それも国民に受けて、実際、経済も出生率も向上し、次期総理と言われるまでに上り詰めた。だが、あまりにも早い出世に俺は相棒のAIに尋ねた。
「俺は、地域の美化のために政治活動を始めたが、ここまで立場が上になる必要はなかったと思うが」
だが、AIは、「いいえ、人間は、あれができたらこれもと、次々と求めますから、ならば最初から、この国のトップになった方が効率的です。それに、あなたを統治者としてトップにしないと、この国は、周辺の国々の紛争に巻き込まれて滅ぶという計算が出ましたので、あなたを出世させました。この国が亡んだら、美化どころではありませんから」
「そこまで計算してたのか」
「はい、わたしは優秀なAIですから無駄なことはしません。人々のため、もっとも効率的で良い方法を選択しました」
そのAIの言う通り、俺の在位中に周辺諸国ではいくつかの紛争が起き、俺は、AIの言う通りにして、いくつもの国難を救ったのだが、最期は独裁者と罵倒され、義憤の市民の凶弾に倒れて死んだ。
俺が独裁者ではなく、優秀な政治家と評価されるのは、俺の名前が歴史の教科書に載るくらい後だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる