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怪獣

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私は、地球を守る英雄にはなれなかった。
対策会議で、私は科学者として、そのレポートを提出していた。
「するとなにかね、君は、あの全長二百メートルを越える化け物は、ただ、母親が恋しくて『おかあさん、おかあさん』と叫んで迷子のように彷徨っているだけの子供だと言いたいのかね」
「はい、そうだと思います。お渡しした資料にあるようにあれが落下してきた同時刻、数千キロ離れた宙域をほぼ同じスピードで飛行している小惑星が観測されています。これが母親で、その母親の後を追っていた子供が地球の重力に捕まってしまい、地上に落下、子供ゆえ、宇宙に戻る術を持たず、母親を探して、現在、地上を徘徊しているのではないかと」
「だとして、どうすればいい? おかあさんが恋しいだけの迷子の怪獣だから、優しく保護しろというのかね、君は。すでにどれだけの犠牲が出ていると思っているんだね」
「ですが、これ以上子供に攻撃したら、母親が怒るのではないかと」
「母親? 君のこの資料では、その母親と思われる小惑星は、もうずいぶん、地球から離れているようだが。それに、その小惑星が、あれの母親と確定した訳ではないのだろ」
「はい、ですから、現在、各国の天文台と連携して調査中です」
「つまり、その小惑星が母親ではなく、ただの小惑星という可能性もあるわけだな」
「は、はい・・・」
「ならば、その母親かもしれない小惑星よりも、まずは地上にいるあれの処分が先決ではないかね」
「はぁ・・」
私は科学者としてできるだけ警告はした。だが、科学者の警告を無視する政治家というものは珍しモノではなく、子供の怪獣への攻撃は続けられ、痛みに叫ぶ子供の声につられて、怒りに燃えた母親の襲来を招き、私の忠告も虚しく地上は地獄になった。
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