勇者(ヒーロー)、がんばる

敵討ち

父の仇を討つため、私は勇者の後を追って、異世界に来た。だが、この異世界では魔法が存在せず、しかも、法律で剣の携帯も許されない世界だった。
せっかく父の形見の魔剣や鎧を持ってきたが、いまはアパートの押し入れに仕舞ったままだ。この異世界は人間が多く、また、魔族やモンスターのような異形なものは存在しないようで、異世界に来られた自分、身一つで、家臣もいない、情けなさに落ち込んだりもしたが、なんとかバイトを見つけて、生計を立て、我が父である魔王を討ったこの世界にいるはずの勇者を探し続けた。
勇者だから目立って、すぐに見つかると思っていたが、この異世界に帰ってきていた勇者は、この世界では凡人扱いで、なかなか見つからず、その日、私は、ふと立ち寄ったコンビニで、レジをしている勇者と出会った。私の世界に急に勇者として召喚されたため、前の職をなくし、フリーターとしてコンビニ店員になったらしい。その情報は、そのコンビニに客として通ってさりげなく常連客として聞き出したものだ。さすがに彼は、異世界に召喚されて勇者をやっていましたとは打ち明けずに、なんとなく言葉を濁しながら自身の境遇を話した。父の仇ではあるが、私も、この世界で生計を立てるために苦労したので、なんとなく、彼に同情的になり、敵討ちなんて、どうでもよくなり、彼と付き合い、この異世界で、彼の妻になることを決めた。