勇者(ヒーロー)、がんばる

木全伸治

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雑魚100人

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悪の組織における戦闘員は、メインの怪人とは違って雑用係の戦闘力の低い雑魚である。
最初にヒーローに殴られて、メインの怪人の引き立て役となるのが、常だった。だが、そんな雑魚戦闘員も百人いれば、ただの雑魚ではない異様にずる賢い奴がでてくるものである。
最初の異変は、敵である、戦隊ヒーローに起きた。五人戦隊のうちのグリーンが戦闘にでてこなくなったのである。これまで怪人を五人がかりでボコっていたのが、四人がかりとなり、次にブルー、ピンクと姿をみせなくなり、さすがにレッドとイエローのふたりだけになると雑魚の戦闘員相手でさえ苦戦し始めた。なんだおかしいなと雑魚戦闘員たちも感じ始めた。すると、仲間の戦闘員のひとりが、新聞をバッと見せて秘密を打ち明けた。
「実は、俺、変身する前の無防備な時に、やつらをやっちまったんだ」
そう言って見せられた新聞の一面には、連続通り魔かという見出しとともに、犠牲者らしい三人の若者の顔写真が乗っていた。
「グリーン、ブルー、ピンクか?」
「ああ、そうだ。俺が通り魔のふりをしてグサリとな。あいつら、怪人を倒した後は、油断しきってるから尾行するのは簡単だった。で、あいらのアジトを見つけ、隙を見て、一人づつな」
「すげぇじゃねえか」
「ちょっと卑怯すぎじゃねぇか」
真面目にヒーローにボコられている先輩戦闘員が眉をひそめる。
「いやいや、俺たちは悪の組織ですよ。いままで卑怯な手を使わずに、真正面から立ち向かっていた方がおかしいんです」
「けど、総統とかに知られたら、どうする。勝手なことをしたとして、粛清されないか」
「勝てば官軍です。今まで向こうが複数でこっちをボコっていたんですよ。闇討ちで相手の数を減らして対等にするのは、悪としては正しい行為だと思いますが。というより、今の総統や怪人たちの戦い方が、悪らしくない。奴らは戦隊と名乗って複数で攻撃してくるのに、こっちはいつも怪人は一体のみ。このままでは、永遠に俺たちは勝てないと思います」
彼の言い分には、説得力があり、そうして、彼の考えに賛同する者が増えて、ヒーローたちはヒーロースーツを着ていない生身の時に殺されていき、最後に残ったレッドは、たった一人になっても戦い続けて、今まで数の優位でボコっていた怪人にタイマンでボコられて、正義の戦隊は壊滅し、その勝利に酔うどさくさに、彼は総統を暗殺し、彼が新しい指導者となり、そして、この国の独裁者へと上り詰めた。すべての権力を掌握した彼は、ダイナミックに行革を行い、国を発展させた。
彼は独裁者ではあったが、統治者として有能だった。弱者を虐げることはなく、平等な税制を実行し、いくつかの政策で彼は景気を上向かせたので、国民の大半が、彼を評価し、受け入れていた。
が、周辺諸国は彼が国を簒奪した悪党であると叫び、独裁者から国民を解放するためだと戦争を仕掛けてきた。国民を解放するなど建前であり、彼を打倒し、国を奪うつもりだった。そして、彼は悟った。この世に真の平和をもたらすためには、力を持って世界をすべて征服し、世界征服により、すべての国を強引にでも一つにまとめるしかないと。そして、彼の平和を求めての世界征服を目指す戦いが始まった。



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