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初めてのスクープ
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初めてのスクープになるはずだった。だが、編集長に見せた写真は、どれも不鮮明で、顔がハッキリと写っていなかった。それは、ヒーローが、ヒーロースーツに着替える一瞬を捉えたもので、夢中でシャッターを切ったのだが、一瞬で服を脱ぎ、ヒーロースーツを着るその動きはあまりにも速すぎて、被写体が男性で、上半身裸になっていることは辛うじて分かるのだが、その顔や手足はブレてはっきりしない。
「こんな写真使えないな」
「でも、ヒーローの変身シーンの決定的瞬間ですよ」
私は食い下がろうとしたが、編集長の渋い顔は変わらなかった。
「おいおい、なんだ、このブレブレの写真は。こんなの新聞に載せるつもりか」
横から覗き込んできた無精ひげの同僚が、私の写真に文句をつける。
「載せてもらいたかったら、こういう写真を撮れよ」
そういいながら、編集長のデスクに自慢げに写真を置く。
それは火事場から助け出されたらしい少女が、母親と無事に抱き合っている姿だった。当然、ピントはぴったりで、しかも、背後で火を消そうとしている緊迫した消防隊との構図もよく、まるで映画のワンシーンのような写真だった。
「新聞の一面を飾りたければ、こういうのを撮れよ」
「うん、良し、こいつを一面だ」
編集長は、もう私を見ていなかった。編集部が慌ただしく動き出す中、私はグッと敗北感を味わっていた。ただ、私は気づいていた、いつも、こんな決定的な写真が撮れるのは、危険に飛び込んでいくヒーロー自身だからだろうと。そう、私は同僚の彼を張り、この変身シーンを撮ったのだ。
今回は失敗したが、いずれ言い逃れできないような決定的写真を撮ってやると私は決意していた。
「こんな写真使えないな」
「でも、ヒーローの変身シーンの決定的瞬間ですよ」
私は食い下がろうとしたが、編集長の渋い顔は変わらなかった。
「おいおい、なんだ、このブレブレの写真は。こんなの新聞に載せるつもりか」
横から覗き込んできた無精ひげの同僚が、私の写真に文句をつける。
「載せてもらいたかったら、こういう写真を撮れよ」
そういいながら、編集長のデスクに自慢げに写真を置く。
それは火事場から助け出されたらしい少女が、母親と無事に抱き合っている姿だった。当然、ピントはぴったりで、しかも、背後で火を消そうとしている緊迫した消防隊との構図もよく、まるで映画のワンシーンのような写真だった。
「新聞の一面を飾りたければ、こういうのを撮れよ」
「うん、良し、こいつを一面だ」
編集長は、もう私を見ていなかった。編集部が慌ただしく動き出す中、私はグッと敗北感を味わっていた。ただ、私は気づいていた、いつも、こんな決定的な写真が撮れるのは、危険に飛び込んでいくヒーロー自身だからだろうと。そう、私は同僚の彼を張り、この変身シーンを撮ったのだ。
今回は失敗したが、いずれ言い逃れできないような決定的写真を撮ってやると私は決意していた。
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