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おっさんヒーロー

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「あの、本当にヒーローなんですか?」
助けようとしたのに逆に助けてくれた女子校生が、呆れるように俺を見ていた。
建物の物陰にコソコソ隠れて、怪人の様子を見る。幸い、うまく敵の目を誤魔化して、こちらを見失っているようだ。
「ごめんね、かっこ悪いとこ見せちゃって」
十数年ぶりに着た戦闘スーツはパツパツで、だらしなく膨らんだ中年腹は隠しようもなかった。
ここ十数年以上大人しくしていたのに、急に活動を再開しやがって、分かっていたら、少しは筋トレして備えていたのに、戦いから離れ、すっかり中年体型になった俺だが、人々が目の前で襲われているのに何もしないなんてできず飛び出したら、見事にピンチとなり、女子校生の痴漢防止スプレーに助けられたのだ。
とにかく、どうする。マスクの下の息が荒い。明らかに肉体的な衰えが激しい。
せめて、この子だけでも助けないと。と思ったとき、懐かしい女性専用戦闘スーツに身を包んだ、妻が現れて、俺と同じく、年を食っているはずなのに、華麗に敵を薙ぎ払った。
「おいおい、強いじゃないか、いつ訓練を」
敵が駆逐されたので、物陰から出ると、腹の出ている俺を憐れむように妻は見た。
「だから、言ったでしょ、あなた。週一回でもジムに行った方がいいって」
「いや、お前こそ、ダイエットのためだって・・・」
「そんなの建前に決まってるでしょ、情けない、昔は、こんな奴ら、あっさり片づけてたくせに」
俺を助けてくれた女子高生が、キラキラした目で妻を見ていた。
「あの、ファンなんです、サイン、もらえますか?」
なるほど、ヒーローファンだったのか。だとしたら、今の俺に随分幻滅しただろうなと、思ったが、その子は、すごく真面目な、いい子で、俺たち夫婦と親しくなり、妻から、色々、ヒーローの心得を聞き、妻からヒーロースーツを受け継ぎ、二代目として活躍した。もちろん、おれも、負けられないと中年おじさんの意地を見せて、腹をへこまして、現役復帰した。
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