5 / 29
おっさんヒーロー
しおりを挟む
「あの、本当にヒーローなんですか?」
助けようとしたのに逆に助けてくれた女子校生が、呆れるように俺を見ていた。
建物の物陰にコソコソ隠れて、怪人の様子を見る。幸い、うまく敵の目を誤魔化して、こちらを見失っているようだ。
「ごめんね、かっこ悪いとこ見せちゃって」
十数年ぶりに着た戦闘スーツはパツパツで、だらしなく膨らんだ中年腹は隠しようもなかった。
ここ十数年以上大人しくしていたのに、急に活動を再開しやがって、分かっていたら、少しは筋トレして備えていたのに、戦いから離れ、すっかり中年体型になった俺だが、人々が目の前で襲われているのに何もしないなんてできず飛び出したら、見事にピンチとなり、女子校生の痴漢防止スプレーに助けられたのだ。
とにかく、どうする。マスクの下の息が荒い。明らかに肉体的な衰えが激しい。
せめて、この子だけでも助けないと。と思ったとき、懐かしい女性専用戦闘スーツに身を包んだ、妻が現れて、俺と同じく、年を食っているはずなのに、華麗に敵を薙ぎ払った。
「おいおい、強いじゃないか、いつ訓練を」
敵が駆逐されたので、物陰から出ると、腹の出ている俺を憐れむように妻は見た。
「だから、言ったでしょ、あなた。週一回でもジムに行った方がいいって」
「いや、お前こそ、ダイエットのためだって・・・」
「そんなの建前に決まってるでしょ、情けない、昔は、こんな奴ら、あっさり片づけてたくせに」
俺を助けてくれた女子高生が、キラキラした目で妻を見ていた。
「あの、ファンなんです、サイン、もらえますか?」
なるほど、ヒーローファンだったのか。だとしたら、今の俺に随分幻滅しただろうなと、思ったが、その子は、すごく真面目な、いい子で、俺たち夫婦と親しくなり、妻から、色々、ヒーローの心得を聞き、妻からヒーロースーツを受け継ぎ、二代目として活躍した。もちろん、おれも、負けられないと中年おじさんの意地を見せて、腹をへこまして、現役復帰した。
助けようとしたのに逆に助けてくれた女子校生が、呆れるように俺を見ていた。
建物の物陰にコソコソ隠れて、怪人の様子を見る。幸い、うまく敵の目を誤魔化して、こちらを見失っているようだ。
「ごめんね、かっこ悪いとこ見せちゃって」
十数年ぶりに着た戦闘スーツはパツパツで、だらしなく膨らんだ中年腹は隠しようもなかった。
ここ十数年以上大人しくしていたのに、急に活動を再開しやがって、分かっていたら、少しは筋トレして備えていたのに、戦いから離れ、すっかり中年体型になった俺だが、人々が目の前で襲われているのに何もしないなんてできず飛び出したら、見事にピンチとなり、女子校生の痴漢防止スプレーに助けられたのだ。
とにかく、どうする。マスクの下の息が荒い。明らかに肉体的な衰えが激しい。
せめて、この子だけでも助けないと。と思ったとき、懐かしい女性専用戦闘スーツに身を包んだ、妻が現れて、俺と同じく、年を食っているはずなのに、華麗に敵を薙ぎ払った。
「おいおい、強いじゃないか、いつ訓練を」
敵が駆逐されたので、物陰から出ると、腹の出ている俺を憐れむように妻は見た。
「だから、言ったでしょ、あなた。週一回でもジムに行った方がいいって」
「いや、お前こそ、ダイエットのためだって・・・」
「そんなの建前に決まってるでしょ、情けない、昔は、こんな奴ら、あっさり片づけてたくせに」
俺を助けてくれた女子高生が、キラキラした目で妻を見ていた。
「あの、ファンなんです、サイン、もらえますか?」
なるほど、ヒーローファンだったのか。だとしたら、今の俺に随分幻滅しただろうなと、思ったが、その子は、すごく真面目な、いい子で、俺たち夫婦と親しくなり、妻から、色々、ヒーローの心得を聞き、妻からヒーロースーツを受け継ぎ、二代目として活躍した。もちろん、おれも、負けられないと中年おじさんの意地を見せて、腹をへこまして、現役復帰した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
私の周りの裏表
愛’茶
キャラ文芸
市立桜ノ小路女学園生徒会の会長は、品行方正、眉目秀麗、文武両道、学園切っての才女だった。誰もが憧れ、一目を置く存在。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があった。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる