ヒーローは楽じゃねぇぞ、畜生!

木全伸治

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ヒーローになりたい

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負け続けの人生に嫌気がさしていた。就職とか失敗して落ちぶれて悪の組織の戦闘員なんかになっちまったが、いつまでも負けてばかりいる人生に我慢できなくなって、その日、勝利したヒーローたちが撤退しようとしたとき、ひとり、仲間と別行動をとり、ざっとリーダーのレッド前に出て土下座した。
「俺も、ヒーローにしてください。お願いします」と、見事な土下座で頼み込んだ。
するとレッドは肩をすくめて、
「いきなり、そんなことを言われても、信用できない。分かるだろ」
「はい、分かります。そこを何とかお願いします」
地面に額をこすりつけんばかりに頼む。
「そんなこと、いっても、あんたら、今まで何してきたのか忘れてない。冷たいようだけど、ヒーローなんて、無理。さっさと仲間の元に帰りなさい」
そばにいたピンクがきっぱり言い放つ。だが、当然だと俺も思う。逆に、ヒーローが自分を悪の怪人の仲間にしてくれと言ってきたら、何か裏があるんじゃないかと疑うだろう。そうして、ヒーローたちに拒否られかけたが、陽気なイエロー一人だけが、
「なかなか面白いじゃん。とりあえず、ついてきな」
まずは雑用として、ヒーローたちの手伝いをすることになった。ヒーローたちは戦闘能力には優れていたが、清掃や料理などの家事が壊滅的にだめで、基地の生活空間の改善を俺が行った。これも、ヒーロー見習いの第一歩と思い、戦闘員になる前にしていたバイトの経験を生かして、ヒーローたちの日常生活のサポートを一生懸命にした。
そういうことを頑張っていると、初めは警戒していたレッドたちも俺を認めてくれるようになり、俺も、自分の知る限りの組織の秘密を伝えた。
そして、俺用のヒーロースーツを用意してやろうかという話が出て来た頃、俺は裏切り者として、組織のかつての仲間に暗殺されてしまった。無念だが、負け続けの俺の人生らしい最期だとも思う。


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