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吸血鬼の姫アリティー・ドン

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勇者たちは俺を抹殺して、自分たちの敗北の恥辱を消し去りたいのだろう。なにしろ、俺たちしか勇者たちの敗北を知らない。つまり俺たちを亡き者にすれば、勇者たちの惨めな敗北の仔細を知る者はいなくなる。血眼になって追撃してくるのも当然だ。
村長は俺たちに馬車と馬を用意してくれた。村に残って守ってほしいという願望があっても、助けられた恩はきちんと返さないといけないと感じているようだ。それに王女が復権すれば、人間たちを魔界から追い出して、村の安全も守られると村長も覚悟を決めたようだ。
俺が二頭の馬の手綱を握り、王女がホロのある荷台の方に乗る。俺は手綱を握りながら、触手で鞭のように馬のけつをたたいた。
「ああ、触手様、ご無事で・・・」
あの巨乳娘が、木の陰から俺を艶めかしい目で見送っていた。魔界から人間どもを叩き出したら、この村に戻って、あのおっぱい娘を俺の触手なしでは生きられない身体にして、俺の身の回りの世話をさせるのもいいかもしれない。それまでは死ねんな。
 実は、これまでにも立ち寄った村々でも何人か、あのおっぱい娘のように俺の触手で遊んでやった娘たちがいる。邪神様の一物に似ているせいもあるかもしれないが、俺の触手の快楽を忘れられずに、悶々とした日々を送っているかもしれない。これは、人間どもに勝利したあかつきには、猫耳、牛なみ巨乳娘など色とりどりの魔族の娘たちをはべらせたハーレムも夢ではないだろう。そう思うと、手綱を握る触手の力がつい強くなってしまう。馬の扱いはこの世界に来てから覚えたが、馬をつぶしてしまうような扱いは危険だ。馬がつぶれる=逃げ足が落ちる。俺の触手はタフで見た目以上に速いが、王女は、俺を召喚できる程度の魔法の才はあるが、この逃避行では、正直お荷物に近い。攻撃魔法や回復魔法などの呪文を多少は使えるが、即効で唱えるのは無理で、人間たちとの遭遇戦では、大体俺一人で対応していた。
その時の襲撃も、王女は後ろにいただけで、敵の察知も防御もできず。危うく、馬車ごと、どこかに飛ばされそうになった。

危険を察知した俺の触手たちは神速で動き、王女を抱えながら馬車から飛び降りた。その直後、風の魔法の直撃を受けて、もらったばかりの馬車がバラバラに吹っ飛ばされた。
「ちぇ、もう来やがったか」
俺の触手はチート級の過敏さを持っていたので、その危険な風も、直撃前に察知できたのだ。チートな俺の目がすぐ、その風の攻撃魔法を放った魔法使いを見つける。なるほど。俺の触手を恐れてアウトレンジからの魔法攻撃か。俺が敵なら、当然そういう手を考えるだろう。なにしろ、俺の触手は無限に伸びるわけではなく、それなりに限界があったのだ。超遠距離攻撃の対処法がない。人間の兵との小競り合いで、それで逃がした人間の兵は多い。もう、俺の触手の間合いは、実際に戦った勇者たちには悟られたのだろう。正直成す術がない。馬は馬車が吹き飛ぶと同時に明後日の方向に逃げだしていた。
素早く手近な岩陰に隠れるが、岩ばかりの平地で、おそらくこの岩に隠れたのは向こうからも見えただろう。
どうする。あの神殿のときのように上から奇襲できる天井はここにはない。
まずい、まずいぞこりゃ・・・。
王女も、こちらが圧倒的に不利だと理解しているのか、暗い表情でうつむいている。と、俺のチートな耳が空をバサバサと滑空する羽音を聞いた。それは俺たちを攻撃した勇者一行の真後ろに着地した。
「あれあれ、ご高名な勇者様ご一行が、ビクビクと怯えてこんなに離れて攻撃ですか。それとも、勇者様より、お強い方が、あちらにいるのかしら。ふふふ」
そうやって勇者たちの真後ろでくすくす笑っていたのは蝙蝠のような巨大な黒い羽根を背に持つ色白の少女だった。美人だ、魔界の王女様も美しいが、空から舞い降りた蝙蝠羽の少女も、夜を統べる女王のような妖しい気品を持っている。しかも、俺好みの巨乳だ。
「魔王を倒した勇者がこの辺りに来てるって聞いてきたんだけど、なんか、期待外れね」
「貴様、吸血鬼か!」
確かに彼女には牙のような八重歯があり、そう指摘されて彼女は肩をすくめていた。
「だとしたら、どうするの?」
その挑発に応えるように槍使いの女戦士が、その槍で鋭く突くが、彼女は人差し指で受け止めた。
「遅い遅い」
俺の触手を何本か切り落とした槍なのに、人差し指で止められていた。
「く、なんだ、このバカ力は」
人差し指でその槍の先を逆に押し返してる。
女戦士が焦る。
「貴様、何者っ!」
「吸血鬼の姫アリティー・ドンって、結構、人間にも知られていると思ったんだけどな。まだ勇者たちには知られてないか、残念」
「吸血鬼の姫だと、なんで、こんな真っ昼間に」
「あんたたちばか? ここは人間界じゃなくて、魔界。魔界の太陽が吸血鬼の肌を焼くとお思い?ふふふ」
彼女は嘲るように笑い、槍をデコピンするようにはじいた。
「くっ」
指だけだがすごい力に女戦士がよろけ、勇者が聖剣を抜いて一刀両断にしようと振りかぶるが、吸血鬼の方が速く、後ろに回り込み耳元で囁く。
「ダメダメ、遅い遅い…、魔王を倒して調子に乗ってるようだけど、うちの父が政治とかいうのを面倒くさがって魔王の地位を譲ってあげただけで、魔界には、魔王クラスの猛者はまだいるのよ」
カッと光が走ったので、彼女は蝙蝠の羽でひらりと空に舞って躱した。
「魔界の太陽が効かなくても、神の後光なら効くでしょ?」
懐から神器の鏡を取り出した賢者がその鏡の光を彼女に当てようと鏡を向けている。
「あらあら、さすがに、この光はまずいわね。退散させてもらいましょうか」
蝙蝠の羽を大きくばたつかせて俺たちの方に飛んでくる。
「にげるわよ、つかまって」
俺は触手で王女を抱きかかえながら、ひょいと吸血鬼の姫君の腰に触手を巻き付かせて、一緒に空へと舞いあがった。
勇者は、悔しそうに空の彼方に飛んでいく俺たちをにらんでいた。

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