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北への道
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王がいるということは支配すべき土地と民がいるわけで、魔族とはいっても魔力の乏しい下級の魔族は農民として、人間と変わらず魔界で農耕を行い村を作っていた。王女と同じで、角や瞳の色、尻尾やけもの耳など人間と多少異なるだけで神殿を出て北に向かう途中で見た村の光景は、俺の知っている田舎の農村と大して変わりはなかった。
彼らと人間の大きな違いは、邪神の神殿があるように禁欲が美徳ではなく、おのれの夢や欲望のために卑怯卑劣な手段は仕方ないとされていた。もちろん、やり過ぎれば、軽蔑や反発はあるようだ。
つまり、欲しい女のために、邪魔な夫を排除する略奪愛は罪とはみなされないが、その行為で恨まれて逆に殺されるのは当然というような感じで、盗人は盗まれた者の恨みを買って、そのしつけの悪い両手を切り落とされても文句は言えない。逆に人間は禁欲こそが神の認める至高の美徳であり、本能のままに平気で行動する魔族は人間から見ると邪悪な異教徒であり、許し難い存在だと、北に向かいながら俺は理解した。
途中、何度か王女の行方を捜している捜索隊らしい人間の武装集団にあったが、勇者たちとは違い、所詮は雑兵であった。しかも、新兵が多く、それなりの手練れがいても高齢だったりして俺の触手の一撃で軽く吹っ飛ばせた。
俺の触手の数を超える万の兵士に囲まれたら、さすがの俺もやばいだろうとは思うが、幸い、ここは人間の領域ではない魔界の奥地であり、それほどの大軍は徘徊していなかった。けれど、一度だけ百人近い武装した兵士たちに見つかった時は焦った。伸びる触手で兵士を間合いに近づける前に倒し、王女を守り切った。そうして、王女が無事で、邪神の使いである魔物に守られて北に向かっているという噂はすぐ魔界中に広まり、自力であの触手縄から脱出した勇者一行が、俺たちの追撃を始めたという噂も俺たちの耳に届いていた。
で、その日は人間たちから解放した、とある村の村長の家で、ご馳走をよばれて、勇者たちがもう近くまで追いついてきているという情報を村長から聞かせてもらっていた。
「せっかく、殺さず放置してやったのに、しつこい連中だ」
俺はため息をつきながら触手で御馳走をつかみ触手の奥に隠れている自分の口に運んでいた。
「やはり、あの時、殺しておくべきでしたね」
魔界の王女が口惜しそうな顔をする。
「だが、俺の触手で、またヌルヌルにして、可愛がってやるだけだ。念のため、朝一にこの村を出発しよう」
勇者を恐れる理由はなかった。こちらの手は知られたが、逆にこちらも相手の手の内を把握している。
俺が朝一で出発するというのが聞こえたらしい村長が慌てた。
「あ、あの、もう、行かれるのですか、も、もし、また人間どもがこの村に戻ってきたときは? まさか、この村を見捨てるつもりですか」
犬の顔を持つ獣人の村長がうろたえるように言った。
「人間たちには、素直に俺たちは北に向かって旅立ってもういないと言えば、ひどいことはしないだろう。我らがいないと分かれば、人間どもは、こんな村など放置して、我らを追撃してくるはず」
ちっぽけな村より、魔族の反攻の旗印になりえる魔王の娘が生き延びている意味は大きい。
「いまは一刻も早く王女が北の勢力と合流して、人間どもを魔界からたたき出すのが先決。分かってくれ、村長」
村長の心配はもっともで、この村を解放する際に追い出された人間の兵士たちが恨みに思って、村の焼き討ちに戻ってくる可能性もゼロではない。王女と俺様に残ってもらって村を守ってもらいたいというのはしょうがない。
「これから俺たちは北に向かって、多くの村を救うつもりだ」
村一つのためにここで北への歩みを止めたら、他の村が救えない。大局を見るというのは、そういうことだ。
「そ、そうですか、では、触手様の無事を願って」
村長の目配せで、おそらくこの村で一番の美人であろう牛そっくりな角を生やした巨乳娘が俺の隣に座った。さすがあの邪神の神殿を作る魔界である、俺の触手を気味悪がるどころか逆に尊敬するように撫でさする。だから、俺も遠慮なく、その牛並みの乳を触手たちで、もみほぐした。
「さすが触手様、太いですわね」
王女は牛娘と戯れる俺をちらりと一瞥しただけで何も言わなかった。父親の魔王が性欲好きなサキュバスたちを侍らせて、魔王城で卑猥なサバトを催していたことを知っている。彼女とて、美形のインキュバスらを自らの寝室に招いて、目の前で、男同士の猥褻なまぐわりを観賞したこともあるくらいだ。
とりあえず、その村娘を触手の虜にした翌朝、俺と王女は村を出発した。
北を目指し、人間どもに注意しながら突き進んだ。
彼らと人間の大きな違いは、邪神の神殿があるように禁欲が美徳ではなく、おのれの夢や欲望のために卑怯卑劣な手段は仕方ないとされていた。もちろん、やり過ぎれば、軽蔑や反発はあるようだ。
つまり、欲しい女のために、邪魔な夫を排除する略奪愛は罪とはみなされないが、その行為で恨まれて逆に殺されるのは当然というような感じで、盗人は盗まれた者の恨みを買って、そのしつけの悪い両手を切り落とされても文句は言えない。逆に人間は禁欲こそが神の認める至高の美徳であり、本能のままに平気で行動する魔族は人間から見ると邪悪な異教徒であり、許し難い存在だと、北に向かいながら俺は理解した。
途中、何度か王女の行方を捜している捜索隊らしい人間の武装集団にあったが、勇者たちとは違い、所詮は雑兵であった。しかも、新兵が多く、それなりの手練れがいても高齢だったりして俺の触手の一撃で軽く吹っ飛ばせた。
俺の触手の数を超える万の兵士に囲まれたら、さすがの俺もやばいだろうとは思うが、幸い、ここは人間の領域ではない魔界の奥地であり、それほどの大軍は徘徊していなかった。けれど、一度だけ百人近い武装した兵士たちに見つかった時は焦った。伸びる触手で兵士を間合いに近づける前に倒し、王女を守り切った。そうして、王女が無事で、邪神の使いである魔物に守られて北に向かっているという噂はすぐ魔界中に広まり、自力であの触手縄から脱出した勇者一行が、俺たちの追撃を始めたという噂も俺たちの耳に届いていた。
で、その日は人間たちから解放した、とある村の村長の家で、ご馳走をよばれて、勇者たちがもう近くまで追いついてきているという情報を村長から聞かせてもらっていた。
「せっかく、殺さず放置してやったのに、しつこい連中だ」
俺はため息をつきながら触手で御馳走をつかみ触手の奥に隠れている自分の口に運んでいた。
「やはり、あの時、殺しておくべきでしたね」
魔界の王女が口惜しそうな顔をする。
「だが、俺の触手で、またヌルヌルにして、可愛がってやるだけだ。念のため、朝一にこの村を出発しよう」
勇者を恐れる理由はなかった。こちらの手は知られたが、逆にこちらも相手の手の内を把握している。
俺が朝一で出発するというのが聞こえたらしい村長が慌てた。
「あ、あの、もう、行かれるのですか、も、もし、また人間どもがこの村に戻ってきたときは? まさか、この村を見捨てるつもりですか」
犬の顔を持つ獣人の村長がうろたえるように言った。
「人間たちには、素直に俺たちは北に向かって旅立ってもういないと言えば、ひどいことはしないだろう。我らがいないと分かれば、人間どもは、こんな村など放置して、我らを追撃してくるはず」
ちっぽけな村より、魔族の反攻の旗印になりえる魔王の娘が生き延びている意味は大きい。
「いまは一刻も早く王女が北の勢力と合流して、人間どもを魔界からたたき出すのが先決。分かってくれ、村長」
村長の心配はもっともで、この村を解放する際に追い出された人間の兵士たちが恨みに思って、村の焼き討ちに戻ってくる可能性もゼロではない。王女と俺様に残ってもらって村を守ってもらいたいというのはしょうがない。
「これから俺たちは北に向かって、多くの村を救うつもりだ」
村一つのためにここで北への歩みを止めたら、他の村が救えない。大局を見るというのは、そういうことだ。
「そ、そうですか、では、触手様の無事を願って」
村長の目配せで、おそらくこの村で一番の美人であろう牛そっくりな角を生やした巨乳娘が俺の隣に座った。さすがあの邪神の神殿を作る魔界である、俺の触手を気味悪がるどころか逆に尊敬するように撫でさする。だから、俺も遠慮なく、その牛並みの乳を触手たちで、もみほぐした。
「さすが触手様、太いですわね」
王女は牛娘と戯れる俺をちらりと一瞥しただけで何も言わなかった。父親の魔王が性欲好きなサキュバスたちを侍らせて、魔王城で卑猥なサバトを催していたことを知っている。彼女とて、美形のインキュバスらを自らの寝室に招いて、目の前で、男同士の猥褻なまぐわりを観賞したこともあるくらいだ。
とりあえず、その村娘を触手の虜にした翌朝、俺と王女は村を出発した。
北を目指し、人間どもに注意しながら突き進んだ。
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