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❉うららかな日常(社視点)

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ある麗らかな午後の始め、
ここお社に、ある3つの人影がありました。


一人は
この社…もとい私の守り神である銀獣『銀狐』


二人目は
河原の守り神である『蛙』を模した姿を持つ河童。


そして
此処の村人の孫にあたる、
名を『本条結子』と申す少女で3人。

この子が社にお供えを持ってきた日から、銀狐は前より少し元気になった。


うんうん、良い事だ。
銀狐は対になる守り神の白狐が姿をくらましてから、元気なかったからなぁ。



   え?

  「じゃあお前は誰」って?

   僕は彼らがいる場所。
   この社だよ。




「だ~か~ら~!
鯛焼きは粒餡が絶対いいですって!」


社の屋根の下で声を張り上げる少女の発言を、
銀狐は鼻で笑う。



「何馬鹿な事を言ってる、こし餡だろう。」



その横で傍観する川の神もいる。
うん、どうやら今日の彼らは、随分可愛らしい理由で喧嘩してるみたいだね。



「そうだ、蛙さんはどっち?」

どうやら可愛らしい口喧嘩の勝敗は、川の神に委ねられたらしい。

「こし餡か」


「粒餡!」

ふたりは真剣な面持ちで川の神に詰め寄る。 

川の神がおろおろとしている…こんな珍しい光景なかなかないなぁ。
写真に納めたいぐらいだね。

「えっとぉ…





正直、
きゅうりが入ってないならあまり興味ないです」





「そ、

それじゃ勝敗が決まらないじゃないです
か~!
きゅうりあげるので私と同じ、粒推しになってくださいよ!!!」


「神社で賄賂しようとするな。罰当たりな奴め…」


あぁ、また口論になってしまった…

人間は食べるの好きだよね、僕は『食べる』っていうのをした事はないけど、あんな風に銀狐と盛り上がれるなら『食べる』を、少し羨ましく思うな。



「稲荷様に結子、何をケンカしてるんだぁ。」

「お婆ちゃん!」


そこに米子が現れた。

今は皺だらけのお婆ちゃんだけど
小さい頃、米子はよくこの社に御参りにきていたから僕はよく覚えているよ。


米子は手にお盆を持っていた。

その上には大きいお皿にのった、大量の鯛焼きもあった。


「えええもう焼いちゃったの?鯛焼き!」



………なるほど、
この為に言い争ってたのか。


「お婆ちゃん!中は粒餡だよね!!?」


「中身は生クリームだぞ。」


「……………え?」


「小豆はあたしが好かん」


「お婆ちゃんがそれ言っちゃ、なんか、駄目じゃない……?」






3人はその後『生クリーム』が入った鯛焼きを「甘い!」と絶賛して食べてた。



そして半分は、社にお供え物としておいてってくれた。

僕は「甘い」も「おいしい」も分からないけど、そんな素敵なものを分けてくれたのが嬉しかったからこれが「おいしい」なのかもしれないね。


多分、きっと。




 ✴


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