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遠くへジャンプ!新人冒険者の薬草採取
エピローグとウンチク
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パタヘネは、その後、週2回ずつフジカルの元に通い、3ヶ月間、コツコツとトレーニングを続けた。
トレーニングを続けるだけではなく、IMTP(Isometric Mid-Thigh Pull)によるRFDの測定も定期的に行い、最大筋力やRFDを確認しつつ現状把握が行われていた。
トレーニングを続けていくうちにパタヘネの能力が向上し、より高い負荷にチャレンジできるようにもなっていった。フジカルは、状況を観察しつつ、ケトルベルスイングで利用するケトルベルの重量を増やしたり、デッドリフトで利用するウェイトを重くしたりといった調整も行った。
3ヶ月を超え、パタヘネがジャンプできる距離が伸びてきたことを確認したフジカルは、冒険者ギルドの地下訓練場に、本来ジャンプで飛び越えるべき環境と同じような地形を作り出していた。
「そろそろ、ジャンプできる距離も増えてきたから、本番に近い環境でのジャンプにチャレンジしようか!」
とフジカルがパタヘネに伝えた。
実際にジャンプで目標とする障害を超えられるのかどうか、現地に行かなくても良いように、フジカルは測定と環境再現の準備を行っていたのだ。少し上り坂になりつつ、飛び越えるべき川と同じだけの距離がわかるように地面に線が引いてある。
「よーーーし。いくっすよー」とパタヘネは言ってから、仮想的な崖に向かってダッシュしてジャンプした。
そして、ぴょーん、と、妙にあっさりと目標とした距離を超えてしまった。そして、その距離は、本来ジャンプで超えるべき距離よりも少し余裕があった。
「やったっすよー!」と喜ぶパタヘネ。
「時間がかかったが、これで薬草を採取しに行けるな!がんばってくれ!」とフジカルが褒める。実際にパタヘネが現地に行くことになったら、こっそりとバレないようについていこうと密かに思うフジカルであった。
一緒にパタヘネのジャンプ成功を喜びつつ、エリカは、
「私もジャンプしてみますね!」
と言って、同じ環境にチャレンジした。彼女も一緒にトレーニングを続けていたのだ。
ぴょーん、と、エリカも飛び越えることができていた。
「私も跳べました!!!!褒めてください!!!」
とエリカはフジカルに喜びを伝える。
「エリカも3ヶ月一緒に頑張ったな!えらい!」
「何かご褒美とかないんですかぁー?甘いものとか好きです!」とエリカが甘える。
「じゃあ、今度、1 RMを推定しようか!自分の限界を把握しやすくなるぞ!そして、甘くはないが、限界に近づいた時に口の中でいつもとはちょっと違った味わいを感じることができるときもある!」
エリカは何を言われているのか、少し理解できずにポカンとしていたが、きっと、それはトレーニングに関する何かに違いないと思った。
======
ウンチク
======
今回は、遠くへジャンプするというテーマでした。走ってからのジャンプでは、重心は放物線を描きます。ジャンプ中に手や足を動かして重心の位置が変化したとしても、重心そのものは放物線に沿って移動します。
そのため、遠くへジャンプする能力を高めるには、走る速度とジャンプの高さが距離に大きな影響を与えます。
このエピソードでは、RFD(Rate of Force Development)に着目しつつ、走る速度とジャンプする高さを向上させるトレーニングについて紹介しています。RFDに着目したトレーニングは、様々なスポーツで活用可能なので、ぜひチャレンジしてみてください。RFDは、高齢者の日常生活を送る能力とも関連があるという研究[Tsuji2011]もあり、スポーツ関係者だけではなく、すべての人にとって有益となり得る概念ではないかと筆者は考えています。この論文では、要介護等の認定を受けていない一般高齢者を対象として調査し、転倒経験者のRFDは非転倒経験者よりも有意に低いとしています。
実際のトレーニングでは、トレーニングを行う対象に応じて、少しずつトレーニング内容を工夫しても良い場合もあると思いますが、今回は基本的でシンプルな内容を中心にしています。どのトレーニングを行うとしても、最大筋力を向上させることと、RFDを向上させること、というポイントは大きく変わりません。ただし、トレーニングの種類によって、身体に入力される刺激と負荷が変わるので、それぞれの状況に応じて使い分けることや、どのトレーニングが自分にとって適切であるのかを分析することは大事です。
ジャンプを向上させるトレーニング、走る速度を向上させるトレーニングには、それぞれ様々なものがあるので、今後、今回紹介したトレーニングとは別の手法も紹介していきたいと思います。今回は紹介していませんが、走る方法やジャンプする方法そのものに関する練習も別途追加するのも効果的だと思います。
今回は、週2回程度のトレーニングを続けて変化が出るまで3ヶ月としていますが、この期間に関しては、多分これぐらいだろうといった感覚で書いているので、個人差があると思います。
======
参考文献
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[Tsuji2011]
辻大士, 三ッ石泰大, 角田憲治, 尹智暎, 北濃成樹, 尹之恩, & 大藏倫博. (2011). 地域在住高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力と身体機能, 転倒経験, 転倒不安, 起居移動動作能力との関連性. 体力科学, 60(4), 387-399.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/60/4/60_4_387/_article/-char/ja/
トレーニングを続けるだけではなく、IMTP(Isometric Mid-Thigh Pull)によるRFDの測定も定期的に行い、最大筋力やRFDを確認しつつ現状把握が行われていた。
トレーニングを続けていくうちにパタヘネの能力が向上し、より高い負荷にチャレンジできるようにもなっていった。フジカルは、状況を観察しつつ、ケトルベルスイングで利用するケトルベルの重量を増やしたり、デッドリフトで利用するウェイトを重くしたりといった調整も行った。
3ヶ月を超え、パタヘネがジャンプできる距離が伸びてきたことを確認したフジカルは、冒険者ギルドの地下訓練場に、本来ジャンプで飛び越えるべき環境と同じような地形を作り出していた。
「そろそろ、ジャンプできる距離も増えてきたから、本番に近い環境でのジャンプにチャレンジしようか!」
とフジカルがパタヘネに伝えた。
実際にジャンプで目標とする障害を超えられるのかどうか、現地に行かなくても良いように、フジカルは測定と環境再現の準備を行っていたのだ。少し上り坂になりつつ、飛び越えるべき川と同じだけの距離がわかるように地面に線が引いてある。
「よーーーし。いくっすよー」とパタヘネは言ってから、仮想的な崖に向かってダッシュしてジャンプした。
そして、ぴょーん、と、妙にあっさりと目標とした距離を超えてしまった。そして、その距離は、本来ジャンプで超えるべき距離よりも少し余裕があった。
「やったっすよー!」と喜ぶパタヘネ。
「時間がかかったが、これで薬草を採取しに行けるな!がんばってくれ!」とフジカルが褒める。実際にパタヘネが現地に行くことになったら、こっそりとバレないようについていこうと密かに思うフジカルであった。
一緒にパタヘネのジャンプ成功を喜びつつ、エリカは、
「私もジャンプしてみますね!」
と言って、同じ環境にチャレンジした。彼女も一緒にトレーニングを続けていたのだ。
ぴょーん、と、エリカも飛び越えることができていた。
「私も跳べました!!!!褒めてください!!!」
とエリカはフジカルに喜びを伝える。
「エリカも3ヶ月一緒に頑張ったな!えらい!」
「何かご褒美とかないんですかぁー?甘いものとか好きです!」とエリカが甘える。
「じゃあ、今度、1 RMを推定しようか!自分の限界を把握しやすくなるぞ!そして、甘くはないが、限界に近づいた時に口の中でいつもとはちょっと違った味わいを感じることができるときもある!」
エリカは何を言われているのか、少し理解できずにポカンとしていたが、きっと、それはトレーニングに関する何かに違いないと思った。
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ウンチク
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今回は、遠くへジャンプするというテーマでした。走ってからのジャンプでは、重心は放物線を描きます。ジャンプ中に手や足を動かして重心の位置が変化したとしても、重心そのものは放物線に沿って移動します。
そのため、遠くへジャンプする能力を高めるには、走る速度とジャンプの高さが距離に大きな影響を与えます。
このエピソードでは、RFD(Rate of Force Development)に着目しつつ、走る速度とジャンプする高さを向上させるトレーニングについて紹介しています。RFDに着目したトレーニングは、様々なスポーツで活用可能なので、ぜひチャレンジしてみてください。RFDは、高齢者の日常生活を送る能力とも関連があるという研究[Tsuji2011]もあり、スポーツ関係者だけではなく、すべての人にとって有益となり得る概念ではないかと筆者は考えています。この論文では、要介護等の認定を受けていない一般高齢者を対象として調査し、転倒経験者のRFDは非転倒経験者よりも有意に低いとしています。
実際のトレーニングでは、トレーニングを行う対象に応じて、少しずつトレーニング内容を工夫しても良い場合もあると思いますが、今回は基本的でシンプルな内容を中心にしています。どのトレーニングを行うとしても、最大筋力を向上させることと、RFDを向上させること、というポイントは大きく変わりません。ただし、トレーニングの種類によって、身体に入力される刺激と負荷が変わるので、それぞれの状況に応じて使い分けることや、どのトレーニングが自分にとって適切であるのかを分析することは大事です。
ジャンプを向上させるトレーニング、走る速度を向上させるトレーニングには、それぞれ様々なものがあるので、今後、今回紹介したトレーニングとは別の手法も紹介していきたいと思います。今回は紹介していませんが、走る方法やジャンプする方法そのものに関する練習も別途追加するのも効果的だと思います。
今回は、週2回程度のトレーニングを続けて変化が出るまで3ヶ月としていますが、この期間に関しては、多分これぐらいだろうといった感覚で書いているので、個人差があると思います。
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参考文献
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[Tsuji2011]
辻大士, 三ッ石泰大, 角田憲治, 尹智暎, 北濃成樹, 尹之恩, & 大藏倫博. (2011). 地域在住高齢者を対象とした椅子立ち上がり動作時の地面反力と身体機能, 転倒経験, 転倒不安, 起居移動動作能力との関連性. 体力科学, 60(4), 387-399.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/60/4/60_4_387/_article/-char/ja/
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