上 下
43 / 51
遠くへジャンプ!新人冒険者の薬草採取

CMJ(Countermovement Jump)

しおりを挟む
「さて、次は、カウンタームーブメントジャンプだ!CMJと略されることが多いぞ」

CMJは、速く走ったり、高く跳ぶといった目的を達成するために行われる代表的なトレーニングのひとつだ。

「まずは、シンプルなところから始めるぞ。カウンタームーブメントジャンプ、CMJと言われているエキササイズだ!」

「今回は両手を腰に手をあてた状態で腕で勢いをつけずにジャンプするぞ!」
「速い反動をつけた、その場でのジャンプをするトレーニングだ!」
「やることは、非常にシンプルで、両手を腰にあてて真っ直ぐ立った状態から、瞬間的に腰を落として、すぐに垂直にジャンプしよう!」

CMJは、非常に多くの研究で採用されているエキササイズであると同時に、効果的なトレーニングでもある。
そして、最初に取り組むためには適切な負荷である場合も多いという点も良い。徐々に負荷や難易度を上げていけば良いのであって、最初はシンプルでも良い場合が多いのだ。

「まずは、3回ぐらいCMJのやり方を確認するために何度かやってみよう」

そう言われて、パタヘネとエリカは、その場でジャンプを繰り返す。

何度か繰り返しているときに、パタヘネが疑問を持って質問をする。

「これ、すごく簡単なんっすけど、本当に、こんなんでジャンプできるようになるんっすか?」

「CMJは、シンプルだが効果的なトレーニングだぞ!2007年の論文[Markovic2007]では、複数の論文を調査した結果として、CMJによって垂直飛びの能力が上昇するとしている。コツコツと適切に続けることができれば、ジャンプ力は上がるはずだ!」

パタヘネのような疑問を持つ人は多い。難しくてやりにくいトレーニングであったり、疲労困憊になるようなトレーニングだけがトレーニングではない。しかし、シンプルであればあるほど、飽きてしまって続けにくいという問題はあるかも知れない。シンプルな内容をコツコツと続けることそのものが、隠れたハードルなのかも知れない。

ちょうど良い感じの質問が出たこともあり、フジカルはCMJを行うときの要素を追加することにした。

「次は、目標の高さまで頭が到達することを目指してみよう!」

そう言ってからマミを呼んだ。

「マミーーー、軽いボールになって、これぐらいの高さで浮かんでいてくれ!」

フジカルが指定した高さは、パタヘネが現在ジャンプできるギリギリの高さよりも少し高いぐらいのところだった。

「パタヘネ、ここに浮いているボールに頭がつくぐらいジャンプしてくれ!」

とフジカルが呼んだが、次の瞬間、何かを思い出したようで、

「あ、そうだ、ちょっとした注意点があるんだった。マミ、ちょっと来て」

と言ってからマミに何やら耳打ちした。

ひそひそ話を聞いたあとに、「拝承なのですー」とマミは答え、また、指定の高さにふわふわと浮いた。

ボールに変身して浮いているマミに届くように頑張ってジャンプを繰り返すパタヘネを観察しつつ、フジカルは隣にいたエリカに小さな声で解説した。

「いま、やっているのはエクスターナルフォーカス、または、外部意識と呼ばれる方法で、外部にある何かに注意を向けさせるというものだ」
「浮いているボールまで届こうという外部フォーカスだ」
「エクスターナルフォーカスの逆はインターナルフォーカス、または内部意識で、自分の身体の動きなど内部的な部分に注目するという方法だ」

「2009年の論文[Wulf2009]では、エクスターナルフォーカスを与えられると、より高くジャンプできるようになったと述べている。その論文では、エクスターナルフォーカスによって効果的なジャンプの動作が促進されたと結論付けている。ジャンプのトレーニングでエクスターナルフォーカスは有用である可能性が高いと言えそうだ」

「あと、このトレーニングには、もうひとつ大事なポイントがあって、思いっきり本気になってジャンプするという点だ。そろそろ、次の仕掛けが発動するぞ」

すると、マミがパタヘネを罵倒した。

「やーい、やーい、ぜんぜん飛べてないでやんの!ダサぁ(笑」

すると、次の瞬間、パタヘネがムキになってジャンプし、ヘディングをするような形でボールになったマミを吹っ飛ばした。
パタヘネにヘディングで吹っ飛ばされたマミは、かつてフジカルにぶん投げられた時の事を思い出しながら飛んでいった。

「こんな感じで、ちょっとした声かけ、キューイングでトレーニングが変わるんだ」

フジカルが、そうエリカに解説した。

さらに、もう少し、マミを頭でふっ飛ばそうとするようなCMJを数度繰り返したのちに、フジカルが2人に声をかけた。

「よーし。いい感じでCMJができたかな。次は、軽めのプライオメトリクス的なトレーニングをしようか!」


======
参考文献
======

[Markovic2007]
Markovic, G., & Newton, R. U. (2007). Does plyometric training improve vertical jump height? A meta-analytical review * Commentary. In British Journal of Sports Medicine (Vol. 41, Issue 6, pp. 349–355). BMJ. https://doi.org/10.1136/bjsm.2007.035113 

[Wulf2009]
Wulf, G., & Dufek, J. S. (2009). Increased jump height with an external focus due to enhanced lower extremity joint kinetics. Journal of motor behavior, 41(5), 401-409.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...