異世界でスポーツ科学の達人〜パフォーマンス向上と怪我予防の冒険者ギルド日記

あさあき

文字の大きさ
上 下
26 / 51
ぎっくり腰のドワーフ鍛治師

プロローグ:片刃包丁が欲しい!

しおりを挟む
重たいものを持ち上げるときに腰を痛める。さまざまな場所で耳にする話だ。
そして、腰を痛めないようにするための正しい姿勢が紹介されることがある。

しかし、床にべったり置かれている重たい物体を、いわゆる"正しい姿勢"と言われがちな方法で持ち上げるというのは、人によっては容易ではないことは、意外と知られていない。
人の身体は、個々人によって違っており、その個別性に応じて容易であることと困難であることが違うのだ。

---
「のおおおおおおおおおーーーー!」フジカルが涙を滝のように流しながら叫んでいる。
白衣に白い帽子、片手に包丁を持っている。

「どうしたんですか?」とギルド受付嬢エリカが聞く。

「海鮮丼が食べたかったんだよ。海鮮丼!」
「米は田んぼを作って確保したから、次は魚で、海で釣ってきたわけ」
「いい感じの魚が釣れたから、刺身を作ろうとしたらここには両刃の包丁しかない!!!」
「両刃だけじゃダメなんだよ。魚を捌くには片刃の包丁も必要なんだよ!」
「魚の骨に沿って3枚におろすときとか、皮を剥ぐときとか、薄く切るには片刃の包丁なんだよ!」
「出刃包丁と刺身包丁が欲しいいいいいいいぃぃぃぃ!」

何を言っているのか全く理解できないと思いながら、料理用の刃物が欲しいと主張しているように思えたエリカは提案した。

「ギルドの中に鍛治部門があるので、そこで刃物を注文してみてはいかがでしょうか?

「おーけー、おーけー、それは素晴らしいぃぃぃぃぃ。レッツゴー!」

---

エリカに連れられたフジカルは冒険者ギルドの鍛治部門に行く。
立派なあごひげのドワーフが椅子に座っている。
隣に、少し若そうなドワーフもいる。
座ってるのが鍛治部門長のギエルハルドだ。

「フジカルさんが料理に使う刃物について相談があるみたいなのですが。」

エリカが言うと、ギエルハルドは辛そうな顔をしながら、

「いまは無理。さっき、腰をやっちまった。ヒーラーを呼んでもらってるから、ちょっと待って」

「師匠、最近、腰をやっちゃうのおおいっすよねーーー」
「その度にヒーラー呼んで仕事がとまっちまうの、マジうけるんっすけど(笑」

どうも、ぎっくり腰を繰り返しているらしい。

「どういう状況で腰をやってしまったのか教えてもらいないか?」

「そこにおおきなインゴットがあるだろ。それを持ち上げようとしたらピキッときちまった」

そんな話をしていると出張ヒーラーが到着し、腰にヒールの魔法をかけて帰っていく。
腰の痛みが取れたギエルハルドの表情から険しさが消える。

この世界は、痛めてもヒーラーに治してもらえば良いので、怪我の長期療養やリハビリという概念が薄い。
怪我をした後のリスクが低くなっているため、結果として、同じような怪我を繰り返しては魔法で回復させているのかも知れない。
ただ、もし怪我を避けられるのであれば避けた方が良い。

フジカルが片刃包丁を無事に手に入れるためにも、鍛治師であるギエルハルドの腰も無事であって欲しい。
鍛治師が腰を痛めている時間が長いと、それだけ片刃包丁の完成も遅くなってしまう恐れがあるのだ。

「腰を痛めた持ち上げ方を見せてもらえないか?実際に持ち上げなくてもいいけど、どういう方法なのか見せて欲しい。」

フジカルが聞く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恥ずかしい 変身ヒロインになりました、なぜならゼンタイを着ただけのようにしか見えないから!

ジャン・幸田
ファンタジー
ヒーローは、 憧れ かもしれない しかし実際になったのは恥ずかしい格好であった! もしかすると 悪役にしか見えない? 私、越智美佳はゼットダンのメンバーに適性があるという理由で選ばれてしまった。でも、恰好といえばゼンタイ(全身タイツ)を着ているだけにしかみえないわ! 友人の長谷部恵に言わせると「ボディラインが露わだしいやらしいわ! それにゼンタイってボディスーツだけど下着よね。法律違反ではないの?」 そんなこと言われるから誰にも言えないわ! でも、街にいれば出動要請があれば変身しなくてはならないわ! 恥ずかしい!

セイントガールズ・オルタナティブ

早見羽流
ファンタジー
西暦2222年。魔王の操る魔物の侵略を受ける日本には、魔物に対抗する魔導士を育成する『魔導高専』という学校がいくつも存在していた。 魔力に恵まれない家系ながら、突然変異的に優れた魔力を持つ一匹狼の少女、井川佐紀(いかわさき)はその中で唯一の女子校『征華女子魔導高専』に入学する。姉妹(スール)制を導入し、姉妹の関係を重んじる征華女子で、佐紀に目をつけたのは3年生のアンナ=カトリーン・フェルトマイアー、異世界出身で勇者の血を引くという変わった先輩だった。 征華の寮で仲間たちや先輩達と過ごすうちに、佐紀の心に少しづつ変化が現れる。でもそれはアンナも同じで……? 終末感漂う世界で、少女たちが戦いながら成長していく物語。 素敵な表紙イラストは、つむりまい様(Twitter→@my_my_tsumuri)より

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...