青春18きっぷを握りしめて

painy rain

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そうだ、尾道にラーメンを食べに行こう

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初めてのローカル電車の旅は鉄道の日の切符だった。1998年ころのことだったかな。昔過ぎてよく覚えていない。
2700円ほどで乗り放題と聞き、ふと尾道ラーメンが食べたいと思った。
朝、新大阪から7時30分くらいの電車ににる。平日の通勤時間帯はよく混んでいて何とか座る席を確保するとそこから姫路まで行くこととした。窓の外の景色は見慣れない町並みが続いており、姫路には20年近くいっておらず電車から眺める町並みはずいぶん変わったなと印象を受けた。
その後、相生行きに乗り換え、相生から岡山行へと乗り換える。岡山でトイレ休憩をしたのち10分ほど次の電車を待つ。そして岩国行にのり尾道へ向かった。
どこのラーメン店にいくなど目的はなくとりあえず町の中をうろついてみることにした。駅舎をでるとまっさきに目に飛び込んできたのは、穏やかな海面のきらめきである。
海につられてローターリーを突っ切り船着き場まで駆け寄る。穏やかな波が揺れ、太陽の光を反射している。瀬戸内海は波が穏やかで、また潮お香りもあまりきつくない。
しばらく海を眺めていたが、目的は尾道ラーメンを食べることというのを思い出し、尾道駅前の商店街をぶらついてみることとした。
果物屋さんや雑貨屋さんが並んでおり、観光地というイメージはない。うろうろしてみたが思うようなラーメン店は見つからず駅前に戻ってくると、駅のローターリーを渡ったところと、駅の左のミスタードーナッツの隣にラーメン店はあった。
こんな近場にあったのかと少し照れながら、両方の店を行ったり来たりして、結果、ミスタードーナッツの隣のラーメン店に入ることにした。
券売機でチケットを買い、カウンターに腰掛ける。正直ドキドキする。店主に促されるままチケットを渡す。店主「醤油一丁、背脂はお好みで入れてください」と言われ
その時初めて、尾道ラーメンは魚介ラーメンで背脂を入れて食べるのだと知った。何も知らずネーミングだけで食べてみたいと思っていたが、背脂が苦手な私にとって、この店を選んだのは大当たりであった。出てきたラーメンは香り高くさっぱりした中にうまみのあるスープ、おいしくてあっという間に食べきってしまった。替え玉をしようか迷ったが、他の人が注文している餃子が気になり、餃子を注文する。肉汁がたっぷりの餃子に満足し、帰りの時間を調べると、新大阪までの経路19時10分くらいの電車が最終となる。
時計は19時前。あぶなかった。大阪に帰れなくなるところであった。
ごちそうさまをし、尾道のホームで缶コーヒーを飲みながら帰りの電車を待つことにした。
帰りは、もう暗くなっているため車窓からの楽しみは夜景を見ながらぼんやりとした時間を過ごすことだった。瀬戸大橋を超え、明石大橋を超え、大阪に近づくにつけビルが増えてくる。窓からの景色もビルや人が増えていく。ああ、帰ってきたなぁとおもつつ新大阪につくと11時過ぎであった。最終電車ぎりぎりで家に帰ることができたが、とても楽しい一日なった。
知らない街にラーメンだけを食べに行く、旅行ではなく、観光目的でもなく、ただ知らない街でラーメンを食べるだけの贅沢。交通費、ラーメン代、缶コーヒー合わせると5000円弱のラーメンとなるのだが、その贅沢感が私の今の旅のスタイルとなった。この旅から私はローカル電車で日本中を旅することが楽しくてしかたがなくなるのだ。

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