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あなたに殉じる
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途中、馬に乗せられて連れて来られたのはよくわからない森の中で、そばには川。滝が轟々と流れていて、その上に私はいる。
小さな崖のような場所。どこかあの場所を思い出す。こんな森の中にあるはずがない、私の死に場所。
私たちの少し後に馬車が来た。おそらく近くで見張っていたのだと思う。
馬車から降りてきたマリエラ様だった。
別段驚かない。マリエラ様が彼に恋をしていることには気付いていたから。
「やっと来たのね」
あどけなさを残した女性はふう、と呆れたとでも言うようにため息をつく。
一体今からどうなるんだろう。考えてみたところで、答えは決まってる気がする。
おそらく、死を望まれるのだろう。
彼女にとって私は気に食わない人間。それを殺すことなんて特別階級の人にとったら当たり前のこと。
何度目かの私だってしたことがある。変なことじゃない。そう、当たり前のこと。
「なんだか偉そうね。跪きなさい」
「……はい」
彼女の前に膝を土につけて素直に跪く。
屈辱だとは思わない。彼以外の誰かになにかを思わない。私の中心はすべて彼だから。
「たかが平民が、一国の王子と婚姻だなんて……。どんな真似をしたの?」
「なにもしておりません」
彼女は素直に感心しているようだった。
それだけ彼と平民の私が婚姻だなんて意外だったのだろう。
私が知っているのは、私の前でいる彼だけ。優しくて、残酷で、愛しい彼。
そう考えると、私は彼のことをほとんどなにも知らない。今世の彼はこの国にとってどんな人間だったのか。
彼は優しげで、よく微笑んでいる。けれど時折苦しそうな顔を見せることを私は知っている。彼はいつもどこか前の彼らを思い出すような人だ。
マリエラ様の前で彼はどんな彼だったのだろう。知りたいとは思わないけど。
「サーフィル様はあなたなんかと一緒にいちゃいけないのよ」
そう私を諭すように彼女はゆっくりと話し出す。だけど瞳の奥の狂気が隠せていない。
ぞくりと背筋が凍る。
まるで、昔の私を見ているようだった。
何度目かの私は狂気に染められて、彼を手に入れるためならなんでもした。彼に近付く女には容赦なく死をもたらした。最期は彼の前で私が殺した女の兄に刺されて死んだ。
確信する。私はきっと殺される。
一度目のとき以外はいつも死の間際は彼がいた。まるで彼に死という醜い最期を見られるのが運命だとでもいうように。
私が海に身を投げたとき、彼はその場にいなかった。
今回も、彼はいない。
だけどそれはよかったのかもしれない。少なくとも私はよかった。
もう死の間際なんて彼には見られたくない。私なんて忘れてしまえば、彼は絶対に幸せになれるから。
「彼はこの国にいなくちゃならないかたなの。力をつけて、この国の王となる。決して平民と結婚していいような人じゃないのよ」
マリエラ様は夢見る少女のようにうっとりとしながら、どこか遠いところを見る。
「サーフィル様は優秀なのに、正室の子じゃないからと言って継承権が低いの。そんなのおかしいでしょう? だって彼はとても優秀なの。彼のおかげでこの国は大国と言われるまで発展したのよ。サーフィル様には王となる素質がある。私には彼を王とする力がある。あなたにそんな力があって? たかが平民が、彼のためになにができるの?」
耳を塞ぎたい。けれど、そんなことをしても彼女を逆上させるだけ。
それにしても、知らなかった。ううん、昔の彼は知ってる。
いつだって彼は才能に溢れてた。それが今世でもそうだったということ。
私が王女だったときはあっても、彼が王子だったときはない。 彼が私よりも上の身分になったのは今世が初めてだ。
今世で彼が私よりも上の身分になって、彼の記憶が最初からあることはなにか意味があるのだろうか。
考えても仕方ないこと。仕方ないことなのに、どうしてか気になってしまう。
「答えなさいよ」
全く関係のないことを考えていると、上から鋭い声が降ってくる。
すっと息を吸って、私はその目を真正面から受けた。
「なにも、言うことはありません」
「……」
「マリエラ様のおっしゃる通りです」
それ以外言うことはない。その通りだと思うから。私から言えることは何もない。
今の私はただの平民で、彼のためになにか後ろ盾になるものなんてない。彼のためになれる力なんてない。
昔とは違う。
前世では一国の姫だったことがある。彼はその国の一貴族。婚約者のいる彼を、私は自分のモノにした。
そして彼を子爵という立場から侯爵という立場まで押し上げた。でも、それは私が王女で、父から溺愛されていたからできたこと。
今の私には本当になにもない。
「よくわかってるじゃない」
「……」
息が苦しい。
「サーフィル様は本当に素敵よ。私が彼の妻になれば、サーフィル様を王にすることができる。サーフィル様に足りないのは後ろ盾だもの。それも私が彼の妻となれば解決する。彼がしたことを知っている? 彼はこの国と私の国を繋いだばかりか、亜人の国との国交も開いたの」
亜人の国……。そういえば私たちも亜人になったことがある。それも貴族だった。彼はその時の記憶があるから、その記憶を使ったのだろう。
亜人の国は昔ながらのところがある閉鎖的なところだったから。
彼は、すごい。それに比べて、本当に私にはなにもない。
なにかあったら変わるのだろうか。私たちが対等になれることはあるのだろうか。
いつだって私は復讐される側。
「だから、彼にあなたは相応しくない」
涙が零れそうになる。
彼に私が相応しくないなんて、最初から知っていたことだ。卑怯者の私に彼は相応しくない。
知ってた。知ってたはずなのに、この胸を刺す痛みはなんだろう。
「──それで、マリエラ様は私を殺すのですね」
「ええ、そうよ。わかってるじゃない」
マリエラ様の横にいた騎士が剣の先を私の首へと押し当てる。痛い。けど、その痛みすらもはやどうでもいい。
「では、最後に一つだけお許してください」
「ええ、いいわ。許してあげる」
俯き加減だった顔を上げて彼女と目を合わせる。狂気に濡れた瞳の奥の理性。
彼女の瞳の中の私は笑ってた。
「彼にふさわしい人なんていません」
「はぁ?」
これは彼に届くことのない遺言だ。
「彼は、サーフィル様は鳥なのです。私はサーフィル様のしたいように自由に生きてほしい。もう誰にも縛られずに自由に。復讐なんて終わりにして、私という存在を忘れて、幸せだけを求めてほしい。
私はサーフィル様を愛してる。だから、サーフィル様を信じられない。
私なんかを愛していると言うサーフィル様を信じられない。
マリエラ様、どうかお願いです。私が死んだあと、サーフィル様に選ばれてくださいませ。サーフィル様が選んだかたが、サーフィル様に一番ふさわしい」
私は微笑む。マリエラ様は怒り心頭、というな顔。それはそうだろう。彼女にとってたかが平民に屈辱的な願いをされたのだから。
「殺してッ!」
マリエラ様のその声に騎士が剣を振り上げる。
手を胸の前で組み、ゆっくりと目を閉じてその時が来るのを待った。
「マリア!」
あれ、と思った瞬間に温もりを感じて、目を開けるとそこには愛しい人の顔。
「っ、あ、あぁっ! いやあぁぁぁあああっ!」
悲鳴が、聞こえる。
「さー、ふぃる、さま?」
「今度は一緒に死のうか」
彼は私の頬を大きな手のひらで包みながら、そう言って微笑む。
待って、おかしい。
だって、私の前に立っていた騎士は剣を振り下ろした。彼の身体越しに見える騎士の持つ剣の刃からは確かに血がしたって、地面へと落ちている。
私に痛みなんてないのに。
──あ、あぁ、あぁっ! ちがう! こんなはずじゃなかった! こんなの、
私は望んでないッ!
「っ、いや、いやっ! 死ぬのは、私で、」
「だめだ」
すぐ後ろは崖だった。
どうせ死ぬのだろうと思っていたから、そんなことどうでもいいと思ってた。
でも、どうして? 彼が死ぬことを望んでない。
彼に生きて、幸せになって。そう。こんなはずじゃなかった。彼を道連れにするために、私はマリエラ様に着いて来たわけじゃない。ただ、私だけが死ぬために。彼を幸せにするために。
「あぁ……」
彼が私ごと崖へと落ちていく。真っ青な空が見えたのは一瞬で、すぐに肌を刺すような水が私たちを飲み込んでいく。
ギュッと彼と離れないように。お互いがお互いを掴んで離さない。
これが最期。
あっけない幕締め。
あいしてる。
そう紡ごうとしたけど、水の中。ただ気泡だけが零れた。
小さな崖のような場所。どこかあの場所を思い出す。こんな森の中にあるはずがない、私の死に場所。
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おそらく、死を望まれるのだろう。
彼女にとって私は気に食わない人間。それを殺すことなんて特別階級の人にとったら当たり前のこと。
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屈辱だとは思わない。彼以外の誰かになにかを思わない。私の中心はすべて彼だから。
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私が知っているのは、私の前でいる彼だけ。優しくて、残酷で、愛しい彼。
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彼は優しげで、よく微笑んでいる。けれど時折苦しそうな顔を見せることを私は知っている。彼はいつもどこか前の彼らを思い出すような人だ。
マリエラ様の前で彼はどんな彼だったのだろう。知りたいとは思わないけど。
「サーフィル様はあなたなんかと一緒にいちゃいけないのよ」
そう私を諭すように彼女はゆっくりと話し出す。だけど瞳の奥の狂気が隠せていない。
ぞくりと背筋が凍る。
まるで、昔の私を見ているようだった。
何度目かの私は狂気に染められて、彼を手に入れるためならなんでもした。彼に近付く女には容赦なく死をもたらした。最期は彼の前で私が殺した女の兄に刺されて死んだ。
確信する。私はきっと殺される。
一度目のとき以外はいつも死の間際は彼がいた。まるで彼に死という醜い最期を見られるのが運命だとでもいうように。
私が海に身を投げたとき、彼はその場にいなかった。
今回も、彼はいない。
だけどそれはよかったのかもしれない。少なくとも私はよかった。
もう死の間際なんて彼には見られたくない。私なんて忘れてしまえば、彼は絶対に幸せになれるから。
「彼はこの国にいなくちゃならないかたなの。力をつけて、この国の王となる。決して平民と結婚していいような人じゃないのよ」
マリエラ様は夢見る少女のようにうっとりとしながら、どこか遠いところを見る。
「サーフィル様は優秀なのに、正室の子じゃないからと言って継承権が低いの。そんなのおかしいでしょう? だって彼はとても優秀なの。彼のおかげでこの国は大国と言われるまで発展したのよ。サーフィル様には王となる素質がある。私には彼を王とする力がある。あなたにそんな力があって? たかが平民が、彼のためになにができるの?」
耳を塞ぎたい。けれど、そんなことをしても彼女を逆上させるだけ。
それにしても、知らなかった。ううん、昔の彼は知ってる。
いつだって彼は才能に溢れてた。それが今世でもそうだったということ。
私が王女だったときはあっても、彼が王子だったときはない。 彼が私よりも上の身分になったのは今世が初めてだ。
今世で彼が私よりも上の身分になって、彼の記憶が最初からあることはなにか意味があるのだろうか。
考えても仕方ないこと。仕方ないことなのに、どうしてか気になってしまう。
「答えなさいよ」
全く関係のないことを考えていると、上から鋭い声が降ってくる。
すっと息を吸って、私はその目を真正面から受けた。
「なにも、言うことはありません」
「……」
「マリエラ様のおっしゃる通りです」
それ以外言うことはない。その通りだと思うから。私から言えることは何もない。
今の私はただの平民で、彼のためになにか後ろ盾になるものなんてない。彼のためになれる力なんてない。
昔とは違う。
前世では一国の姫だったことがある。彼はその国の一貴族。婚約者のいる彼を、私は自分のモノにした。
そして彼を子爵という立場から侯爵という立場まで押し上げた。でも、それは私が王女で、父から溺愛されていたからできたこと。
今の私には本当になにもない。
「よくわかってるじゃない」
「……」
息が苦しい。
「サーフィル様は本当に素敵よ。私が彼の妻になれば、サーフィル様を王にすることができる。サーフィル様に足りないのは後ろ盾だもの。それも私が彼の妻となれば解決する。彼がしたことを知っている? 彼はこの国と私の国を繋いだばかりか、亜人の国との国交も開いたの」
亜人の国……。そういえば私たちも亜人になったことがある。それも貴族だった。彼はその時の記憶があるから、その記憶を使ったのだろう。
亜人の国は昔ながらのところがある閉鎖的なところだったから。
彼は、すごい。それに比べて、本当に私にはなにもない。
なにかあったら変わるのだろうか。私たちが対等になれることはあるのだろうか。
いつだって私は復讐される側。
「だから、彼にあなたは相応しくない」
涙が零れそうになる。
彼に私が相応しくないなんて、最初から知っていたことだ。卑怯者の私に彼は相応しくない。
知ってた。知ってたはずなのに、この胸を刺す痛みはなんだろう。
「──それで、マリエラ様は私を殺すのですね」
「ええ、そうよ。わかってるじゃない」
マリエラ様の横にいた騎士が剣の先を私の首へと押し当てる。痛い。けど、その痛みすらもはやどうでもいい。
「では、最後に一つだけお許してください」
「ええ、いいわ。許してあげる」
俯き加減だった顔を上げて彼女と目を合わせる。狂気に濡れた瞳の奥の理性。
彼女の瞳の中の私は笑ってた。
「彼にふさわしい人なんていません」
「はぁ?」
これは彼に届くことのない遺言だ。
「彼は、サーフィル様は鳥なのです。私はサーフィル様のしたいように自由に生きてほしい。もう誰にも縛られずに自由に。復讐なんて終わりにして、私という存在を忘れて、幸せだけを求めてほしい。
私はサーフィル様を愛してる。だから、サーフィル様を信じられない。
私なんかを愛していると言うサーフィル様を信じられない。
マリエラ様、どうかお願いです。私が死んだあと、サーフィル様に選ばれてくださいませ。サーフィル様が選んだかたが、サーフィル様に一番ふさわしい」
私は微笑む。マリエラ様は怒り心頭、というな顔。それはそうだろう。彼女にとってたかが平民に屈辱的な願いをされたのだから。
「殺してッ!」
マリエラ様のその声に騎士が剣を振り上げる。
手を胸の前で組み、ゆっくりと目を閉じてその時が来るのを待った。
「マリア!」
あれ、と思った瞬間に温もりを感じて、目を開けるとそこには愛しい人の顔。
「っ、あ、あぁっ! いやあぁぁぁあああっ!」
悲鳴が、聞こえる。
「さー、ふぃる、さま?」
「今度は一緒に死のうか」
彼は私の頬を大きな手のひらで包みながら、そう言って微笑む。
待って、おかしい。
だって、私の前に立っていた騎士は剣を振り下ろした。彼の身体越しに見える騎士の持つ剣の刃からは確かに血がしたって、地面へと落ちている。
私に痛みなんてないのに。
──あ、あぁ、あぁっ! ちがう! こんなはずじゃなかった! こんなの、
私は望んでないッ!
「っ、いや、いやっ! 死ぬのは、私で、」
「だめだ」
すぐ後ろは崖だった。
どうせ死ぬのだろうと思っていたから、そんなことどうでもいいと思ってた。
でも、どうして? 彼が死ぬことを望んでない。
彼に生きて、幸せになって。そう。こんなはずじゃなかった。彼を道連れにするために、私はマリエラ様に着いて来たわけじゃない。ただ、私だけが死ぬために。彼を幸せにするために。
「あぁ……」
彼が私ごと崖へと落ちていく。真っ青な空が見えたのは一瞬で、すぐに肌を刺すような水が私たちを飲み込んでいく。
ギュッと彼と離れないように。お互いがお互いを掴んで離さない。
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