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幸せになりたい
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祭りの二日目の朝、目が覚めると彼が私を抱き締めて眠っていた。
私の身体を締め付ける彼の腕のぬくもりが心地いい。ずっとこの場所にいたいと、そう思ってしまう。
しばらく彼の寝顔を見つめていると、唐突に唇を塞がれた。
驚いて目を見開くと、彼は笑って「おはよう」と耳元で囁いた。
「あっ、起きて、」
「いや、寝てた。マリアの視線が熱くて目が覚めた」
そう言って彼はまた私の唇に口付ける。
キスに抗えない。自分の弱さが浮き彫りになる。
心地よさになにもかも委ねてしまいたい。
彼を、信じられたらいいのに。
そう願うのに、私の心は上手くいかない。彼を疑う気持ちで満ちてる。
それでも、いつか彼のことを信じられたら。
「今日は外に出る日だ。早く支度しよう」
「ええ……」
そんなどうしようもないことを願ってしまう自分を忘れるように、私は微笑んだ。
今世での人混みは初めてだった。今までは農村の外れに住んでいたから、祭りとは無縁だったし、村人たちも隠れるように住む私に声をかけたりはしなかった。
祭りということで王都は凄い賑わいを見せている。久しぶりの人々の熱気に心臓がドクンと音を立てる。
昨日も都の中央から離れた場所にあるはずの屋敷まで人々の興奮が届いていた。
祭り──この国の建国祭は五日間あるらしい。当分は人の熱気も止まないだろう。
人混みに紛れるには都合のいい時期だ。
「マリア、迷子にならないように気をつけて」
「ええ、大丈夫」
騒がしさに飲み込まれないように、彼は少しかがんで耳元でそう囁く。
強く繋がれた手は離れそうにない。迷子になりたくても、これじゃあ逃げられない。
でも、私は絶対にこの手を離さなくちゃいけない。
彼の幸せのために。
──私の幸せのために。
幸せという名前に私は答えを出した。
私は自分が不幸だと嘆いたけれど、そんなことはあり得なかった。
だって、私は彼といれば心が踊る。
彼が私を見ていなくても、彼の心に他の誰かがいようとも、私を視界に入れ、ただ優しく撫でてくれるだけでどうしようもない幸福を感じていた。
いつの私も彼のそばにいられるだけで、ただ幸せだった。彼といることが私の幸せだった。
彼の言葉が偽りにまみれ、私を愛していると嘯いていても、その嘘が私は心の底では嬉しくて、だけど死にたいほど苦しかった。
一度目の無知な私が一番幸せだった。彼の言葉に一喜一憂して、ただ何も知らず彼に恋をする。
何度も繰り返した中で、ただ一つ鮮明に感じる幸せの記憶。
そして絶望に突き落とされたのもここが一番最初。幸せから滑り落ちるように不幸へと落ちていった。悪に染まりきった。それでも、彼の復讐を手伝えることが唯一の救いだった。彼と幸せになれる唯一の手段。
私の幸せも不幸も彼の匙加減。
私を縛り付けるのは彼だけ。
彼といれば私は不幸で、彼がいれば私は幸せ。
彼の存在意義だけが私を幸せにも不幸にもする。
「あ、マリア。金平糖だ」
「こんぺいとう?」
彼が出店の一つを見て、楽しそうに笑う。
こんぺいとうってなんだろう?
そう思って彼を見ると、彼は少し寂しそうな顔をする。だけどそれも一瞬で、彼は優しく微笑んだ。
「覚えてない? 昔、買ってあげたら美味しいと喜んでた」
「買って……ああ、お星さま?」
「ふっ、くくっ、そう。お星さまだ」
あの星のような甘いお菓子。こんぺいとうっていう名前だったのね。
合点がいったように頷くと、何故だか彼は笑いを堪えるように喉を鳴らす。
ちょっと馬鹿にされてるみたいでムッとすると、彼は私の頭を優しく撫でた。
「君がかわいすぎるせいだ」
そう言う彼の目があまりにも優し過ぎて、心が落ち着かない。目を合わせられなくて、視線をこんぺいとうの売り場へと移した。
彼の瞳は慈愛に満ちて、決心が鈍ってしまいそうになる。本当は彼は私を愛してくれてる、なんて勘違いをして、だけどきっといつか信じきれずに私は狂ってしまいそう。
「金平糖、買いに行こうか」
「……でも、砂糖菓子でしょう? 高いんじゃ……」
昔は思いつかなかったけど、あの甘いお菓子は砂糖でできていた。砂糖は贅沢品。塩よりも高い。それぐらいは知ってる。
私の疑問に彼はキョトンと目を丸くして、だけどすぐに可笑しそうにクスクスと笑った。
「そうだけど、出店で出てるんだから比較的誰にでも買える値段だ。それに、お金の心配はしなくていい。君がどんな贅沢をしても養える自信がある」
この人は王子様だったんだった。忘れがちなことをぼんやりとそう思う。
第三王子で、彼が言っていることが本当なら公爵位をもらうことが決まっている人。そんな彼にお金の心配なんて無用なことだった。
それに祭りの出店に出しているということは、確かに平民が買えるような値段のものということ。
自分の考えの足りなさと無知さに恥ずかしくなる。
「買いに行こう、マリア」
「たくさん買ってね」
「ああ。私のお姫様」
まるで彼の恋人になったみたい。
並んでる人たちの後ろに並んで、順番を待つ。その間彼はこの国の建国祭についてやこの国の王族のことなど教えてくれて、話は尽きない。私は相槌を打ってるだけなのに、彼は楽しそうに話す。
今の彼がこんなにも饒舌なのは初めてだ。
いつもはただベッドに沈むだけだから。
……ああ。彼の目的が私の身体ということもあり得るのか。
復讐だけだと思い込んでいたけど、ついでに性処理用の女として使っていた可能性もあるのよね。
彼には遠く及ばないけれど、私も整った顔をしていると思う。自惚れではないと思う。実際、住んでいた村の中では人気のあるほうだった。私に話しかけるのは大抵男だった。それで女性に嫉妬されたっけ。身体も、質素な性格をしてた割には、抱きごたえのある身体をしていると思う。
それに、彼はあまりにも、その、激しくて、本命の女性をあんなふうに抱くのは抵抗があったのかもしれない。
「マリア。二つ買って一つは家で食べようか」
「……あ、ええ。あなたの好きにしていいわ」
「なら、そうしよう」
気が付けばもう列の先頭で、可愛らしい袋に入ったこんぺいとうを二つ持ち上げながら彼は問いかける。
一瞬答えるのが遅れたけど、彼は気にしていないとでもいうように微笑んだ。
ふいに彼の視線が別の場所へと向かう。
なにがあるのかと彼の視線を辿ってみたけど、そこにはただ露店があるだけ。
彼は私の視線に気がつくと、フッと微笑んで「どこかで休憩しよう」と提案した。
噴水の前のベンチに二人で腰掛ける。
こんぺいとうの入った二つの袋。まるで星を集めたような袋。
そのうちの一つを開ける。
まるで変わらない形。色がついたお星さまたち。
「……昔と同じだ」
彼の呟きが耳に入った。
彼が一つ手に取って自分の口の中に放り込む。彼は眉間にしわを寄せた。
ああ、そういえば昔もそうだった。
甘いものが得意じゃない彼は、砂糖でできたこのお菓子を難しそうな顔で食べていた。
「やはり甘過ぎる」
「私は、好きよ」
私もこんぺいとうを口の中に放り込む。
優しい甘さが広がって、舌で転がすと星の先端が口の中を刺激する。だけどそれは痛いわけじゃなくて、甘い刺激。ガリッと砕くと、甘さが強くなる。
美味しい。
思わず笑みが零れる。
「マリアが喜んでくれてよかった」
彼はいつだって優しい。
だから、私は彼を幸せにしたいと思える。
いつだって、いつだって、あなたを愛してる。
「ねえ」
「なんだい、マリア」
「いつも、ありがとう」
いつもあなたは優しかった。いつもあなたは私を優先してくれた。いつも、あなたは私に嘘を捧げてくれた。
繋いだ手をギュッと握り締めて私は微笑む。
心が決まった今なら素直になれる。
私はどうしようもない女だから。何度繰り返しても彼を愛してる。
目が合った彼は目を見開いて、驚いたような顔をして、泣きそうな顔で微笑む。
「私こそ、いつもありがとう」
それだけで今までの私が救われた気がした。いつも、が今までの私たちのことだとわかったから。
何度も繰り返して、今やっと私たちの心は報われた。
そう、ありがとうって言ってもらいたかったの。
私たちの恋心を捨てないでもらいたかった。
あなたを守って死んだ私たちに。あなたへの恋心を持って殉じた私たちに。
もうそれだけで十分だわ。
「マリア、少しここで待っていてくれ。買いたい物がある」
「わかったわ」
おそらく彼は油断していた。
私が逃げるわけがないと、思い込んでいたのだろう。
だから、私を一人にした。
小さく息を吐きながら立ち上がる。逃げるなら今だ。
「マリア様ですね?」
「え……?」
私の前に立ち塞がる二つの影に突然名前を呼ばれて困惑する。
私の名前を知ってる人なんてこの王都には誰もいない。なかば誘拐されるように連れ去られてきた身だ。元いた場所も閉鎖的で、名前を呼ぶ人は限られていた。
それなのに、彼らはどうして──。
「マリエラ様がお呼びです。共に来ていただけますね」
疑問形ですらないそれに抗う術なんてなくて、私はただうつむきながら頷いた。
私の身体を締め付ける彼の腕のぬくもりが心地いい。ずっとこの場所にいたいと、そう思ってしまう。
しばらく彼の寝顔を見つめていると、唐突に唇を塞がれた。
驚いて目を見開くと、彼は笑って「おはよう」と耳元で囁いた。
「あっ、起きて、」
「いや、寝てた。マリアの視線が熱くて目が覚めた」
そう言って彼はまた私の唇に口付ける。
キスに抗えない。自分の弱さが浮き彫りになる。
心地よさになにもかも委ねてしまいたい。
彼を、信じられたらいいのに。
そう願うのに、私の心は上手くいかない。彼を疑う気持ちで満ちてる。
それでも、いつか彼のことを信じられたら。
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「ええ、大丈夫」
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強く繋がれた手は離れそうにない。迷子になりたくても、これじゃあ逃げられない。
でも、私は絶対にこの手を離さなくちゃいけない。
彼の幸せのために。
──私の幸せのために。
幸せという名前に私は答えを出した。
私は自分が不幸だと嘆いたけれど、そんなことはあり得なかった。
だって、私は彼といれば心が踊る。
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一度目の無知な私が一番幸せだった。彼の言葉に一喜一憂して、ただ何も知らず彼に恋をする。
何度も繰り返した中で、ただ一つ鮮明に感じる幸せの記憶。
そして絶望に突き落とされたのもここが一番最初。幸せから滑り落ちるように不幸へと落ちていった。悪に染まりきった。それでも、彼の復讐を手伝えることが唯一の救いだった。彼と幸せになれる唯一の手段。
私の幸せも不幸も彼の匙加減。
私を縛り付けるのは彼だけ。
彼といれば私は不幸で、彼がいれば私は幸せ。
彼の存在意義だけが私を幸せにも不幸にもする。
「あ、マリア。金平糖だ」
「こんぺいとう?」
彼が出店の一つを見て、楽しそうに笑う。
こんぺいとうってなんだろう?
そう思って彼を見ると、彼は少し寂しそうな顔をする。だけどそれも一瞬で、彼は優しく微笑んだ。
「覚えてない? 昔、買ってあげたら美味しいと喜んでた」
「買って……ああ、お星さま?」
「ふっ、くくっ、そう。お星さまだ」
あの星のような甘いお菓子。こんぺいとうっていう名前だったのね。
合点がいったように頷くと、何故だか彼は笑いを堪えるように喉を鳴らす。
ちょっと馬鹿にされてるみたいでムッとすると、彼は私の頭を優しく撫でた。
「君がかわいすぎるせいだ」
そう言う彼の目があまりにも優し過ぎて、心が落ち着かない。目を合わせられなくて、視線をこんぺいとうの売り場へと移した。
彼の瞳は慈愛に満ちて、決心が鈍ってしまいそうになる。本当は彼は私を愛してくれてる、なんて勘違いをして、だけどきっといつか信じきれずに私は狂ってしまいそう。
「金平糖、買いに行こうか」
「……でも、砂糖菓子でしょう? 高いんじゃ……」
昔は思いつかなかったけど、あの甘いお菓子は砂糖でできていた。砂糖は贅沢品。塩よりも高い。それぐらいは知ってる。
私の疑問に彼はキョトンと目を丸くして、だけどすぐに可笑しそうにクスクスと笑った。
「そうだけど、出店で出てるんだから比較的誰にでも買える値段だ。それに、お金の心配はしなくていい。君がどんな贅沢をしても養える自信がある」
この人は王子様だったんだった。忘れがちなことをぼんやりとそう思う。
第三王子で、彼が言っていることが本当なら公爵位をもらうことが決まっている人。そんな彼にお金の心配なんて無用なことだった。
それに祭りの出店に出しているということは、確かに平民が買えるような値段のものということ。
自分の考えの足りなさと無知さに恥ずかしくなる。
「買いに行こう、マリア」
「たくさん買ってね」
「ああ。私のお姫様」
まるで彼の恋人になったみたい。
並んでる人たちの後ろに並んで、順番を待つ。その間彼はこの国の建国祭についてやこの国の王族のことなど教えてくれて、話は尽きない。私は相槌を打ってるだけなのに、彼は楽しそうに話す。
今の彼がこんなにも饒舌なのは初めてだ。
いつもはただベッドに沈むだけだから。
……ああ。彼の目的が私の身体ということもあり得るのか。
復讐だけだと思い込んでいたけど、ついでに性処理用の女として使っていた可能性もあるのよね。
彼には遠く及ばないけれど、私も整った顔をしていると思う。自惚れではないと思う。実際、住んでいた村の中では人気のあるほうだった。私に話しかけるのは大抵男だった。それで女性に嫉妬されたっけ。身体も、質素な性格をしてた割には、抱きごたえのある身体をしていると思う。
それに、彼はあまりにも、その、激しくて、本命の女性をあんなふうに抱くのは抵抗があったのかもしれない。
「マリア。二つ買って一つは家で食べようか」
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「なら、そうしよう」
気が付けばもう列の先頭で、可愛らしい袋に入ったこんぺいとうを二つ持ち上げながら彼は問いかける。
一瞬答えるのが遅れたけど、彼は気にしていないとでもいうように微笑んだ。
ふいに彼の視線が別の場所へと向かう。
なにがあるのかと彼の視線を辿ってみたけど、そこにはただ露店があるだけ。
彼は私の視線に気がつくと、フッと微笑んで「どこかで休憩しよう」と提案した。
噴水の前のベンチに二人で腰掛ける。
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そのうちの一つを開ける。
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「……昔と同じだ」
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彼が一つ手に取って自分の口の中に放り込む。彼は眉間にしわを寄せた。
ああ、そういえば昔もそうだった。
甘いものが得意じゃない彼は、砂糖でできたこのお菓子を難しそうな顔で食べていた。
「やはり甘過ぎる」
「私は、好きよ」
私もこんぺいとうを口の中に放り込む。
優しい甘さが広がって、舌で転がすと星の先端が口の中を刺激する。だけどそれは痛いわけじゃなくて、甘い刺激。ガリッと砕くと、甘さが強くなる。
美味しい。
思わず笑みが零れる。
「マリアが喜んでくれてよかった」
彼はいつだって優しい。
だから、私は彼を幸せにしたいと思える。
いつだって、いつだって、あなたを愛してる。
「ねえ」
「なんだい、マリア」
「いつも、ありがとう」
いつもあなたは優しかった。いつもあなたは私を優先してくれた。いつも、あなたは私に嘘を捧げてくれた。
繋いだ手をギュッと握り締めて私は微笑む。
心が決まった今なら素直になれる。
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「私こそ、いつもありがとう」
それだけで今までの私が救われた気がした。いつも、が今までの私たちのことだとわかったから。
何度も繰り返して、今やっと私たちの心は報われた。
そう、ありがとうって言ってもらいたかったの。
私たちの恋心を捨てないでもらいたかった。
あなたを守って死んだ私たちに。あなたへの恋心を持って殉じた私たちに。
もうそれだけで十分だわ。
「マリア、少しここで待っていてくれ。買いたい物がある」
「わかったわ」
おそらく彼は油断していた。
私が逃げるわけがないと、思い込んでいたのだろう。
だから、私を一人にした。
小さく息を吐きながら立ち上がる。逃げるなら今だ。
「マリア様ですね?」
「え……?」
私の前に立ち塞がる二つの影に突然名前を呼ばれて困惑する。
私の名前を知ってる人なんてこの王都には誰もいない。なかば誘拐されるように連れ去られてきた身だ。元いた場所も閉鎖的で、名前を呼ぶ人は限られていた。
それなのに、彼らはどうして──。
「マリエラ様がお呼びです。共に来ていただけますね」
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