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「りいちゃん、私も合コンに参加したい」
私の言葉にりいちゃんはスマホを弄ってた手を止めて私を見た。それからまたスマホを見た。
「な、なんで無視なの? やっぱりダメ?」
「え? 本気なの?」
「本気だよ」
目を丸くしたりいちゃんが私を見つめる。
本気だもん。ちゃんと新しいものに出会わなきゃ進めない。それなら合コンって結構いいと思うの。
「んー、わかった。兄貴と伊代には言わないでよ?」
「うん。私、頑張って大学生デビュー、する」
そんな会話をしたのが昨日の話。
もう今日のうちには合コンって、ちょっと心の準備期間が短いよね。
「ねえねえ、りいちゃん。変じゃない?」
「似合うよ。やっぱ依は髪を下ろしてたほうがかわいい。化粧はあってもなくてもいいと思ったんだけど……どう? 肌変な感じはしない?」
「うん、大丈夫だけど……なんか恥ずかしいね」
私はとうとうメイクデビューをした。
いつもより睫毛がふさふさで、ちょっと違和感を感じる。
りいちゃんに教えてもらって自分でやったけど大丈夫かな。でも、りいちゃんが変じゃないって言ってくれてるってことは大丈夫だと思う。
「依、約束は覚えてるよね?」
「男の人にはついて行かない、あんまりくっつかない、お酒は飲まない」
「よし」
なんか親子の会話かな、と思ってしまった。
お母さん、元気かなぁ。最近疲れてたけど、大丈夫かなぁ。
なんて関係のないことを考えてしまった。
「お待たせ~」「遅くなりました!」
「あ、理香子、安堂さん!」
「え、うそ。安堂さん、すごいかわいい~!」
褒められちゃった~!
えへへ、と顔を赤くする。お世辞だってわかっても嬉しいよね。
こうやって女の子同士でキャピキャピするのってあんまりなかったし。
集合場所に行くと、女の子組はもうすでに着いていた。
周りの大人っぽさになんだか恥ずかしくなる。みんなおっぱいでかい。足長い。
でも、ほら! 別にいいんだ。新しい出会いを求めるだけだし。新しいことをしたいの。
ぜーんぶ忘れるんだ!
「きゃー! 御岳くん来るなんて知らなかったぁ!」
「御岳くんが来るならもっとオシャレしたのに!」
「いきなり御岳が来たいって言うからさ~。いきなりでごめんな」
「いいよ、いいよ全然! むしろよくやった!」
「……………」
なんでそうなる?
何故か御岳くんとそのお供二人もいる。
人数は男女一緒だけど、おかしい。私は新しい出会いを求めて来たのであって、トラウマを思い出すために来たんじゃないのに。
帰るって言おうかな、と思ってりいちゃんを見る。りいちゃんはなんかすごいめんどくさそうな顔をしてた。
言えない雰囲気だ。こわいぞ。
結局なんにも言えないまま、お店にみんなで入っていく。ちなみに五人五人の合計十人。
「じゃあ、とりあえずお互いの自己紹介で! 男女交互に!」
幹事の男の子のほうがとりあえず飲み物を注文したあと、そう言って纏める。
もう帰りたい。声聞きたくない。
「じゃー、俺からね~! 幹事の小池恒彦です! 彼女募集中だからよろしくね~!」
小池くんは明るくて元気な人っぽい。
でも、私はきっと苦手っぽい。
それよりも私は黒髪のタレ目の人が気になるなぁ。優しそう。
ちなみに御岳くんとその友達のほうは見ない。何故か私の目の前に御岳くんがいるけど見ない。
しかも一番端。なんで真ん中に座らない! 真ん中に座って女の子物色しててよ!
目の前を見ることもできなくて、視線を彷徨わせながらとにかく挨拶してる人たちに集中する。
なんかみんな恋人いるいない言ってる……。言わなくちゃダメ? ダメなの?
「御岳真紘。恋人なし」
御岳くんの声が近くで聴こえて、頭がおかしくなりそうになる。
じゅん、とおまんこからとろとろと溢れ出す。
どうしよう。どうしよう。おかしくなっちゃう。
「依、次」
「あっ、はい! 安堂依です。恋人は、えっと、いたことないです。よろしくお願いします」
ドキドキと心臓が破裂しそうで頭がおかしくなる。
帰りたい。
「あはは、もう依ちゃん御岳に見惚れすぎだよ~。まだ始まったばっかなんだから俺たちとも仲良くしてね」
「ち、せ、席替えしたいです! ね、りいちゃん! 席替えするんだよね!」
「ごめんね~、依ってこういう場初めてだからテンパっちゃってんの。まあ、でもせっかくだから席替えしよっか!」
あ、りいちゃんにこれあとで注意される。
でも、でも、御岳くんの目の前とかもうほんと無理。いっぱい濡れちゃう。もうやだ。自分の身体がもうやだ。
合コンは失敗だったと確信した。
「真紘くん、サラダどうぞ~!」
「……ん」
「僕は飲み物頼もうかな。安堂ちゃんも頼む?」
「わ、わたし、いらない……」
御岳くんとそのお供その1に囲まれた。
席替えなんて提案して、さらに御岳くんが近くになった。女の子たちからは睨まれるし、りいちゃんは離れちゃうし、もう無理。
トイレ行きたい。家に帰りたい。シャワー浴びたい。パンツ気持ち悪い。
自然ともぞもぞと太ももを擦り合わせてしまう。
御岳くんは頑なに私を見ようとしないし、話しかけようとしない。
もうやだ。なんなの、これ。りいちゃんを見ると、私がいいなと思ってたタレ目の優しそうな人といい感じになってる。ずるい。
「ねぇ、安堂ちゃん」
「えぇっと、」
「松田藤吉だよ。藤って呼んでね。僕も依ちゃんって、」
ガシャンッ!
隣から大きな音がしてビクリと震える。
「……ああ、ごめん。落とした」
「真紘くん、大丈夫~? 怪我はぁ?」
「平気。みんなも話止めてごめん」
御岳くんがコップを落とした音だったらしい。
びっくりした。びっくりした。びっくりし過ぎてちょっと泣いてしまった。
それでなくとも泣きそうだったのに。
隣の松田くんを見ると、何故か笑ってる。なんだか我慢できないとでもいうような忍び笑い。
松田くんって、すごい真面目な人だと思ってたんだけどこんな変な人だったんだ。
「松田くん……?」
「あ、ごめん。確か依ちゃんは彼氏いたことないんだよね」
「うん」
「へー、初々しいね。かわいー」
初々しい。なんとなく罪悪感。
だって、そういうことは初めてじゃない。
あれ、もしかして私ってビッチってやつ? それともヤリマン?
でも、でも彼氏ができれば一途だもん。だから大丈夫。たぶん。
「じゃー、みんな緊張も解れてきたし、王様ゲームしようぜー!」
そう言ったのはやっぱり幹事の小池くん。それよりも席替えしたい。席替えさせてください。
でもでも、やっぱりそんなことより帰りたいです……。
そうとは言えずに王様ゲームが始まってしまった。
王様ゲーム。漫画でそのことは知ってる。
王様と数字の番号を書いたくじを作って、そのくじをそれぞれ引いて、王様を引いた人がみんなに命令できるゲーム。
王様の命令は絶対なのが唯一のルール。
「王様だーれだ!」
あ、私二番だ。
王様じゃなかったのは残念だ。
王様だったら席替えできたのに!
「あ、俺王様!」
王様を引いたのは御岳くんのお供その2。
松田くんとは違って活発そうなお供その2の名前は赤坂くん。
「じゃあ、五番の人がこの場にいる異性のことをどう思ってるか言う!」
「え~、五番って私だぁ。恥ずかしい」
五番はりいちゃん繋がりで友達の愛ちゃんだった。
女の子らしい感じの愛ちゃんは御岳くんが一番タイプらしい。ずっとチラチラと御岳くんを見て、私のことをジト目で見てた。
別に愛ちゃんが御岳くんを好きでもなんでも私には関係ないけど。
「んっとぉ、小池くんは元気で素敵で、原本くんには今度勉強教わりたいな! 赤坂くんは今度一緒にサッカー見にいこうね。松田くんのわんちゃん今度見たい。真紘くんはぁ、えっとぉ、」
チラッチラ。
「真紘くんはぁ、すっごくかっこいいなぁって」
ポッと顔を赤くして、御岳くんを見る愛ちゃんはかわいい。ずるい。
こんなの絶対御岳くんメロメロだ。だけど御岳くんは特に反応することがなかった。
ホッとする。
……ちがう! 御岳くんは関係ないんだって!
「じゃ、次~! 王様だーれだ!」
今度は四番。王様になりたいのに。王様になって席替えして、トイレ行ってそのまま帰りたいのに。
「王様はあたしか」
りいちゃん! りいちゃんが王様!
それなら席替え! 席替えさせて!
りいちゃんをジーっと見つめる。私のお願いがわかりますように。
「じゃあ三番がジュース一気飲み」
「あ、僕ね」
松田くんが目の前にあったジュースを一気に飲み干す。全然余裕そう。
りいちゃん、私の希望は違ったよ……。席替えしたいんだってば……。
泣きそう。
「王様だーれだ!」
「……俺」
今度は御岳くん。なんで。なんで? なんで私が王様になれないの? というかもう御岳くんは喋らないでよ! 本当に頭おかしくなっちゃう!
「一番が王様の膝の上」
うんうんと悩んでると、御岳くんが命令を出す。
でも誰も動かない。男が御岳くんの膝の上とかならいいのに。そしたら鼻で笑ってやる。
「ね、依ちゃんじゃないの?」
「……あ」
隣に座ってる松田くんに言われてくじを確認する。
いちばん。
まって。まって。おかしい。やだ。というか無理。絶対無理。
御岳くんの膝の上? 絶対無理。無理だよ。
「わー、御岳すっげー運良過ぎ! 男だったらどうしてたんだよ!」
「まあな。とにかく早く座りなよ」
いやだ。まって。ほんと無理だから。
御岳くんを見ると、ただ私を見つめてる。やだ。その目やだ。
固まっていると、御岳くんが私の脇に手を入れて抱き上げて膝の上に乗せる。
「ひぃぅ……! ~~~っ!」
膝の上に乗せられたとき、御岳くんの手が私の太ももに触れて、私は軽くイッてしまった。
その瞬間、口を押さえて前かがみになったおかげか、たぶんバレてない。それどころか周りで私の体調を心配する声が聞こえる。
だめ、もうむり。
ふるふると首を振る。
「そうなんだ。じゃあ俺が送る。俺がこんなんにしたようなもんだし」
「いや、依はあたしが……」
「まあまあ、理香子ちゃんは幹事じゃん。ここは真紘に任せなよ。真紘に限って変なことをするはずないでしょ」
なんか言ってる。なのに反応できない。
身体がおかしい。御岳くんが私の身体を支えて立ち上がる。足に力が入らない。
「早く行こう。……みんなにバレちゃうよ」
耳元で囁かれて頭がおかしくなる。
久しぶりの御岳くんの声が、一番近いところで聞こえて、身体が震える。
「じゃあ、先に行く。……藤、あとよろしく」
「おっけー。任せてよ」
そのまま私は御岳くんにお持ち帰りをされた。
私の言葉にりいちゃんはスマホを弄ってた手を止めて私を見た。それからまたスマホを見た。
「な、なんで無視なの? やっぱりダメ?」
「え? 本気なの?」
「本気だよ」
目を丸くしたりいちゃんが私を見つめる。
本気だもん。ちゃんと新しいものに出会わなきゃ進めない。それなら合コンって結構いいと思うの。
「んー、わかった。兄貴と伊代には言わないでよ?」
「うん。私、頑張って大学生デビュー、する」
そんな会話をしたのが昨日の話。
もう今日のうちには合コンって、ちょっと心の準備期間が短いよね。
「ねえねえ、りいちゃん。変じゃない?」
「似合うよ。やっぱ依は髪を下ろしてたほうがかわいい。化粧はあってもなくてもいいと思ったんだけど……どう? 肌変な感じはしない?」
「うん、大丈夫だけど……なんか恥ずかしいね」
私はとうとうメイクデビューをした。
いつもより睫毛がふさふさで、ちょっと違和感を感じる。
りいちゃんに教えてもらって自分でやったけど大丈夫かな。でも、りいちゃんが変じゃないって言ってくれてるってことは大丈夫だと思う。
「依、約束は覚えてるよね?」
「男の人にはついて行かない、あんまりくっつかない、お酒は飲まない」
「よし」
なんか親子の会話かな、と思ってしまった。
お母さん、元気かなぁ。最近疲れてたけど、大丈夫かなぁ。
なんて関係のないことを考えてしまった。
「お待たせ~」「遅くなりました!」
「あ、理香子、安堂さん!」
「え、うそ。安堂さん、すごいかわいい~!」
褒められちゃった~!
えへへ、と顔を赤くする。お世辞だってわかっても嬉しいよね。
こうやって女の子同士でキャピキャピするのってあんまりなかったし。
集合場所に行くと、女の子組はもうすでに着いていた。
周りの大人っぽさになんだか恥ずかしくなる。みんなおっぱいでかい。足長い。
でも、ほら! 別にいいんだ。新しい出会いを求めるだけだし。新しいことをしたいの。
ぜーんぶ忘れるんだ!
「きゃー! 御岳くん来るなんて知らなかったぁ!」
「御岳くんが来るならもっとオシャレしたのに!」
「いきなり御岳が来たいって言うからさ~。いきなりでごめんな」
「いいよ、いいよ全然! むしろよくやった!」
「……………」
なんでそうなる?
何故か御岳くんとそのお供二人もいる。
人数は男女一緒だけど、おかしい。私は新しい出会いを求めて来たのであって、トラウマを思い出すために来たんじゃないのに。
帰るって言おうかな、と思ってりいちゃんを見る。りいちゃんはなんかすごいめんどくさそうな顔をしてた。
言えない雰囲気だ。こわいぞ。
結局なんにも言えないまま、お店にみんなで入っていく。ちなみに五人五人の合計十人。
「じゃあ、とりあえずお互いの自己紹介で! 男女交互に!」
幹事の男の子のほうがとりあえず飲み物を注文したあと、そう言って纏める。
もう帰りたい。声聞きたくない。
「じゃー、俺からね~! 幹事の小池恒彦です! 彼女募集中だからよろしくね~!」
小池くんは明るくて元気な人っぽい。
でも、私はきっと苦手っぽい。
それよりも私は黒髪のタレ目の人が気になるなぁ。優しそう。
ちなみに御岳くんとその友達のほうは見ない。何故か私の目の前に御岳くんがいるけど見ない。
しかも一番端。なんで真ん中に座らない! 真ん中に座って女の子物色しててよ!
目の前を見ることもできなくて、視線を彷徨わせながらとにかく挨拶してる人たちに集中する。
なんかみんな恋人いるいない言ってる……。言わなくちゃダメ? ダメなの?
「御岳真紘。恋人なし」
御岳くんの声が近くで聴こえて、頭がおかしくなりそうになる。
じゅん、とおまんこからとろとろと溢れ出す。
どうしよう。どうしよう。おかしくなっちゃう。
「依、次」
「あっ、はい! 安堂依です。恋人は、えっと、いたことないです。よろしくお願いします」
ドキドキと心臓が破裂しそうで頭がおかしくなる。
帰りたい。
「あはは、もう依ちゃん御岳に見惚れすぎだよ~。まだ始まったばっかなんだから俺たちとも仲良くしてね」
「ち、せ、席替えしたいです! ね、りいちゃん! 席替えするんだよね!」
「ごめんね~、依ってこういう場初めてだからテンパっちゃってんの。まあ、でもせっかくだから席替えしよっか!」
あ、りいちゃんにこれあとで注意される。
でも、でも、御岳くんの目の前とかもうほんと無理。いっぱい濡れちゃう。もうやだ。自分の身体がもうやだ。
合コンは失敗だったと確信した。
「真紘くん、サラダどうぞ~!」
「……ん」
「僕は飲み物頼もうかな。安堂ちゃんも頼む?」
「わ、わたし、いらない……」
御岳くんとそのお供その1に囲まれた。
席替えなんて提案して、さらに御岳くんが近くになった。女の子たちからは睨まれるし、りいちゃんは離れちゃうし、もう無理。
トイレ行きたい。家に帰りたい。シャワー浴びたい。パンツ気持ち悪い。
自然ともぞもぞと太ももを擦り合わせてしまう。
御岳くんは頑なに私を見ようとしないし、話しかけようとしない。
もうやだ。なんなの、これ。りいちゃんを見ると、私がいいなと思ってたタレ目の優しそうな人といい感じになってる。ずるい。
「ねぇ、安堂ちゃん」
「えぇっと、」
「松田藤吉だよ。藤って呼んでね。僕も依ちゃんって、」
ガシャンッ!
隣から大きな音がしてビクリと震える。
「……ああ、ごめん。落とした」
「真紘くん、大丈夫~? 怪我はぁ?」
「平気。みんなも話止めてごめん」
御岳くんがコップを落とした音だったらしい。
びっくりした。びっくりした。びっくりし過ぎてちょっと泣いてしまった。
それでなくとも泣きそうだったのに。
隣の松田くんを見ると、何故か笑ってる。なんだか我慢できないとでもいうような忍び笑い。
松田くんって、すごい真面目な人だと思ってたんだけどこんな変な人だったんだ。
「松田くん……?」
「あ、ごめん。確か依ちゃんは彼氏いたことないんだよね」
「うん」
「へー、初々しいね。かわいー」
初々しい。なんとなく罪悪感。
だって、そういうことは初めてじゃない。
あれ、もしかして私ってビッチってやつ? それともヤリマン?
でも、でも彼氏ができれば一途だもん。だから大丈夫。たぶん。
「じゃー、みんな緊張も解れてきたし、王様ゲームしようぜー!」
そう言ったのはやっぱり幹事の小池くん。それよりも席替えしたい。席替えさせてください。
でもでも、やっぱりそんなことより帰りたいです……。
そうとは言えずに王様ゲームが始まってしまった。
王様ゲーム。漫画でそのことは知ってる。
王様と数字の番号を書いたくじを作って、そのくじをそれぞれ引いて、王様を引いた人がみんなに命令できるゲーム。
王様の命令は絶対なのが唯一のルール。
「王様だーれだ!」
あ、私二番だ。
王様じゃなかったのは残念だ。
王様だったら席替えできたのに!
「あ、俺王様!」
王様を引いたのは御岳くんのお供その2。
松田くんとは違って活発そうなお供その2の名前は赤坂くん。
「じゃあ、五番の人がこの場にいる異性のことをどう思ってるか言う!」
「え~、五番って私だぁ。恥ずかしい」
五番はりいちゃん繋がりで友達の愛ちゃんだった。
女の子らしい感じの愛ちゃんは御岳くんが一番タイプらしい。ずっとチラチラと御岳くんを見て、私のことをジト目で見てた。
別に愛ちゃんが御岳くんを好きでもなんでも私には関係ないけど。
「んっとぉ、小池くんは元気で素敵で、原本くんには今度勉強教わりたいな! 赤坂くんは今度一緒にサッカー見にいこうね。松田くんのわんちゃん今度見たい。真紘くんはぁ、えっとぉ、」
チラッチラ。
「真紘くんはぁ、すっごくかっこいいなぁって」
ポッと顔を赤くして、御岳くんを見る愛ちゃんはかわいい。ずるい。
こんなの絶対御岳くんメロメロだ。だけど御岳くんは特に反応することがなかった。
ホッとする。
……ちがう! 御岳くんは関係ないんだって!
「じゃ、次~! 王様だーれだ!」
今度は四番。王様になりたいのに。王様になって席替えして、トイレ行ってそのまま帰りたいのに。
「王様はあたしか」
りいちゃん! りいちゃんが王様!
それなら席替え! 席替えさせて!
りいちゃんをジーっと見つめる。私のお願いがわかりますように。
「じゃあ三番がジュース一気飲み」
「あ、僕ね」
松田くんが目の前にあったジュースを一気に飲み干す。全然余裕そう。
りいちゃん、私の希望は違ったよ……。席替えしたいんだってば……。
泣きそう。
「王様だーれだ!」
「……俺」
今度は御岳くん。なんで。なんで? なんで私が王様になれないの? というかもう御岳くんは喋らないでよ! 本当に頭おかしくなっちゃう!
「一番が王様の膝の上」
うんうんと悩んでると、御岳くんが命令を出す。
でも誰も動かない。男が御岳くんの膝の上とかならいいのに。そしたら鼻で笑ってやる。
「ね、依ちゃんじゃないの?」
「……あ」
隣に座ってる松田くんに言われてくじを確認する。
いちばん。
まって。まって。おかしい。やだ。というか無理。絶対無理。
御岳くんの膝の上? 絶対無理。無理だよ。
「わー、御岳すっげー運良過ぎ! 男だったらどうしてたんだよ!」
「まあな。とにかく早く座りなよ」
いやだ。まって。ほんと無理だから。
御岳くんを見ると、ただ私を見つめてる。やだ。その目やだ。
固まっていると、御岳くんが私の脇に手を入れて抱き上げて膝の上に乗せる。
「ひぃぅ……! ~~~っ!」
膝の上に乗せられたとき、御岳くんの手が私の太ももに触れて、私は軽くイッてしまった。
その瞬間、口を押さえて前かがみになったおかげか、たぶんバレてない。それどころか周りで私の体調を心配する声が聞こえる。
だめ、もうむり。
ふるふると首を振る。
「そうなんだ。じゃあ俺が送る。俺がこんなんにしたようなもんだし」
「いや、依はあたしが……」
「まあまあ、理香子ちゃんは幹事じゃん。ここは真紘に任せなよ。真紘に限って変なことをするはずないでしょ」
なんか言ってる。なのに反応できない。
身体がおかしい。御岳くんが私の身体を支えて立ち上がる。足に力が入らない。
「早く行こう。……みんなにバレちゃうよ」
耳元で囁かれて頭がおかしくなる。
久しぶりの御岳くんの声が、一番近いところで聞こえて、身体が震える。
「じゃあ、先に行く。……藤、あとよろしく」
「おっけー。任せてよ」
そのまま私は御岳くんにお持ち帰りをされた。
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