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 オスカー様と初めて会ったとき、天使様かと思った。
 プラチナブロンドの髪は光に反射して天使の輪を作り出していて、綺麗な碧い瞳は気弱そうにおどおどとしていて愛らしい。
 それと同時に思い浮かんだのは、好きな子をいじめちゃう男の子のように、私がオスカー様をいじめる姿。そしてそれは連鎖のように次々と頭の中にスチルが浮かんでは消えた。
 好きだからっていじめちゃダメ。
 私、いつかこの天使様に罰さられちゃうんだ。

「ぼく、オスカー。きみは?」

 そう言って手を伸ばす王子様。いつか私を断罪する人。光に照らされた天使様の手を取って、私は微笑む。

「ソフィア・ロマンスです、オスカーさま」

 そう。私はソフィア・ロマンス。悪役令嬢だ。


 しゅるりという布擦れの音と、解放感で目が覚めた。

「な、に……?」
「おはよう、ソフィー。ずいぶん気持ち良さそうに寝てたんだね」

 私のドレスを落としたオスカー様が笑ってる。そこでやっと自分の状況を思い出した。
 私、絶頂して気絶しちゃったんだ。
 きょろきょろと辺りを見渡して気付く。ここ、外じゃない。城の中だ。それも、きっとオスカー様の寝室。
 しかも脱がされてる。私、全裸になってる。そしてオスカー様も上半身裸だ。

「やだっ!」

 驚いて腕で胸を隠す。自分の腕が自由になってることにホッとして、身体を動かそうとする。

「な、んで?」

 足を持ち上げようと気付いた。じゃらりと重たい音を立てた、自分の足首に繋がれたもの。

「くさりって、え? オスカー様……?」

 オスカー様を見ると、にっこりと微笑んでる。いつもと変わらない笑みだからこそ、それが恐ろしい。

「本当はね、僕もこんなことしたくなかったんだよ? でも、僕のソフィーは一人にすると、男を誘うみたいだからねぇ。仕方ないよね」
「そんなこと……!」
「しないって? 実際アルドルフに迫ってたじゃない」

 その通りだけど、それには訳があって、というか私って婚約破棄されるんじゃないの? なんで監禁されようとしてるの?
 ああ、どうしよう。訳が分からなくなってきた。
 いったん話を整理したい。

「さて、始めようか」
「え、あっ……」

 ゆっくりと肩を押されて倒れ込む。
 馬乗りになったオスカー様は、今度は笑ってない。ただ優しい碧い瞳をギラギラとさせてる。本気だとわかるその目から逃げ出したい。
 でもこんな、訳の分からないまま犯されて、捨てられるなんてイヤだ。

「まっ、てくだ……あっ、」
「待たない」
「ひっ!」

 オスカー様の唇が私の耳に触れる。くすぐったさにピクンと身体を揺らすと、舌が私の耳を入ってきた。
 なに、これ。なんなの、やだ、なんかやだっ!

「ゃあ"っ、ふっ、ふーっ、ふーっ!」
「……は、息が荒いね、ソフィー。耳を舐められるのが好き?」

 尖った舌が耳をほじくる。ゾクゾクとした快感が登ってくる。やだ、この身体耳が弱いんだ。
 声を出さないように口を手で抑えるけど、そうすると息が荒くなって仕方ない。
 ぴちゃぴちゃと耳を舐められる音と、私の荒い息が空間を支配する。

「ゃ、ぁ"っ、ふーっ、まっ、いっちゃ、ゔ、んぅ~~ッッ!」

 オスカー様の肩に爪を立てながら、びくびくっと身体が跳ねる。うそ、うそ。ただ耳を舐められただけなのに。
 イッてる間にオスカー様は私の耳にチュッとキスをして、顔を上げた。

「敏感な身体だねぇ。淫乱」
「ぁ"あっ!」

 剥き出しの乳首を指で弾かれる。快感の上に快感。本能的に涙が溢れて、シーツへと落ちた。
 淫乱じゃない、って言いたいけど、私の身体はたしかに敏感過ぎる。ひどい。いらない、こんなの。
 わけわかんなすぎてぶわっと大粒の涙が溢れた。

「ふっ、も、ゃらぁあ~~っ! ど、してオスカーさま、ひどいぃっ!」

 声に出して大泣きする。ほんきでもうやだ。なんなの、これ。私悪くないし。悪いのオスカー様だし。悪役令嬢の淫乱な身体とか私のせいじゃないしぃいっ! どうして私がこんなことされなくちゃいけないのぉっ!

「……泣いてるソフィーかわいい」

 ポツリと言ったの聞こえたからぁっ! 
 かわいいって言われて嬉しくなっちゃう自分が恨めしい。でも、だって、好きな人にかわいいとか言われたら嬉しいんだもの……。
 結局オスカー様が好きなんだもの……。チョロい悪役令嬢とかまじ需要ない……。

「もう家に帰らせてくださいぃっ!」
「それは無理だよ」
「なんでですかぁっ!」
「孕ませるから」

 ……は?

「ソフィーが僕の子どもを孕むまで、この部屋から出さないから」

 ………………は?

 にこにこと笑いながらのオスカー様の言葉に、びっくりしすぎて思わず涙も引っ込む。
 え、腹ボテエンドなの? オスカー様のお部屋で輪姦レイプされるの? まさか。一応王太子の寝室だよ。そんなわけないよ。
 なにか言わなくちゃ、なにか、なにか。

「いっ、いやですっ!」
「──は?」
「ひっ!」

 真顔。笑顔からの真顔。オスカー様から表情が消えた。

「ちがっ、ちがくてっ、話を、はなしをしたいんですっ!」

 まずい。まずいまずい。なんかよくわからないけどオスカー様の瞳孔が開いてる。
 話をしなくちゃ。そう、話し合い。とっても建設的な話し合い。このままじゃお互いによくないと思う。
 あとどうでもいいけど震えが止まらない。

「あんまり聞きたくないなぁ。話をして、それ、僕になんの利益があるの? 僕はこのままソフィーを逃がさないようにするだけなんだけど」
「そ、それがよくわからないんですっ!」
「はぁ?」

 私の言葉にオスカー様はめんどくさそうに首をかしげる。
 でも、よくわからないんだもの。本当にわからないんだもの。

「どうしてオスカー様がわたくしを逃がさないようにするんですか? だって、オスカー様は……」

 ああ、いやだ。言葉にしたくない。でも、しなくちゃ始まらない。

「アステルと、お付き合いを始めたんでしょう?」

 私の言葉にオスカー様がベッドから落ちた。
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