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04話から修正前の文を乗せてました
読んでしまった方申し訳ございません。
感想で教えてくださった方、ありがとうございます!大変助かりました!

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 聖世祭が開催される場所はずいぶんと輝かしい場所だった。

「すごい……」

 背の高い建物がたくさん並んでいて、とても賑やかな場所。王都よりもずっと先進的な場所に思える。

「気に入ったか?」
「はい……」

 龍の姿で入ればすぐに目的の場所である城に着くのに、カムイ様は私が立ち並ぶ建物が気になってることに気がついてくださり、徒歩で城まで向かってくれている。私も歩こうとすると、カムイ様が抱き上げてくださった。カムイ様に抱っこされながら街を歩くことはとても恥ずかしくてたまらないのだけど、カムイ様はとても楽しいらしく、鼻唄でも歌いそうなくらい機嫌がいい。隣に歩くリュウザン様がカムイ様を見て最初はギョッとしてた。今はもう慣れたらしく呆れた目でカムイ様を見てらっしゃる。
 あと、視線が痛い。リュウザン様もカムイ様何故だか注目されている。もしかして周りの人たちはお二方が龍族だと分かっているのかもしれない。

 それにしても、リュウカイの孤島と呼ばれているこの場所はずっと誰も住めないような前人未踏の地だと思われていた。それなのに、こんなすごい場所だったなんて。
 道は馬車4台分が入りほうなほどに広くて、お店はほとんどが3階までありそうな大きなもの。
 すごいとしか言いようがない。
 元いた場所では考えられないような革新的な場所。

「人間の都は狭いからなぁ~。あたしたちの作った都は珍しいだろ」
「初めて見ます。とても素敵な都です」

 未来の王子妃として近隣の国へなら行ったことはあるけど、どの国も似たような都市だった。
 私たちの国の都が狭いのではない。というか、根本的なところはそこではない。

「ベルがそんなに気に入ったのであれば、我らの住処にも作るか?」
「お気持ちは嬉しいですけど、カムイ様……」
「んむ?」

 言ってもいいか考えて、唇を一旦閉じる。カムイ様はジッと私を捕らえて離さない。私の言葉を待っている。
 カムイ様のお気持ちは嬉しい。私のためを考えて言ってくれることだから。その言葉を拒否するべきではないと思う。
 でも、私はあの家を気に入っている。カムイ様の龍体が入るといっぱいになってしまうあの家を。私とカムイ様の大切なお家。

「あの、私、あの家でカムイ様とくっついていることがとても好きなのです。だから、その、あんまり大きな家は、とても、寂しくなってしまいます……」

 言ってからかぁあっ、と顔が赤くなる。とてもはしたない言葉だっただろうか。
 恥ずかしくて顔を両手で隠すと、カムイ様が歩みを止める。不思議に思って指の隙間からカムイ様を見ると、カムイ様は首まで顔が真っ赤に染まっていた。

「ローズはあれだな。龍でもドラゴンでもないくせに、あたしらが番にもらって最高に喜ぶ言葉を選んでくるな」
「は、はしたなくはないですか?」
「全然大丈夫だと思うぞ? けど、まだ閨を共にしてないリュウセンにはちぃーっと刺激が強過ぎたみたいだな。あたしらの会話も頭に入ってきてないみたいだ」

 私を見つめたまま固まってしまったカムイ様を見ながら、リュウザン様はケラケラと笑う。
 し、刺激が強過ぎたってことは、やっぱりはしたなかったってことでは……? とても恥ずかしいことを言ってしまったのでは……?

「ベル」
「は、はい」
「そなたは人がいるときに限って我を煽るようなことを言う。もしや我の理性を試しているのか?」 
「そんなことはっ!」
「わかっておる。わかっておるのだ。そなたの言葉が閨への誘いにしか聴こえぬ我が悪いのだ! 早くそなたの全てを暴きたいっっっ!」

 心からの叫びだった。カムイ様の心からの叫びだった。途中から声が大きくなってしまうほどに。
 やっぱりカムイ様に我慢させてたのだわ。早く身体を捧げてしまうべきだったのだわ。今からでも遅くない? この国で、カムイ様に捧げるべき?
 私は、カムイ様に身を捧げてもいいと思っている。
 それでもしもカムイ様に捨てられても、たぶん私は後悔はしない。死んでも、いいから。

「私……」
「あーっと、ローズ。先に言っておく」

 捧げるべきだと思って言葉を開くと、私の言葉を遮るようにリュウザン様が声を上げた。
 きょとんとリュウザン様へと目を向けると、リュウザン様は苦笑いを浮かべている。

「ドラゴン族の蜜月は最低一ヶ月、長いときは一年は続く」
「はい……?」
「リュウセンは気が遠くなるぐらい一人で過ごしてきた龍族だ。番であるローズが望んでも、最低半年は蜜月が続くと見ていいだろう。最低だ。あたしは二年くらい続いても不思議じゃないと思ってる。だから、この国でリュウセンと閨に籠るとか絶対に考えるなよ。魔物が大量発生するからな?」

 手を当ててぴたりと口を閉じた。
 蜜月って、その、蜜月……? 性的なその、意味だよね? え? 私、死んじゃうの……? 蜜月が終わるのが早くて半年……?  そんなに体力が続くわけがない。
 一月でさえ無理だと思うのに、それが半年……? 長くて二年ってなに?
 どうしよう。カムイ様のことは好きだけれど、蜜月は怖い。それとも私の知ってる蜜月とリュウザン様のおっしゃってる蜜月は意味が違うのかしら?

「えっと……」
「あ、蜜月っていうのは子作り期間のことな? まあローズは人族のメスで体力もそんなにないだろうし、リュウセンも考えてるだろ。……たぶん。ずっとヤリっぱなしってのはないない。……たぶん」

 たぶん。へらり、と笑いながらも不安が隠せていないようなリュウザン様に私も不安が隠せない。
 リュウザン様と目を合わせていると、カムイ様がハッと意識を取り戻した。

「リュウザン。我の番になにを吹き込んでおるのだ。品のないことを吹き込むでない。ベルには我がすべて教えるからおぬしはなにも言うでない」
「童貞のくせに教えるもなにもないだろ」

 スッとこの場の空気が変わった。というよりカムイ様の目の瞳孔が開いて、ひんやりとした空気が辺りに漂う。
 さすがのリュウザン様もまずいと思ったのか、血の気が引いていた。

「………殺す」

 ぽつりと呟かれた言葉と同時に、人の姿だったリュウザン様のお姿が龍の姿に戻る。
 道いっぱいに広がったリュウザン様のお姿に、この都の道がこんなに広いのは本来のお姿に戻っても大丈夫なようにだと気付いた。
 通りすがりの方たちも悲鳴をあげて逃げ出していたり、近くの人たちも何故だかドラゴンの姿に戻っていたりして、とても騒がしいことになっている。

「あ、あの、カムイ様……」
「──ベル。我は、そうだ。確かに女と寝たことがない。だが気にしなくていい。そなたを苦しめたりはせぬ。勉強不足かもしれぬが、そなたを楽しませるために努力するつもりだ」

 カムイ様はなにか勘違いされてないだろうか。

「私、嬉しいです……」
「な、んだと……?」
「カムイ様が私以外の人と、って考えるとすごく悲しかったの。でも、そうじゃないって教えてもらえて、とっても嬉しいの……」
「我は、番がそなたでよかった……!」

 カムイ様の初めては私。そのことがとても嬉しい。長く生きてきたカムイ様だから、番は初めてかもしれないけど、女性経験はあるのかもしれないと思っていたところがあった。
 それなのにカムイ様も初めてだなんて!
 こんなに嬉しいことがあっていいの? 都合のいい夢を見ているみたい。
 本当の私はリュウセンの森に入ったときに死んで、カムイ様と会ってから今の今まで夢。それでもおかしくないくらいの喜びが私を支配する。
 カムイ様にギュッと抱きしめられた。ちょっと息苦しいけどこの息苦しさが心地よく感じてしまう。

「ベル、早く二人きりになれる場所に行くぞ。我は早くそなたと二人きりになりたい」
「あの、でも、」
「んむ? なんだ?」
「その、周りの方々が固まってしまっているのですが……」

 カムイ様の腕の隙間から覗くと、周りが石化したように動かない。ピクリともしないものだから不安になる。

「ああ、気にしなくてもよい。我がいなくなればそのうち動き出すだろう。我の魔力に当てられただけだ」
「そう、なのですか?」
「ああ。歩きでは長引くな。街は堪能したか? ここからは元の姿に戻って城まで飛ぶが、いいか?」

 ん、と考える。できればカムイ様と食べ歩き、なんてしてみたかった。けれどこのまま歩いていても、本当にただ建物を見るだけになってしまうだろう。

「あとでカムイ様と街に来られます?」
「そなたが望むのなら」
「なら、また後で街を見たいの。カムイ様とゆっくり、その、デート、したい、から……」

 顔が熱い。デートなんてしたことがない。けれどカムイ様とならしてみたいと思う。
 エドガー様は街をゆっくり歩くなんてしたがらなかったから、デートなんてしたことがない。それどころか彼と二人きりだなんてなったことがなかった。
 エドガー様とはデートをしたいなんて思わなかったけど、どうしてだろう。カムイ様となら二人きりでデートをしてみたいと思う。
 エドガー様への想いはなんだったのだろうと思えるぐらい、カムイ様への想いが強くなっている。

「ああ、もちろんだ。我もそなたとたくさんデートがしたい」

 そう言って私の瞼に口付けるカムイ様に私は自然な笑みが零れた。
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