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告白されました
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どこからか漂ってくる美味しそうな匂いで目が覚めた。
チーズ? なんかいい匂い。
むくりと起き上がると、ぐーっとお腹が鳴る。
「………?」
あれ、ここ、どこだっけ……?
でっかいベッドの上には私一人。まだぼんやりとしていて頭が働かない。
「あれ、起きたんだ、未唯。おはよう」
「しゅうさ、っ!?」
なんか声が出ない。というか喉が痛い。
喉を抑えるように手を当てると、宗さんが水を持ってきてくれる。ありがたい。こくっとそれで喉を潤すと、少しだけ痛みが引いた。
「丸一日寝てたんだよ。お腹、空いたでしょう」
「あっ、あのっ?」
「ああ、きっと立ち上がれないだろうからここで食べよう。ちょっと待ってて」
そう言って宗さんが部屋を出て行ってしまう。
いや、ちょっとまって。あの、先に今の状況を説明して欲しかった……。
私、宗さんと別れたんじゃなかったっけ? 別れたよね? だって、すごく泣いたもん。
あれ、じゃあ今の状況はなに? というかここどこ? 私、なに悪いことしたっけ……。
いや、まって。私、なんで裸なの? 宗さんとシてるときは服を着てたような……。
「お待たせ、未唯。チーズリゾット。食べやすいし、未唯も好きだよね」
帰ってきた宗さんの手の中には小さな土鍋。くんくんと鼻を動かすといい匂い。
ぐーっとまたお腹が鳴った。
お腹の音が聞こえたのか、宗さんがくすくすと笑う。カーッと顔が赤くなる。恥ずかしい。
宗さんは近くに椅子を持ってきて、そこに座って土鍋を小さなローテーブルの上に置く。あっ、すごく美味しそう。見た目もすごく美味しそう。
ジッと見てると、彼がれんげでリゾットを掬ってふーふーして冷ましてくれる。
「未唯、あーん」
「あ、あの、わたし、じぶんで、というか、あの、ふく……」
「あーん」
……逆らえない。目の奥が笑ってなかった。
自分でもふーっと冷ましてから、ぱくりと口に含む。
ああっ、なにこれ、すっごく美味しい。
もぐもぐと味わってると、宗さんがまたれんげを差し出してあーんしてくる。
私は諦めた。
きっとこれを食べきれば宗さんは私の話を聞いてくれるはず。目下私は服が欲しい。シーツを巻いてるだけじゃ、心もとない。
「未唯、美味しい?」
「ん、くっ、はい。すごく、おいしいです」
「そう。よかった」
ホッとしたような笑顔を向けられてどうしていいかわからなくなる。
あるぇ……? 私、なんで元カレとこんなことになってるんだぁ……?
聞きたいことはたくさんある。だけど、次から次へと口に運ばれるリゾットにとりあえず口を動かす。おいしー。
土鍋の中のものを空にすると、満足感でいっぱいになった。
おなかいっぱい。しあわせです。
そういえば別れてからまともにご飯食べてなかった。ご飯って、おいしいんだね。
でも、そこで終わっちゃいけない。
「話が、あります」
「なぁに、未唯」
私の固い声とは違って、蕩けるような甘い声。
さっそく心が折れそうになるけど、この状況は本気でわけがわからない。解決しないとダメなやつ。
「あの、あのっ、」
「うん?」
と、思うのになかなか言葉が出てこない。
だってこう、威圧感がすごい。下手なことを言ってしまえば終わりな気がする。
いやでもまって。大丈夫。 宗さんは優しい人。そんな酷いことは起こらない。
「あのっ! ここ、どこですかっ!」
「ここ? 俺の家」
「え、でも、宗さんは実家住みじゃ……」
「家は出たから」
まずは軽いのから聞こうと思って、ここがどこかを聞けばずいぶんと予想外の答えをもらった。
ここ、高級マンションだと思うんだけど、しかも最上階。とんでもないお値段なんじゃないの……? 気になるけどさすがにお金のことは聞けない。
というかいつから住んでるんだろう……? つい先週までは自分の実家に住んでたのに。
引っ越したなら教えてくれてもよかったのに。でも、どちらにせよ別れたなら関係ないか。
「えっと、あと、服を……」
「ああ、ごめんね、未唯。用意してない」
「用意してない……」
「未唯の着てたスーツとブラウスはクリーニングに出したよ」
「………あの、せめて下着を……」
「男の家に女物の下着なんてあると思う?」
えっ、と、私、裸でいるしかないの……?
ぐるりと巻いたシーツだけじゃ心もとない。泣きそう。
ジッと宗さんを見ると、にっこりと笑ってて何も言えなくなる。
裸だと仕事行けない……。仕事……? ……!
「あっ、明日仕事っ!」
「職場には俺が連絡したよ。体調が悪いので一週間くらい休みますって」
「えっ、いや、あの、え?」
「というか、当分外には出さないよ。ごめんね、未唯。俺、本当に性格悪いんだ」
頭の中がハテナでいっぱいになる。
そんな、仕事って他人が休みを申告しても受理されちゃうの? なんてことだ。
当分外に出してもらえないって、私はそんなに悪いことをしたのだろうか。
不安になる。そこまで宗さんを怒らせてしまうなんて。
謝ったら許してもらえるのかな。
そう思って宗さんを見る。
「どうしたの、未唯」
宗さんはまるでどこぞの聖母のように微笑んで、私の頬を大きな手で包み込む。
あ、優しい。大丈夫そう。
「あの、私、宗さんに別れてください、って……ひっ!」
地雷だったらしい。宗さんの目が笑ってない。あの聖母の微笑みはどこに行ったの? 今は真逆の微笑みだ。こわい。
「ごめんね、未唯。未唯を恐がらせたいわけじゃないんだ。ほら、泣かないで」
「あの、でも、宗さん……」
「かわいい俺の未唯。俺が嫌い?」
いやむしろ好きだから困ってます。
ふるふると首を振ると、宗さんは嬉しそうに私を抱き締める。
私、裸なんだけどなっ!
恥ずかしくなって俯くと、宗さんはなおさら強く私を抱き締める。
というかかわいいとか言い過ぎ! どうしたの、もっとこうクールな宗さんはどこっ!
「あのね、未唯。俺は未唯のことが好きだよ、愛してる」
「ぅ、で、でも、それ、」
「なぁに、未唯」
「あっ、いや、なんでも、ない……」
それは妹には敵わないんでしょう?
そう言ってしまいそうになった口を慌てて閉じる。
家族にまで嫉妬するなんて、私の心は本当に狭い。
だいたい彼の妹は明るくてとてもいい子だ。お兄ちゃんが大好きなんだと言う家族思いの女の子。その上最上級の美少女。
シスコンになる気持ちもわかる。
私にも姉弟がいたらなにか違ったのだろうか。
それでも、きっと嫉妬する気持ちは抑えられなかった。
こんな私、宗さんにふさわしくない。
「未唯、なにを考えてる?」
「宗さん、私、やっぱり……」
宗さんと付き合えない。
そう言う前に宗さんが口を開く。
「……俺が悪いんだよね」
「えっ?」
思いもよらない言葉が出てきた。
「未唯とのデートも妹の頼みが断れなくて同伴させたり、初めてのセックスのときも未唯を置いて帰ったり、前からしてた約束も当日になってすっぽかしたり。しかも全ての理由に妹がいた。未唯が怒るのも無理ないと思う」
「あっ、ちがっ、」
「もうあいつにはよく言い聞かせたし、極力関わってこない。だけど、こんな俺の言葉信じられないよね……。俺なんて、未唯にふさわしくない……」
「そんなっ! 宗さんは私には出来すぎた恋人で、私のほうがふさわしくないっ!」
慌てて宗さんの言葉を否定する。宗さんが私にふさわしくないなんてありえない。逆だ。
宗さん、妹のこと気付いてたんだ。大事な妹を大事にできない私に呆れたわけじゃないの……?
大事な妹さんなのに、私を優先してよかったの……?
そんな気持ちがぐるぐるとまわる。
「まさか。俺は未唯じゃなきゃダメなんだよ。未唯は俺じゃなくても平気だろうけど」
「そんなことないっ! 私も宗さんじゃなきゃダメっ!」
「本当……? 嬉しい。じゃあ、未唯。俺と別れるって言葉は撤回でいいよね」
「え、あれ?」
「安心して。もう俺と未唯の間に入ってくる奴はいないから。……また俺と未唯の邪魔をするなら、温情はなしだ」
撤回……? それでいいの、かな?
いや、もちろん宗さんのことが好き。宗さんがいいなら別れたくなんてない。
あれ、じゃあ問題なんてないじゃない。
あと最後にぼそりと言った言葉がうまく聞き取れなかった。聞き返したほうがいいのかな。
そう思って口を開く前に、宗さんの口が開く。
「ああ、よかった、未唯。本当に、よかった。これからはいきなり別れるなんて言わないでね。今週は引っ越しの準備しようね」
「うん………んん?」
「ああ、その前に言わなくちゃいけないな」
宗さんが私から少しだけ距離をとって手を取る。
「未唯、俺と結婚してください」
「……はい?」
「嬉しい、未唯。これ、予約だけど。シンプルになったけど、未唯はそっちの方が好きだよね」
「えっ?」
そう言って左手の薬指にはめられる銀色の輪っか。
えっ? 宗さんを見る。微笑んでる。指輪を見る。キラキラ輝いてる。宗さんを見る。すごく嬉しそう。指輪を見る。
「あの、けっこんって、」
「やっぱり、俺は未唯にふさわしくない……?」
「あっ、や、そんなっ! 宗さんは私にはもったいないですっ!」
「よかった。愛してるよ、未唯」
あ、とかう、とか声にならない。
本当? これ、夢じゃない?
「あの、私も、宗さんのこと愛してます、うっ!」
「うん、嬉しい」
痛い、宗さん痛い。宗さんが私を抱き締めてくれるのは嬉しいけど、中身が飛び出そう。
宗さんが妹となにかあったのかはよくわからない。だけど、すごく幸せだからもういいや。宗さんが私を好きでいてくれるなら、それでもういいの。
「ずっと、一緒にいてくださいね」
「神は……信じないから君に誓うよ」
そう言って宗さんは私にキスをした。
チーズ? なんかいい匂い。
むくりと起き上がると、ぐーっとお腹が鳴る。
「………?」
あれ、ここ、どこだっけ……?
でっかいベッドの上には私一人。まだぼんやりとしていて頭が働かない。
「あれ、起きたんだ、未唯。おはよう」
「しゅうさ、っ!?」
なんか声が出ない。というか喉が痛い。
喉を抑えるように手を当てると、宗さんが水を持ってきてくれる。ありがたい。こくっとそれで喉を潤すと、少しだけ痛みが引いた。
「丸一日寝てたんだよ。お腹、空いたでしょう」
「あっ、あのっ?」
「ああ、きっと立ち上がれないだろうからここで食べよう。ちょっと待ってて」
そう言って宗さんが部屋を出て行ってしまう。
いや、ちょっとまって。あの、先に今の状況を説明して欲しかった……。
私、宗さんと別れたんじゃなかったっけ? 別れたよね? だって、すごく泣いたもん。
あれ、じゃあ今の状況はなに? というかここどこ? 私、なに悪いことしたっけ……。
いや、まって。私、なんで裸なの? 宗さんとシてるときは服を着てたような……。
「お待たせ、未唯。チーズリゾット。食べやすいし、未唯も好きだよね」
帰ってきた宗さんの手の中には小さな土鍋。くんくんと鼻を動かすといい匂い。
ぐーっとまたお腹が鳴った。
お腹の音が聞こえたのか、宗さんがくすくすと笑う。カーッと顔が赤くなる。恥ずかしい。
宗さんは近くに椅子を持ってきて、そこに座って土鍋を小さなローテーブルの上に置く。あっ、すごく美味しそう。見た目もすごく美味しそう。
ジッと見てると、彼がれんげでリゾットを掬ってふーふーして冷ましてくれる。
「未唯、あーん」
「あ、あの、わたし、じぶんで、というか、あの、ふく……」
「あーん」
……逆らえない。目の奥が笑ってなかった。
自分でもふーっと冷ましてから、ぱくりと口に含む。
ああっ、なにこれ、すっごく美味しい。
もぐもぐと味わってると、宗さんがまたれんげを差し出してあーんしてくる。
私は諦めた。
きっとこれを食べきれば宗さんは私の話を聞いてくれるはず。目下私は服が欲しい。シーツを巻いてるだけじゃ、心もとない。
「未唯、美味しい?」
「ん、くっ、はい。すごく、おいしいです」
「そう。よかった」
ホッとしたような笑顔を向けられてどうしていいかわからなくなる。
あるぇ……? 私、なんで元カレとこんなことになってるんだぁ……?
聞きたいことはたくさんある。だけど、次から次へと口に運ばれるリゾットにとりあえず口を動かす。おいしー。
土鍋の中のものを空にすると、満足感でいっぱいになった。
おなかいっぱい。しあわせです。
そういえば別れてからまともにご飯食べてなかった。ご飯って、おいしいんだね。
でも、そこで終わっちゃいけない。
「話が、あります」
「なぁに、未唯」
私の固い声とは違って、蕩けるような甘い声。
さっそく心が折れそうになるけど、この状況は本気でわけがわからない。解決しないとダメなやつ。
「あの、あのっ、」
「うん?」
と、思うのになかなか言葉が出てこない。
だってこう、威圧感がすごい。下手なことを言ってしまえば終わりな気がする。
いやでもまって。大丈夫。 宗さんは優しい人。そんな酷いことは起こらない。
「あのっ! ここ、どこですかっ!」
「ここ? 俺の家」
「え、でも、宗さんは実家住みじゃ……」
「家は出たから」
まずは軽いのから聞こうと思って、ここがどこかを聞けばずいぶんと予想外の答えをもらった。
ここ、高級マンションだと思うんだけど、しかも最上階。とんでもないお値段なんじゃないの……? 気になるけどさすがにお金のことは聞けない。
というかいつから住んでるんだろう……? つい先週までは自分の実家に住んでたのに。
引っ越したなら教えてくれてもよかったのに。でも、どちらにせよ別れたなら関係ないか。
「えっと、あと、服を……」
「ああ、ごめんね、未唯。用意してない」
「用意してない……」
「未唯の着てたスーツとブラウスはクリーニングに出したよ」
「………あの、せめて下着を……」
「男の家に女物の下着なんてあると思う?」
えっ、と、私、裸でいるしかないの……?
ぐるりと巻いたシーツだけじゃ心もとない。泣きそう。
ジッと宗さんを見ると、にっこりと笑ってて何も言えなくなる。
裸だと仕事行けない……。仕事……? ……!
「あっ、明日仕事っ!」
「職場には俺が連絡したよ。体調が悪いので一週間くらい休みますって」
「えっ、いや、あの、え?」
「というか、当分外には出さないよ。ごめんね、未唯。俺、本当に性格悪いんだ」
頭の中がハテナでいっぱいになる。
そんな、仕事って他人が休みを申告しても受理されちゃうの? なんてことだ。
当分外に出してもらえないって、私はそんなに悪いことをしたのだろうか。
不安になる。そこまで宗さんを怒らせてしまうなんて。
謝ったら許してもらえるのかな。
そう思って宗さんを見る。
「どうしたの、未唯」
宗さんはまるでどこぞの聖母のように微笑んで、私の頬を大きな手で包み込む。
あ、優しい。大丈夫そう。
「あの、私、宗さんに別れてください、って……ひっ!」
地雷だったらしい。宗さんの目が笑ってない。あの聖母の微笑みはどこに行ったの? 今は真逆の微笑みだ。こわい。
「ごめんね、未唯。未唯を恐がらせたいわけじゃないんだ。ほら、泣かないで」
「あの、でも、宗さん……」
「かわいい俺の未唯。俺が嫌い?」
いやむしろ好きだから困ってます。
ふるふると首を振ると、宗さんは嬉しそうに私を抱き締める。
私、裸なんだけどなっ!
恥ずかしくなって俯くと、宗さんはなおさら強く私を抱き締める。
というかかわいいとか言い過ぎ! どうしたの、もっとこうクールな宗さんはどこっ!
「あのね、未唯。俺は未唯のことが好きだよ、愛してる」
「ぅ、で、でも、それ、」
「なぁに、未唯」
「あっ、いや、なんでも、ない……」
それは妹には敵わないんでしょう?
そう言ってしまいそうになった口を慌てて閉じる。
家族にまで嫉妬するなんて、私の心は本当に狭い。
だいたい彼の妹は明るくてとてもいい子だ。お兄ちゃんが大好きなんだと言う家族思いの女の子。その上最上級の美少女。
シスコンになる気持ちもわかる。
私にも姉弟がいたらなにか違ったのだろうか。
それでも、きっと嫉妬する気持ちは抑えられなかった。
こんな私、宗さんにふさわしくない。
「未唯、なにを考えてる?」
「宗さん、私、やっぱり……」
宗さんと付き合えない。
そう言う前に宗さんが口を開く。
「……俺が悪いんだよね」
「えっ?」
思いもよらない言葉が出てきた。
「未唯とのデートも妹の頼みが断れなくて同伴させたり、初めてのセックスのときも未唯を置いて帰ったり、前からしてた約束も当日になってすっぽかしたり。しかも全ての理由に妹がいた。未唯が怒るのも無理ないと思う」
「あっ、ちがっ、」
「もうあいつにはよく言い聞かせたし、極力関わってこない。だけど、こんな俺の言葉信じられないよね……。俺なんて、未唯にふさわしくない……」
「そんなっ! 宗さんは私には出来すぎた恋人で、私のほうがふさわしくないっ!」
慌てて宗さんの言葉を否定する。宗さんが私にふさわしくないなんてありえない。逆だ。
宗さん、妹のこと気付いてたんだ。大事な妹を大事にできない私に呆れたわけじゃないの……?
大事な妹さんなのに、私を優先してよかったの……?
そんな気持ちがぐるぐるとまわる。
「まさか。俺は未唯じゃなきゃダメなんだよ。未唯は俺じゃなくても平気だろうけど」
「そんなことないっ! 私も宗さんじゃなきゃダメっ!」
「本当……? 嬉しい。じゃあ、未唯。俺と別れるって言葉は撤回でいいよね」
「え、あれ?」
「安心して。もう俺と未唯の間に入ってくる奴はいないから。……また俺と未唯の邪魔をするなら、温情はなしだ」
撤回……? それでいいの、かな?
いや、もちろん宗さんのことが好き。宗さんがいいなら別れたくなんてない。
あれ、じゃあ問題なんてないじゃない。
あと最後にぼそりと言った言葉がうまく聞き取れなかった。聞き返したほうがいいのかな。
そう思って口を開く前に、宗さんの口が開く。
「ああ、よかった、未唯。本当に、よかった。これからはいきなり別れるなんて言わないでね。今週は引っ越しの準備しようね」
「うん………んん?」
「ああ、その前に言わなくちゃいけないな」
宗さんが私から少しだけ距離をとって手を取る。
「未唯、俺と結婚してください」
「……はい?」
「嬉しい、未唯。これ、予約だけど。シンプルになったけど、未唯はそっちの方が好きだよね」
「えっ?」
そう言って左手の薬指にはめられる銀色の輪っか。
えっ? 宗さんを見る。微笑んでる。指輪を見る。キラキラ輝いてる。宗さんを見る。すごく嬉しそう。指輪を見る。
「あの、けっこんって、」
「やっぱり、俺は未唯にふさわしくない……?」
「あっ、や、そんなっ! 宗さんは私にはもったいないですっ!」
「よかった。愛してるよ、未唯」
あ、とかう、とか声にならない。
本当? これ、夢じゃない?
「あの、私も、宗さんのこと愛してます、うっ!」
「うん、嬉しい」
痛い、宗さん痛い。宗さんが私を抱き締めてくれるのは嬉しいけど、中身が飛び出そう。
宗さんが妹となにかあったのかはよくわからない。だけど、すごく幸せだからもういいや。宗さんが私を好きでいてくれるなら、それでもういいの。
「ずっと、一緒にいてくださいね」
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