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第3節 それぞれの葛藤
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10月22日
ー 南雲由実宅近く ー
10時50分
「池畑さん、この前葬儀に来たときは、南雲さん家行かなかったんですか?」
溝口が、スマホのナビアプリで南雲家までの道を調べながら池畑に聞いた。
「駅そばのセレモニーホールだったし、前後に仕事もあって家なんて行く暇もなかったよ。あ、この辺じゃないか?」
池畑が電柱に記載されている住所を見つけ、手帳に書いた南雲家の住所と見比べながら言った。
「そうっすね。…そういえば、今日はどんな感じで聞き取りしますか?」
「俺がやるよ。今日の目的は、南雲由実を恨んでいるような人物の手掛かりを見つけることだ。」
「自分ひとつ思ったんですけど、南雲由実さんを呪いで殺した人物って、桐生朱美以外の人物が濃厚ですよね。その人物がなんらかのきっかけで桐生の呪いの仕組みを知り、とにかく試してみたくて、たまたま目に留まった人間を写メして実験してみたって可能性は…。」
「ない!!」
池畑は溝口が全部言い終わる前に力強く否定した。
「いいか?佐倉が実験の時に言ってた事を思い出せ!このメカニズムには、熱エネルギーが必要なんだ。そのエネルギーってのは感情。要は死んでほしいって命令なら、それほどの本気の怨み憾みを持ってなきゃならない。
佐倉が言ってたろ?その対象の自我と戦うんだと。命を奪うような命令には、相手の抵抗も大きいってさ。だから、呪殺の対象は目に留まった程度の人間相手には無理だ。そんな人間に怨み憾みなんかないからな。」
「…ですよね。い、一応確認で聞いただけなんで、ちゃんとわかってますから。」
池畑は、お前一緒に実験立ち会ってただろう、という冷ややかな視線を畑に浴びせた。
溝口はその視線に気付いていながらも、必死に南雲の家を探すふりをして誤魔化していたら、たまたま家を見つけた。
「あ!ありましたよ池畑さん。」
池畑は溝口の肩をぽんっと叩き、南雲の家のインターフォンを押した。
直ぐに、由実の母親が引き戸の玄関を開けた。
「神奈川県警の池畑と溝口です。本日は捜査のご協力ありがとうございます。」
由実の母親は一礼すると居間に二人を案内した。居間には由実の父親がおり、二人を見るなり一礼し、着座を促した。
居間には仏壇があり、由実の遺影が飾られていた。それを見た池畑たちは、まず線香をあげさせてもらい、それから言われた席に着座した。
「今日はお時間ありがとうございます。私は神奈川県警の池畑、隣は溝口です。先日の由実さんの事件の担当をしています。」
「由実の父親の慧(さとる)と、母親の君枝(きみえ)です。本日は遠くからお越しいただきありがとうございます。由実は、最初は自殺だと言われ、その後解剖の結果で殺人事件になったと言われました。…正直、呪いによる殺人だと言われても、なかなか受け入れることができなくてですね…。」
慧は下を向きながら思っていることを素直に述べた。
「おっしゃられていることは充分理解できます。呪いによる殺人だなんて、すぐに納得することはできないですよね。」
「…あの子は、ここから埼玉に出て、もう5年になりますが、本当に親思いの子で…暇ができると、すぐに実家に帰ってきてくれて色々話をしてくれて…一人っ子なので、親の面倒は自分が見なきゃって…将来何があっても…お母さんたちの面倒は私が見るから…って…言ってくれてた…んです…。…だから、あの子が…最初、駅で飛び込み自殺したってのが…本当に信じら…れなく…て。」
君枝が、涙を交えながら話した。
由実の解剖を両親にお願いしたのは、課長の杉崎だった。監視カメラの映像からも、誰かに押されたり、眩暈等で急に倒れた様子でもなく、自分から飛び込んだようにしか見えなかった。
普通であれば自殺という結論で終わるはずだったが、両親からの話を纏めた報告書を見た杉崎が、両親に司法解剖の話をしたのだ。
電車に轢かれた遺体のため、人の形を保ってはいなかったので、慧は解剖についての理解を示さなかったが、杉崎は由実が誰かに殺された可能性を訴え、慧を納得させた。
ここに来る前に、池畑は杉崎に、何で由実の件が殺人だと確信したのかを聞いたが、長年の勘だとしか言ってはくれなかった。何はともあれ、杉崎の勘通り本当に殺人であることがわかり、池畑は感服した。
ー 南雲由実宅近く ー
10時50分
「池畑さん、この前葬儀に来たときは、南雲さん家行かなかったんですか?」
溝口が、スマホのナビアプリで南雲家までの道を調べながら池畑に聞いた。
「駅そばのセレモニーホールだったし、前後に仕事もあって家なんて行く暇もなかったよ。あ、この辺じゃないか?」
池畑が電柱に記載されている住所を見つけ、手帳に書いた南雲家の住所と見比べながら言った。
「そうっすね。…そういえば、今日はどんな感じで聞き取りしますか?」
「俺がやるよ。今日の目的は、南雲由実を恨んでいるような人物の手掛かりを見つけることだ。」
「自分ひとつ思ったんですけど、南雲由実さんを呪いで殺した人物って、桐生朱美以外の人物が濃厚ですよね。その人物がなんらかのきっかけで桐生の呪いの仕組みを知り、とにかく試してみたくて、たまたま目に留まった人間を写メして実験してみたって可能性は…。」
「ない!!」
池畑は溝口が全部言い終わる前に力強く否定した。
「いいか?佐倉が実験の時に言ってた事を思い出せ!このメカニズムには、熱エネルギーが必要なんだ。そのエネルギーってのは感情。要は死んでほしいって命令なら、それほどの本気の怨み憾みを持ってなきゃならない。
佐倉が言ってたろ?その対象の自我と戦うんだと。命を奪うような命令には、相手の抵抗も大きいってさ。だから、呪殺の対象は目に留まった程度の人間相手には無理だ。そんな人間に怨み憾みなんかないからな。」
「…ですよね。い、一応確認で聞いただけなんで、ちゃんとわかってますから。」
池畑は、お前一緒に実験立ち会ってただろう、という冷ややかな視線を畑に浴びせた。
溝口はその視線に気付いていながらも、必死に南雲の家を探すふりをして誤魔化していたら、たまたま家を見つけた。
「あ!ありましたよ池畑さん。」
池畑は溝口の肩をぽんっと叩き、南雲の家のインターフォンを押した。
直ぐに、由実の母親が引き戸の玄関を開けた。
「神奈川県警の池畑と溝口です。本日は捜査のご協力ありがとうございます。」
由実の母親は一礼すると居間に二人を案内した。居間には由実の父親がおり、二人を見るなり一礼し、着座を促した。
居間には仏壇があり、由実の遺影が飾られていた。それを見た池畑たちは、まず線香をあげさせてもらい、それから言われた席に着座した。
「今日はお時間ありがとうございます。私は神奈川県警の池畑、隣は溝口です。先日の由実さんの事件の担当をしています。」
「由実の父親の慧(さとる)と、母親の君枝(きみえ)です。本日は遠くからお越しいただきありがとうございます。由実は、最初は自殺だと言われ、その後解剖の結果で殺人事件になったと言われました。…正直、呪いによる殺人だと言われても、なかなか受け入れることができなくてですね…。」
慧は下を向きながら思っていることを素直に述べた。
「おっしゃられていることは充分理解できます。呪いによる殺人だなんて、すぐに納得することはできないですよね。」
「…あの子は、ここから埼玉に出て、もう5年になりますが、本当に親思いの子で…暇ができると、すぐに実家に帰ってきてくれて色々話をしてくれて…一人っ子なので、親の面倒は自分が見なきゃって…将来何があっても…お母さんたちの面倒は私が見るから…って…言ってくれてた…んです…。…だから、あの子が…最初、駅で飛び込み自殺したってのが…本当に信じら…れなく…て。」
君枝が、涙を交えながら話した。
由実の解剖を両親にお願いしたのは、課長の杉崎だった。監視カメラの映像からも、誰かに押されたり、眩暈等で急に倒れた様子でもなく、自分から飛び込んだようにしか見えなかった。
普通であれば自殺という結論で終わるはずだったが、両親からの話を纏めた報告書を見た杉崎が、両親に司法解剖の話をしたのだ。
電車に轢かれた遺体のため、人の形を保ってはいなかったので、慧は解剖についての理解を示さなかったが、杉崎は由実が誰かに殺された可能性を訴え、慧を納得させた。
ここに来る前に、池畑は杉崎に、何で由実の件が殺人だと確信したのかを聞いたが、長年の勘だとしか言ってはくれなかった。何はともあれ、杉崎の勘通り本当に殺人であることがわかり、池畑は感服した。
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