【R18】真昼の月〜警護SP×恋 至上最悪の出逢い〜

斎藤みはる

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4.既成事実

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一瞬返答に困ったが、そろりと首を左右に振って男の眼を見つめた。

「嘘をつくな」

男が手を離してまた、はあと溜め息をつく。

やるせないのはどう転んでもこちらの方なのに。
そんなにあからさまに何度も溜め息なんかつかれたら、もっと泣きたくなってくる。

「…こんな急に、知らないとこに拉致られてきて…会ったばかりの見ず知らずの男に素っ裸にされて…」

そう言いながらふと目を伏せた。

どんなに恥ずかしくても、腕を頭上で押さえ付けられていては広げられた浴衣の中で裸体を隠すことすらできない。

「…意味も分からないまま身体を差し出せって言われても、すんなりそうですかなんて言えるわけない…」

まだ経験したことのない行為に対する、純粋な恐いという感情と、自分の置かれている状況がよく分からない不安とが一緒くたになって、私の中に渦巻いている。

男は何も言い返すこともせずに、じっと私を見つめていた。
多少は同情もしているのかもしれない。
でも私の手を押さえ付ける男の腕は、一向に緩みそうにはない。
やっぱり逃れることはできないんだと、改めて強く思った。

「こんなことになるんだったら彼氏の一人や二人ぐらい作っておくんだった。私、友達はいないけど、これでも顔は悪くないし勉強だって怠らないし、運動だって休んだことがない。モテるんだからね!」

別に男に向けて言ったわけではなかった。
ただあまりの現実にぐらついてしまいそうで、思ったことでも口にしていないとおかしくなりそうなのだ。

男は尚も無言のまま私を見下ろしている。
その飄々とした表情が悔しくて、ふいと横を向いた。

「…初めてぐらい好きな人とがよかった…」

そっぽを向いたままぽつりとそう本心を呟いてみると、不覚にも涙が溢れた。

何で私がこんな目に遭わなきゃいけないんだろう…?
恋愛への憧れは、人並み以下かもしれない。
だけど、それでも愛や感情のないセックスなんかしたくない。

零れた涙が頬を伝ってシーツを濡らす。

「…悪いな。お前に個人的な恨みがある訳じゃないが、どうしても見逃してやることはできない」

男の言葉の中に、今までとは違ってはっきりと同情の念が感じ取れると、いよいよ嗚咽混じりに、涙が零れ出した。

「嫌なの!どうしても嫌なの…覚悟も何もできてないのに、こんな風に失いたくない…」

「……………」

男は無言ですらあったが、さっきまでの覇気は失われていて、無理に手を進めようとはしなかった。

「…どうしてもしなきゃダメ?結婚は何とか前向きには考える!だからせめて初めては、その是匡って人に会って、ちゃんと好きになってから彼に…」

「そんな悠長なことを言っている時間はない」

男が私の言葉を遮って、静かにそうとだけ告げた。

「え?」

「…是匡には、もうあまり時間は残っていない。五条院家の当主として生を受けた者は、代々幼少期から身体が弱く短命で、運動や外出はもちろん、子を成す行為すらも体力を大量に消費してしまう」

「さっきはそんなこと一言も…」

「この事実が明るみになれば、家名存続の危機に繋がり兼ねないために、ずっと伏せられている。本来なら、まだお前にも伏せていなければいけないことだ」

「つまり、これって…」

「家名を絶やさぬため、五条院家としては当主存命のうちに、何としても子孫を残さなければならない。しかし是匡の体力的に、そう何度も行為に及ぶことは命取りになる。ましてやこんな風に直前で駄々をこねられたり、暴れたりされては率直に困る。つまりは、いつでも円滑に子を為せるようしておくためだ」

「だったら、他にも方法はあるでしょ?わざわざヤらなくても人口受精とかいろいろ…」

「それは是匡の意思だ。きちんと妻となる人間とは言葉を交わし、心を通わせ、愛情の上で子を授かりたいと。是匡も人の温もりを知らぬまま、この世を去りたくはないのだろう」

「そんなのそっちの都合ばかりじゃない?私の気持ちは?状況は分かったけど…こんなの…あんまりだよ」

「同情はする。でも分かったら、もう諦めてくれ。大杉家の娘として生まれた瞬間から、全ては決まっていたことだ」

「見逃すって手は、あなたにないんでしょ?」

「…ない」

きっぱりとそう告げられて、やっと自分の立場を理解できた気がした。

ああ、私の生きてきた理由はこれだったのか。
このために生かされていたのか。

いろんな感情が押し寄せてきて、一気に目から涙が止めどなく溢れ出して、止まらなくなった。

「…逃げられないのは、もうよく分かったから、せめて…ひどくはしないで」

男は頷きすらしなかったが、涙を両手で拭っている私をしばらくじっと見つめていた。

「努力はする」

そう言って、男が急に私の膝を割ったかと思うと、もう一度指を脚の間にそっと這わせた。

膣内なかはないにしても、ここを自分で触ったことぐらいはあるだろう?」

一番敏感な部分の尖端を不意に触れられて、ビクッと脚に力が入る。
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