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三章 消えた精霊王の加護
閑話 警戒すべきもの
しおりを挟む※クゥ視点のはなしになります
『僕はあと少しで愛し子を守るだけの力を失ってしまう…。だから僕の代わりにあの子を守って…』
クゥは精霊王に生み出されてから長年共に過ごした人間の友人がいた時期はあったが一度も契約をしたことがない精霊だった。
クゥは何百年昔か忘れたが人間の友人と別れてからはずっと自由気ままに美味しそうな木の実を食したり手頃な巣穴を見つけて好きなだけ寝る生活を続けていたある日『愛し子』がこの世界に戻ってきた気配を感じた。
それからすぐ精霊王から『愛し子』を守るよう頼まれた。
『愛し子』は精霊王の魔物を寄せ付けにくくする『精霊王の加護』を精霊界から贈られ精霊だけでなく精霊王からも守られている。
理由は不明だが精霊王は加護を贈るだけの力を失いつつあるのはクゥにも分かった。
精霊王の力が回復するまでの間『愛し子』が無事とは限らないので他のクゥと同時に生まれた精霊達も精霊王に同じことを頼まれているだろうとクゥは思った。
精霊と契約した魔法使いは様々な用途で精霊を使役する。
それは今までこの世界で生まれた『愛し子』達も同様だ。
誰かの為に精霊の力を借りる者
悪しき者に騙され道具として使われてしまった者
誰かを傷つける為に精霊の力を使った者
そのような者達をクゥは今までたくさん見てきた。
クゥは自分の意思と関係なく自分勝手な性格の者とは契約をしたくはなかったので異世界から帰ってきた『愛し子』と会ってからクゥは契約するかどうか決めることにした。
『愛し子』はクゥが思っていたより近くの街にいた。
黒い髪でとても小さな女の子だった。
友人だった者と同じ黒い髪、クゥは懐かしくなり女の子の近くにもっと行きたくて建物の窓を叩いて女の子に窓を開けてもらい建物の中に入って行った。
「きみは飼われていたの?すごくいい毛並みだねー」
こうして出会ったのがエイリだった。
『愛し子』としての魔力の質、魔力の波長の相性も抜群だっただけでなくエイリの笑顔が可愛かったのでクゥはエイリと契約したのだ。
「クゥー、プリンをつくったけど食べる?」
「ピューィ♪(たべるー♪)」
契約してからエイリは毎日美味しい手料理をクゥにも分けてくれた。
クゥが特に気に入ったのはプリンというプルプルしたお菓子だ。
このプリンの味は昔クゥの友人が作ってくれたカスタードクリームという物に似ていた。
友人は魔力を持っておらずクゥが魔法を使う代わりに材料が揃えばクゥの好物のカスタードクリームを作り食べさせてくれた。
クゥはまたカスタードクリームが食べたくてエイリにお願いしたがまだ精霊の声を聞くことが出来ないようだったのでこれが食べられるのはまだ先のようだ。
クゥはただエイリの手料理を食べてばかりいるわけではない。
クゥの精霊としての仕事はエイリが持っていた携帯電話という魔道具のような物に電気を貯めたり、エイリの気が済むまで毛皮を堪能させたりエイリの身を守ることだ。
エイリが持っていた携帯電話という物は友人も持っていて同じことをしたことがあるので難しくはなかった。
毛皮を触らせるのもエイリはクゥが好むツボを心得ていたので気持ちのいいものだった。
エイリには幼い精霊だけでなく様々なもなが近づいてくる。
外に出る魔物などはエイリの父親とギルドの団員達に任せクゥは本当にエイリの目につく範囲にいるものに対して目を光らせるようにした。
その中でも『アイツ』等にクゥは警戒していた。
一つはエイリがクロと名付けた黒い狼だ。
クロはエイリにくっ付くように行動しており、普段団員達に作っている料理とは別の特別メニューをエイリが用意するのにクゥが嫉妬していたのもあるがクロからおかしな気配をクゥは感じていた。
クロからはただの動物ではない気配が混じっていたからだ。
だが、エイリはクロを気に入っているのでこれ以上クゥは危害を加えないことにした。
クゥはエイリの悲しむ顔を見たくはなかったからだ。
それにクロ以上に警戒すべき者がクゥにはいる。
その者は今住んでいる町にあるパン屋の息子ミクロだ。
ミクロはエイリが可愛がっている少女達を悪口で泣かせただけでなくエイリにも悪口を言った。
エイリはミクロと他の2人の少年達に言い返して追い払い、悪口は特に気に留めていないようだったがクゥはミクロと他の2人が許せなかった。
その3人に対して幼い精霊達も怒っていた。
エイリは優しい少女だからその3人に怪我をさせるようなことは望んでいないだろう。
なのでクゥはこの3人がエイリを泣かせようものならば精霊達と一緒に報復して泣かせてやろうと検討していた…。
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