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⑥光と影そしてオカリナ[06狼少年未来録]
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※連載枠・狼少年未来録
⑥光と影そしてオカリナ[06狼少年未来録]
作者・影山 彰
朝一、そのままホテルからタクシーで大学病院へ向かった、病室に入って最初に目にした光景はベットから上半身を起こして先に到着した横に立つ瀬田さんともう普通に何やらの会話をしている妻の姿だった(恐らく朝食の内容)その光景は少し意外で脅威の回復力を感じ…同時に昨日みた不思議な夢の真実性も感じた…妻は私に気づき私の顔を見るなり、
「よっ!あんた誰だっけ?」
「!!!!」
私は焦った『マジか~出たよ。記憶喪失(汗)』
目を伏せて暗い顔をしている瀬田さんに確認した…
「記憶は無いのか?」
瀬田はゆっくりと頷いた……
その時、瀬田さんが「クックックっハハハ」と急に笑いだした?
そして妻が再び口を開いた、
「うそよ、わかるわよ、彰ちゃん!」
(色んな意味でお変わりは無い様で安心した、でも瀬田さん迄、からかいに参加して……まぁ今日はめでたいので許す!)
そして……
年齢のわりには少し幼い妻の声を久しぶりに聞き何か込み上げて来る物を感じ、私はまた泣いてしまい、
妻はそんな私を見て、
「泣くな男だろ、家に帰るよ」
「ああー帰ろう」
その時、瀬田さんが口を開き、
「水を差す様だけど少しリハビリと検査が必要みたいだから一月は退院は無理みたい」
「そ、そうか、そうだな、無理はいけない、ゆっくりでいい、家の事で整理する事もある(愛人……汗)」
妻は残念そうだったけど笑っていた。
(子供の事は妻が触れないので取り敢えずは何も言わない事にした……)
別室で医師の説明を受け、妻は今朝には『お腹が減った』と言いだし。お粥を普通に食べれたそうだ、消化器官も普通に機能しているみたいで見た目では後遺症も無く、担当してる医者は稀にこの様な奇跡が起きる事があるとの説明をし、要は原因はよく解らないみたいで首を傾げていた。
その後は少し遅くなったランチを取るため病院内のレストランに瀬田さんと入る事にした、店内はランチ時間は過ぎでおり閑散とした雰囲気で客は私達2人だけだった、適当に軽食を頼み、少し雑談を始めた、瀬田さんは最初は会話をしていたけど徐々に俺の問いかけに対して反応が鈍くなり食事が来たら「食べましょう」と一言、言って後は余り喋らなく成り、黙々とサンドイッチを口に運んでいた……疲れてるのかな~と少し顔を見ていたら、
「うん、どうしたの?」
と反対に聞かれて、
俺は「あーいえー」と濁した……
何かその時の瀬田さんとは会話がしずらく、少し怒っている様な……(唯一俺が妻、意外に気兼ね無く話せる相手なのに……)
そして瀬田さんとタクシーに相乗りし帰宅する運びとなった。
🛣️
瀬田さんはタクシーを降りる時、背を向けたまま、
「ねぇ……彰君……少し寄ってお茶飲んでいかない?」
「そうしたいけど、今日は早く帰って美砂と話し付けたいんで、またで」
「……そう……彰君、本当に良かったね」
と言ってくれた、
「瀬田さん、色々ありがとう」
「気にしないで私達……ずーと友達でしょこれからも……
「うん、これからも頼むよ、瀬田さんも何かあったら遠慮なく言ってよ」
「何かあったらか……彰君その言葉、覚えておくわ」
と瀬田さんは独り言の様に呟き、振り向かずにマンションのロビーの中に入っていってしまった……瀬田さんはやはり疲れているのかなと感じた……
そして夕方前には家に戻り……
玄関前には愛人で妻より少し背の高い黒髪の美砂が黒いワンピース姿で私を待つ様に立っていた……俺は覚悟を決めた。
「お帰りなさい、あなた」
「ただいま、少し話があるんだが、いいかな」
「その前に今朝、猫が死んだわ、時命ね……寝床でそのまま……」
美砂に案内され場所は庭の角だった。
「貴方がいつ戻るか解らなかったから直ぐに此処に埋めたわ、文句はないでしょ」
「ああ、ありがとう、手間かけたな」
「どういたしまして」
手を合わせた……
後ろに立つ、美砂は口を開いた、
「話しあるんでしょ……中に入りましょ……」
勘のいい彼女は何かを察してる見たいだった、
彼女には少し霊感が備わってる様に感じる……
リビングの中は少し薄暗く……この家は森に囲まれている影響で天気や陽の辺り具合に寄っては姿が陰陽・裏表に切り替わる感じがする……妻が入院してから更にそれを強く感じる様になった……今は陰の感じがする……
そんな陰な空間のリビングで私を少し睨んでいる様にも思える、美砂と立った状態で向き合い、瀬田さんも帰りのタクシーの中で助言はしてくれたが、私も変な言い訳みたいな言い回しはしない方が良いと思ったのではっきりと、
『妻が昨晩、目を覚ましたリハビリを終えたら帰って来るから別れてくれ』と率直に告げ慰謝料も払う事を告げた……
彼女は一回溜め息を尽き、
「そう、良かったわね……本当に……わかったわ、折角だけど慰謝料は要らないわよ、ただの愛人だし」
「え」
怒ると思っていた彼女のその素っ気ない返事に拍子抜けしたと同時に安心した。
「私しは影よ、光には勝てないわ、光が消えればあなたも諦めて私が奥さんの代わり慣れたかも知れないけど、それも無いみたいだから潔く去るわ……でもね、孤独で影を抱えた貴方の姿は素敵で好きだったわよ、今よりね」
少し間を置いて彼女は、
「奥さん…いえ姉と別れて私と一緒にはなれないの?」
と見つめてきた…
「え!」
「そう私の姉と」
「どう言うことだ!」
「……」
「全部話してくれ!」
「この際だし、私もハッキリさせたいし、いいわよ」
彼女はテーブルの縁に片手を着き、淡々と話し始めた……
「私しは妹よ、貴方の事を姉から送られて来た写真では知ってたわ、そして姉が倒れてほぼ回復の望みは無いと聞いてチャンスだと思ったわ、貴方とこの広い家を取るね。それから少し悪いけど貴方の周辺の事を少し調べさせてもらって、そして偶然を装い貴方がよく行くBARで声をかけ、偽名を使い近づいたのよ…姉が亡くなれば後はどうにでも成ると思ってね。姉が亡くなる迄待たずに貴方と身体的関係を持つ事に急ぐ必要もあったわ……姉の分身の様な、
いえ、姉の足りない所を補填した様な、あの教員の瀬田って言う賢い女が少し気になってね、少し機会があって貴方に声をかけたBARで彼女と話す事ができたから貴方の事を少し鎌をかける様に聞いたら上手くかわしてたけど確信したわ、姉の次に来るのは……私の前に立ちはだかるのはこの女だって、私の事も何か疑っていたわ、だから先を越されないように急いだのよ、でも結局は大失敗……私の本名は仙 麻美……貴方の強い思いが何かを動かし奇跡を起こしたのかもね……」
美砂はテーブルに着いている手の二の腕の辺りをもう片方の腕で掴み、口調が少し感情的に強くなった様に変わり、更に話を続けた……
「私には、私には私を邪魔扱いして突っ突いてくるオカリナや神様はいても味方はいないのにね、貴方に味方した何かだって、裏で泣く私がいる事には気にもかけないし、知らないのよ……
でもあの猫だけは懐いてくれたわ…オカリナも追っ払ってくれた事もあったわ、
最後は鉢を割った事を私があの子のせいにしたから嫌われて裏切られちゃったのかも知れないけど……自業自得ね……」
それから彼女は目を閉じ少し間を置いたら目を開き何か決心した様に力強く話しかけてきた、
「もう一回聞くわ、姉と別れて私と一緒になって!」
私は無言で首をゆっくり一回、横に振った……迷いは無い。彼女が私との先の事を思って、覚悟を持ち打ち明けてくれた事とは思うけど妹と聞いたら尚更だった。
「そう……これで本当に諦めがついたわ……金魚鉢、割って悪かったわね、幼い時から私の好きな人や物を平然と自然に奪い去ってゆく姉……そう寝てるのに、もう必要ないのに、それでも尚も私には何も譲らない姉に怒り嫉妬したのよ……もう貴方にも姉にも会う事は無いわ、言うまでも無いことだけど私との関係は内緒にね、私も地下迄持って行くわ、貴方は元々何も知らない事だったから罪は無いし罪悪感を持つ必要は無いわ。私は放置している本来の家のある故郷の淡路に帰るわ、此処とは比べ物にも成らない程の小さい古家だけど……」
「……」
顔を伏せてる彼女がまた私の事を見つめてきた、それに少し動揺した……
「後一つだけいいかな?」
「うん……なんでも言ってくれ」
「……私が言うべき事かどうかは解らないけど瀬田が数年以内に貴方と姉の間に入って来る可能性は十分にあるわ、悪い意味でね、あの女は狡猾よ、そして本気なったら怖いわよ、その時に私が身を引いた事も無駄にならない様に気おつけてね、姉の為じゃなく、好きな貴方の為に言っとくわ……もし貴方が姉を捨てる様な事をしたらその時は私は…自身の為に戻って来るわよ……じゃ本当にさようなら……」
「……」
俺は後は何も言えなかった、騙されてたとしても彼女を一時的に心の穴埋めに利用したのも確かだったし一番辛い時は本当に助かった……そして一時は全てを諦めて彼女(美砂)を選ぼうとした……後、彼女の最後の忠告は瀬田さんに限ってそんな事は信じられないけど心の隅には置いて置こうと思った……
彼女が買ってきた黒デメキンはまだ元気に鉢で泳いでいた……そして赤い鮮やかな色をした金魚も新たに入れられていた……
🪺
一月後、雲一つない良く晴れた日の午後、無事退院した妻は森の中の我家に戻ってきた、家の中に入るなり、一言「やっぱり家はいい落ち着くー」と家の中を凄い回復力で新築の家に越して来た子供の様に落ち着きなく走り回り、そして机の上に置いてあった小説が書かれた原稿を眺め、
「あれれ私が書いた記憶が無い物語が書いてある~なんで?」
と私を見つめてきた。
「小説なんだけどお前を感じたくて眺めていたらいつの間にか勝手に引き継いで書いてしまっていた……ごめん! まだ投稿はしてないから嫌なら放棄してくれ、いや捨ててくれ、それは君の物語だ」
「ふーん、別に良いよ、合作で。君の影響も受けて書いてた部分もあった小説だったし、それに結構面白いし」その時、妻が餌付けしていたカナリアが窓からリビングに入って来て妻の頭に溜まり前の様に華やかに鳴いたー♪
「お~お前か♪久しぶり」
妻は手の甲にカナリアを乗せて頭を優しく指で撫でていた……その姿に私は幸せを感じ長い悪夢であった夜が明け、毎日降り続けてる様に感じていた心の中の雨も上がった気がした。
「今日のご飯は唐揚げにしよう」
と妻はカナリアの頭を撫でながら言った『今それ言う!』
(このオカリナは彼女にだけ懐いている、美砂はよく突っ突かれていた、私は一応は認められてる見たいだ、そういえば……瀬田さんもよく突っ突かれていた・汗)
そして全ての責任は自分にある事を感じ心に影が差したがすぐにもう後ろ向きに考える事はけしてしない様に心に誓った。
妻のフリをし、嘘つきで狼少年の私が題名まで付け、少し加筆した、その小説はその後、妻の手で再び再開し今も続いている、
妻いわく今、書いている物語は先日に亡くなった黒猫がモデルとして登場してる事ともあり、淋しいと言う理由でしばらくは終わらせる気は無いとの事だ。私もたまぁにアイデアを出している、大半は没にされるけど……
拝啓、
毎年、蝉の鳴き声が聞こえてくると、あの夏の日の、夢の様な不思議な体験を今も思い出す……敬具
作者・彰
[狼少年未来録・完結]
登場人物
主人公の青年 影山 彰
同居人の女性 津島 美砂(偽名)
妻 仙 岳美
妻の友人 瀬田 鳴海
関連作品
①グローム(作・彰)
②【孤独と真の孤独】(作・仙)
③傘と心の鍵(作・仙)
④金魚鉢(作・彰)
⑤運命の渦と未知の使者(作・彰)
⑥光と影そしてオカリナ(作・彰)
リンク短編シナリオ
⑦【まよいが】(作・仙)
⑧【青年呪術師】(作・仙)
⑨3級・メフィスト(作・彰)
=解説と後書き=
物語がややこしいのでシリーズの繋がりを解説します。(最近、自信で読み返したら私の小説は説明しないと理解はまず難しいと思いましたので)
※蝉と少女(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※師の教えと狼少年(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※〈師の狼少年・外伝録〉(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※狼少年現代録(右3作品の作者(仙岳美)が自分の事を創作も交えての自伝・完結)
※狼少年未来録(創作)他リンク3作品。
※※重要・あくまで[未来録]は[現代録]の続きの話しでは無く(そう見えますが)半自伝の[現代録]を書く作者を含む物語を物語(未来録)の中の物語として見た視点での創作世界。
(※作者は現代の現在で残念ながら独身ですしね)
[孤独と真の孤独]他リンク3作品は現代録と未来録では少し見方が変わって来ます。
[孤独と真の孤独][まよいが]は、
[現代録]では半ノンフィクション。
[未来録]ではノンフィクション。
[青年呪術師]は[現代録]と[未来録]両方の世界で半ノンフィクション。
残りの[3級メフィスト]は[現代録][未来録]の劇中では共に完全フィックション作品。
[3級メフィスト]の作者は[未来録]では影山 彰に変更。(引き継いで青年呪術師の続編を書いた設定)
[現代録]の作者である妻(仙岳美)から小説を引き継いだ孤独な青年この青年(彰)は[孤独と真の孤独]に登場した青年であり未来録では※※再開し結婚している設定、更にこの青年は[蝉と少女]の合作作者の設定)の物語。
ちなみに瀬田鳴海は※現代録・※未来録、両作品で仙岳美の友人の設定で登場しているキャラクター。
総じて現代録は読者及び私の世界ではリアルをネタにした半創作自伝であり、未来録の中での[現代録]は完全なる創作品扱いとなります。……重複しますが、もう少し詳しく説明を説明させていただきますと現代録が物語の中の未来録の世界から見たら完全創作、そして読者やのリアルの次元から見たら半創作、この曖昧な作用で読者の頭の中を良い意味で混乱させ小説の世界に入り込んだ気分にさせる作用を狙った物であります(俺は騙されないぞと言われ方、まぁそう言わずに付き合ってくれると嬉しいです)
話しは少し飛びますが……
なおこのシリーズの小説は作者が三代怪奇小説と言われている、『黒死館殺人事件』・『ドグラ・マグラ』・『虚無への供物』の3作品に憧れ(遠く及びませんが)また物語の最終話を読み終わった時の寂しい感覚がヤデ読み終えた後も心に余韻というか、読書後もリアルに繋がりみたいな物が残せる小説を書けるのかと模索し(途中から欲だしてね)小説と現実の脳内融合(意味不明)を目指し、この取り組みを実現させるのに読者をも物語の中に引入れる必要があり、またそうしたかったので読者と物語の繋ぎに成り得る主役を架空の設定キャラでは無く、読者とリアルで繋がっている『ヤラシイ意味じゃ無くて』作者にする必要がありました(ナルシストとと言われる覚悟で)
この事から未来録の世界から見たら現代録側の読者の方も作者も共にこのシリーズの物語の中の登場人物の1人に成る者だと私しは思います、そして小説の世界に精神的には入れたものと思います。(少し強引)ただし内容はシリーズ全てにおいてリアルの体験を参考にはしてますがほぼ創作と思って下さい、どこまでがフィクションでまたどこがノンフィックションなのかは?それは読んだ方への問いとして残しておきます。
私し自信はある意味で目指していた通りの複雑怪奇なシリーズ小説になってくれた作品であると思います。
最後に、
書き終える事が出来て良かったです~。
⑥光と影そしてオカリナ[06狼少年未来録]
作者・影山 彰
朝一、そのままホテルからタクシーで大学病院へ向かった、病室に入って最初に目にした光景はベットから上半身を起こして先に到着した横に立つ瀬田さんともう普通に何やらの会話をしている妻の姿だった(恐らく朝食の内容)その光景は少し意外で脅威の回復力を感じ…同時に昨日みた不思議な夢の真実性も感じた…妻は私に気づき私の顔を見るなり、
「よっ!あんた誰だっけ?」
「!!!!」
私は焦った『マジか~出たよ。記憶喪失(汗)』
目を伏せて暗い顔をしている瀬田さんに確認した…
「記憶は無いのか?」
瀬田はゆっくりと頷いた……
その時、瀬田さんが「クックックっハハハ」と急に笑いだした?
そして妻が再び口を開いた、
「うそよ、わかるわよ、彰ちゃん!」
(色んな意味でお変わりは無い様で安心した、でも瀬田さん迄、からかいに参加して……まぁ今日はめでたいので許す!)
そして……
年齢のわりには少し幼い妻の声を久しぶりに聞き何か込み上げて来る物を感じ、私はまた泣いてしまい、
妻はそんな私を見て、
「泣くな男だろ、家に帰るよ」
「ああー帰ろう」
その時、瀬田さんが口を開き、
「水を差す様だけど少しリハビリと検査が必要みたいだから一月は退院は無理みたい」
「そ、そうか、そうだな、無理はいけない、ゆっくりでいい、家の事で整理する事もある(愛人……汗)」
妻は残念そうだったけど笑っていた。
(子供の事は妻が触れないので取り敢えずは何も言わない事にした……)
別室で医師の説明を受け、妻は今朝には『お腹が減った』と言いだし。お粥を普通に食べれたそうだ、消化器官も普通に機能しているみたいで見た目では後遺症も無く、担当してる医者は稀にこの様な奇跡が起きる事があるとの説明をし、要は原因はよく解らないみたいで首を傾げていた。
その後は少し遅くなったランチを取るため病院内のレストランに瀬田さんと入る事にした、店内はランチ時間は過ぎでおり閑散とした雰囲気で客は私達2人だけだった、適当に軽食を頼み、少し雑談を始めた、瀬田さんは最初は会話をしていたけど徐々に俺の問いかけに対して反応が鈍くなり食事が来たら「食べましょう」と一言、言って後は余り喋らなく成り、黙々とサンドイッチを口に運んでいた……疲れてるのかな~と少し顔を見ていたら、
「うん、どうしたの?」
と反対に聞かれて、
俺は「あーいえー」と濁した……
何かその時の瀬田さんとは会話がしずらく、少し怒っている様な……(唯一俺が妻、意外に気兼ね無く話せる相手なのに……)
そして瀬田さんとタクシーに相乗りし帰宅する運びとなった。
🛣️
瀬田さんはタクシーを降りる時、背を向けたまま、
「ねぇ……彰君……少し寄ってお茶飲んでいかない?」
「そうしたいけど、今日は早く帰って美砂と話し付けたいんで、またで」
「……そう……彰君、本当に良かったね」
と言ってくれた、
「瀬田さん、色々ありがとう」
「気にしないで私達……ずーと友達でしょこれからも……
「うん、これからも頼むよ、瀬田さんも何かあったら遠慮なく言ってよ」
「何かあったらか……彰君その言葉、覚えておくわ」
と瀬田さんは独り言の様に呟き、振り向かずにマンションのロビーの中に入っていってしまった……瀬田さんはやはり疲れているのかなと感じた……
そして夕方前には家に戻り……
玄関前には愛人で妻より少し背の高い黒髪の美砂が黒いワンピース姿で私を待つ様に立っていた……俺は覚悟を決めた。
「お帰りなさい、あなた」
「ただいま、少し話があるんだが、いいかな」
「その前に今朝、猫が死んだわ、時命ね……寝床でそのまま……」
美砂に案内され場所は庭の角だった。
「貴方がいつ戻るか解らなかったから直ぐに此処に埋めたわ、文句はないでしょ」
「ああ、ありがとう、手間かけたな」
「どういたしまして」
手を合わせた……
後ろに立つ、美砂は口を開いた、
「話しあるんでしょ……中に入りましょ……」
勘のいい彼女は何かを察してる見たいだった、
彼女には少し霊感が備わってる様に感じる……
リビングの中は少し薄暗く……この家は森に囲まれている影響で天気や陽の辺り具合に寄っては姿が陰陽・裏表に切り替わる感じがする……妻が入院してから更にそれを強く感じる様になった……今は陰の感じがする……
そんな陰な空間のリビングで私を少し睨んでいる様にも思える、美砂と立った状態で向き合い、瀬田さんも帰りのタクシーの中で助言はしてくれたが、私も変な言い訳みたいな言い回しはしない方が良いと思ったのではっきりと、
『妻が昨晩、目を覚ましたリハビリを終えたら帰って来るから別れてくれ』と率直に告げ慰謝料も払う事を告げた……
彼女は一回溜め息を尽き、
「そう、良かったわね……本当に……わかったわ、折角だけど慰謝料は要らないわよ、ただの愛人だし」
「え」
怒ると思っていた彼女のその素っ気ない返事に拍子抜けしたと同時に安心した。
「私しは影よ、光には勝てないわ、光が消えればあなたも諦めて私が奥さんの代わり慣れたかも知れないけど、それも無いみたいだから潔く去るわ……でもね、孤独で影を抱えた貴方の姿は素敵で好きだったわよ、今よりね」
少し間を置いて彼女は、
「奥さん…いえ姉と別れて私と一緒にはなれないの?」
と見つめてきた…
「え!」
「そう私の姉と」
「どう言うことだ!」
「……」
「全部話してくれ!」
「この際だし、私もハッキリさせたいし、いいわよ」
彼女はテーブルの縁に片手を着き、淡々と話し始めた……
「私しは妹よ、貴方の事を姉から送られて来た写真では知ってたわ、そして姉が倒れてほぼ回復の望みは無いと聞いてチャンスだと思ったわ、貴方とこの広い家を取るね。それから少し悪いけど貴方の周辺の事を少し調べさせてもらって、そして偶然を装い貴方がよく行くBARで声をかけ、偽名を使い近づいたのよ…姉が亡くなれば後はどうにでも成ると思ってね。姉が亡くなる迄待たずに貴方と身体的関係を持つ事に急ぐ必要もあったわ……姉の分身の様な、
いえ、姉の足りない所を補填した様な、あの教員の瀬田って言う賢い女が少し気になってね、少し機会があって貴方に声をかけたBARで彼女と話す事ができたから貴方の事を少し鎌をかける様に聞いたら上手くかわしてたけど確信したわ、姉の次に来るのは……私の前に立ちはだかるのはこの女だって、私の事も何か疑っていたわ、だから先を越されないように急いだのよ、でも結局は大失敗……私の本名は仙 麻美……貴方の強い思いが何かを動かし奇跡を起こしたのかもね……」
美砂はテーブルに着いている手の二の腕の辺りをもう片方の腕で掴み、口調が少し感情的に強くなった様に変わり、更に話を続けた……
「私には、私には私を邪魔扱いして突っ突いてくるオカリナや神様はいても味方はいないのにね、貴方に味方した何かだって、裏で泣く私がいる事には気にもかけないし、知らないのよ……
でもあの猫だけは懐いてくれたわ…オカリナも追っ払ってくれた事もあったわ、
最後は鉢を割った事を私があの子のせいにしたから嫌われて裏切られちゃったのかも知れないけど……自業自得ね……」
それから彼女は目を閉じ少し間を置いたら目を開き何か決心した様に力強く話しかけてきた、
「もう一回聞くわ、姉と別れて私と一緒になって!」
私は無言で首をゆっくり一回、横に振った……迷いは無い。彼女が私との先の事を思って、覚悟を持ち打ち明けてくれた事とは思うけど妹と聞いたら尚更だった。
「そう……これで本当に諦めがついたわ……金魚鉢、割って悪かったわね、幼い時から私の好きな人や物を平然と自然に奪い去ってゆく姉……そう寝てるのに、もう必要ないのに、それでも尚も私には何も譲らない姉に怒り嫉妬したのよ……もう貴方にも姉にも会う事は無いわ、言うまでも無いことだけど私との関係は内緒にね、私も地下迄持って行くわ、貴方は元々何も知らない事だったから罪は無いし罪悪感を持つ必要は無いわ。私は放置している本来の家のある故郷の淡路に帰るわ、此処とは比べ物にも成らない程の小さい古家だけど……」
「……」
顔を伏せてる彼女がまた私の事を見つめてきた、それに少し動揺した……
「後一つだけいいかな?」
「うん……なんでも言ってくれ」
「……私が言うべき事かどうかは解らないけど瀬田が数年以内に貴方と姉の間に入って来る可能性は十分にあるわ、悪い意味でね、あの女は狡猾よ、そして本気なったら怖いわよ、その時に私が身を引いた事も無駄にならない様に気おつけてね、姉の為じゃなく、好きな貴方の為に言っとくわ……もし貴方が姉を捨てる様な事をしたらその時は私は…自身の為に戻って来るわよ……じゃ本当にさようなら……」
「……」
俺は後は何も言えなかった、騙されてたとしても彼女を一時的に心の穴埋めに利用したのも確かだったし一番辛い時は本当に助かった……そして一時は全てを諦めて彼女(美砂)を選ぼうとした……後、彼女の最後の忠告は瀬田さんに限ってそんな事は信じられないけど心の隅には置いて置こうと思った……
彼女が買ってきた黒デメキンはまだ元気に鉢で泳いでいた……そして赤い鮮やかな色をした金魚も新たに入れられていた……
🪺
一月後、雲一つない良く晴れた日の午後、無事退院した妻は森の中の我家に戻ってきた、家の中に入るなり、一言「やっぱり家はいい落ち着くー」と家の中を凄い回復力で新築の家に越して来た子供の様に落ち着きなく走り回り、そして机の上に置いてあった小説が書かれた原稿を眺め、
「あれれ私が書いた記憶が無い物語が書いてある~なんで?」
と私を見つめてきた。
「小説なんだけどお前を感じたくて眺めていたらいつの間にか勝手に引き継いで書いてしまっていた……ごめん! まだ投稿はしてないから嫌なら放棄してくれ、いや捨ててくれ、それは君の物語だ」
「ふーん、別に良いよ、合作で。君の影響も受けて書いてた部分もあった小説だったし、それに結構面白いし」その時、妻が餌付けしていたカナリアが窓からリビングに入って来て妻の頭に溜まり前の様に華やかに鳴いたー♪
「お~お前か♪久しぶり」
妻は手の甲にカナリアを乗せて頭を優しく指で撫でていた……その姿に私は幸せを感じ長い悪夢であった夜が明け、毎日降り続けてる様に感じていた心の中の雨も上がった気がした。
「今日のご飯は唐揚げにしよう」
と妻はカナリアの頭を撫でながら言った『今それ言う!』
(このオカリナは彼女にだけ懐いている、美砂はよく突っ突かれていた、私は一応は認められてる見たいだ、そういえば……瀬田さんもよく突っ突かれていた・汗)
そして全ての責任は自分にある事を感じ心に影が差したがすぐにもう後ろ向きに考える事はけしてしない様に心に誓った。
妻のフリをし、嘘つきで狼少年の私が題名まで付け、少し加筆した、その小説はその後、妻の手で再び再開し今も続いている、
妻いわく今、書いている物語は先日に亡くなった黒猫がモデルとして登場してる事ともあり、淋しいと言う理由でしばらくは終わらせる気は無いとの事だ。私もたまぁにアイデアを出している、大半は没にされるけど……
拝啓、
毎年、蝉の鳴き声が聞こえてくると、あの夏の日の、夢の様な不思議な体験を今も思い出す……敬具
作者・彰
[狼少年未来録・完結]
登場人物
主人公の青年 影山 彰
同居人の女性 津島 美砂(偽名)
妻 仙 岳美
妻の友人 瀬田 鳴海
関連作品
①グローム(作・彰)
②【孤独と真の孤独】(作・仙)
③傘と心の鍵(作・仙)
④金魚鉢(作・彰)
⑤運命の渦と未知の使者(作・彰)
⑥光と影そしてオカリナ(作・彰)
リンク短編シナリオ
⑦【まよいが】(作・仙)
⑧【青年呪術師】(作・仙)
⑨3級・メフィスト(作・彰)
=解説と後書き=
物語がややこしいのでシリーズの繋がりを解説します。(最近、自信で読み返したら私の小説は説明しないと理解はまず難しいと思いましたので)
※蝉と少女(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※師の教えと狼少年(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※〈師の狼少年・外伝録〉(作者が現実体験をネタにして書いた創作作品・完)
※狼少年現代録(右3作品の作者(仙岳美)が自分の事を創作も交えての自伝・完結)
※狼少年未来録(創作)他リンク3作品。
※※重要・あくまで[未来録]は[現代録]の続きの話しでは無く(そう見えますが)半自伝の[現代録]を書く作者を含む物語を物語(未来録)の中の物語として見た視点での創作世界。
(※作者は現代の現在で残念ながら独身ですしね)
[孤独と真の孤独]他リンク3作品は現代録と未来録では少し見方が変わって来ます。
[孤独と真の孤独][まよいが]は、
[現代録]では半ノンフィクション。
[未来録]ではノンフィクション。
[青年呪術師]は[現代録]と[未来録]両方の世界で半ノンフィクション。
残りの[3級メフィスト]は[現代録][未来録]の劇中では共に完全フィックション作品。
[3級メフィスト]の作者は[未来録]では影山 彰に変更。(引き継いで青年呪術師の続編を書いた設定)
[現代録]の作者である妻(仙岳美)から小説を引き継いだ孤独な青年この青年(彰)は[孤独と真の孤独]に登場した青年であり未来録では※※再開し結婚している設定、更にこの青年は[蝉と少女]の合作作者の設定)の物語。
ちなみに瀬田鳴海は※現代録・※未来録、両作品で仙岳美の友人の設定で登場しているキャラクター。
総じて現代録は読者及び私の世界ではリアルをネタにした半創作自伝であり、未来録の中での[現代録]は完全なる創作品扱いとなります。……重複しますが、もう少し詳しく説明を説明させていただきますと現代録が物語の中の未来録の世界から見たら完全創作、そして読者やのリアルの次元から見たら半創作、この曖昧な作用で読者の頭の中を良い意味で混乱させ小説の世界に入り込んだ気分にさせる作用を狙った物であります(俺は騙されないぞと言われ方、まぁそう言わずに付き合ってくれると嬉しいです)
話しは少し飛びますが……
なおこのシリーズの小説は作者が三代怪奇小説と言われている、『黒死館殺人事件』・『ドグラ・マグラ』・『虚無への供物』の3作品に憧れ(遠く及びませんが)また物語の最終話を読み終わった時の寂しい感覚がヤデ読み終えた後も心に余韻というか、読書後もリアルに繋がりみたいな物が残せる小説を書けるのかと模索し(途中から欲だしてね)小説と現実の脳内融合(意味不明)を目指し、この取り組みを実現させるのに読者をも物語の中に引入れる必要があり、またそうしたかったので読者と物語の繋ぎに成り得る主役を架空の設定キャラでは無く、読者とリアルで繋がっている『ヤラシイ意味じゃ無くて』作者にする必要がありました(ナルシストとと言われる覚悟で)
この事から未来録の世界から見たら現代録側の読者の方も作者も共にこのシリーズの物語の中の登場人物の1人に成る者だと私しは思います、そして小説の世界に精神的には入れたものと思います。(少し強引)ただし内容はシリーズ全てにおいてリアルの体験を参考にはしてますがほぼ創作と思って下さい、どこまでがフィクションでまたどこがノンフィックションなのかは?それは読んだ方への問いとして残しておきます。
私し自信はある意味で目指していた通りの複雑怪奇なシリーズ小説になってくれた作品であると思います。
最後に、
書き終える事が出来て良かったです~。
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※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
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