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42 ソーサリー・竜人

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42 ソーサリー・竜人

三部

 ユーリ王国が統治する南方諸島から更に南にある大陸その大陸は5割が森林、残り5割は山岳部及び山間部。
その森林部分全てを国土に持つラゴニア王国・通名竜人の国。この国は現在ユーリー王国とは表面上は停戦状態にある。その王宮の間、その間の作りは花の装飾がメイン作りのユーリー王国とは違い、間の四方の柱は竜の鱗彫り、カーテンは金色、玉座、その玉座の下に敷かれた絨毯も虎や豹柄であしらわれ全体的に南蛮風である。
その玉座には見た目は人間の金髪の好青年の姿である、今年二百歳になり人間で言うと二十歳になる若き王をシュリアは足を組み片膝を付き座っている。その玉座の少し斜め前に横に立つ、王の補佐役の女性は美白肌のホッソリとした背の高い切れ長の一重で鼻は高く、白髪ボニーテールで服装は簡素なシルクの上衣とパンタロン(ズボン)腰には金色の細いチェーンベルトを締め、茶皮のヒールサンダルを履いている。
背には先端がドラゴンヘッドに装飾された美しいゴールドロッドを背負っている。
その女性も遠目に見た姿は人間の女性である。
瞳孔が縦に割れるその瞳以外は……
王の目の前には跪く、身体全体か細かい鱗に覆われた一人のリザード兵、その兵の身体の鱗肌は徐々に薄れ、少し青みがかった肌に変質し口の形も獣から人間に近い物に変質し数回口をパクパクした後、用意が整ったのか、リザード兵は喋りだした、
「王様急報告です! 双龍のダフ様が戦死しました」
「何!」
思わず王は立ち上がった、
「何者が!?叔父は竜化できるんだぞ!」
「それに同行したガルーダの王、ガルアも討ち取られた模様です、両案件ともユーリー王国が関わってる模様です」
「何故? ユーリーとは停戦中のはずだが」
「ダフ様が最後の時に転送された竜眼の映像を分析したところ、表向きは賞金目的のハンターとの私怨からこの惨事に発展した形の模様ですが、少し怪しき点が見られるので詳細を説明させて頂きますと」

※省略
「カクカクシカジカ」

「生き残りの竜騎兵!? 二人共か?」

「可能性はあります、両者ともに使用している武器が伝わっている竜騎兵の物にデザインと性能が酷似してます」

「……わかった下がれ! 追って沙汰を下す」

「はっ!」
リザード兵が部屋から退出したの見届け、
溜息を吐き、横の補佐役である女性に、
「メビア、どう思う?」

「まずはその竜騎兵の子孫の蛇人の生き残りが気になりますが、それよりも陰謀を感じ不安に思いました、その報告の冒頭に出て来た老人が黒幕の手先、それはすなわち……」

「裏でユーリーが手を引いてるか」

「おそらく」

「……」

「この件は、ユーリーに抗議しますか?」

「……まあいい、最後の竜化できる竜人である叔父が死んだのは、戦略的に大損害だか、あの二人は王の俺を軽んじ、どこか暴走してる所があった、決定的な問題を起こす前にいなくなってくれて良い気もする、だいち抗議しても意味はないだろう、悪いと思ってれば何かしらの連絡は既に来てるはずだ、それが無い所を考えると……竜化できない王はここ迄舐められるのか、俺も国も落ちた物よ……人間の血は怖い物だ、一回何処かで混ざると、世代をかけてその種、特有の力を消してしまい最後はただの知性以外に取り柄の無い、弱い人間にしてしまう……ただその弱さ、身体は脆いが、奴らが神の目を盗み奪った禁断の果実から得た最大の力、知力と結束力……」

「……気を落とさないでください王様、兵力の数も質も負けてはいません、私達の方が優れていますし」

「……我が一族が天から遣わされた使命は、神の目を盗み禁断の果実を食べ、追放された人間が更に地でも目に余る行いに神罰が降り、人間にその禁断の果実を食べるという、大悪事を勧め、共に天から追放された蛇人の壊滅と伝わってるが、地球で他の生き物を必要以上搾取するだけの人間は既に食糧としてある程度の種を飼い慣らし数の調整、時には保護をし神に近い行為をおこなっている、それ自体もう地球に馴染んでしまっている今、征伐の神的大義も揺らいでしまっている、いやもう意味はなさない……」
メビアは王を見つめている。
王は溜息を吐き、
「どの道、急な事、故に、周りの動きを少し見てから考える事とする、戦争はいつでもできる、情けない王だと思うか?」

「いえ、今必要な事は慎重になる事だと思います、ただ王を殺されたガルーダが報復戦に出る可能性は高いと思いますが、そうなると同盟上参戦する事になるかと」

「その時は適当に捨て兵を与えて置けばよい、戦況が有利なら本格的に参戦する! 馬を用意しろ、滝を見に行く、お前も付き合え」

「はっ!」

『兄者さえ健全でいてくれたら、こんな事には……』

白馬に跨った二人の竜人は夕日で赤焼けた草原を駆け抜けて行った……
その姿は何か儚く幻想的で恋人同士の様でもあった……[続]
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