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28 ソーサリー・ギルドガール

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28 ソーサリー・ギルドガール

 結局は俺が精神的にマロンを人質に取られた感じで折れ、爺さんと依頼書を受付の所迄持っていた。
受付の女性は無症状で手続きをしている……最近どうも俺にこの受付ガールは冷たくなった、毎回これじゃ、やりにくい、少しコミニュケーションを取った方が良いと思い話しかけてみた。
「こんにちは、調子はどう?」
「普通ですよ、貴方こそ来ないだ報酬受け取りに一緒に来た子とはどうなんですかー 今日は姿見えないですけど」
「あ、あの子は、この爺さんの孫だよ」
と、つい恥ずかしくなり嘘でもないけど、そんな事を言ってしまったら女の顔が急に緩み笑顔になった。
「そんなんだ~ 私、彼女できたのかと思ったわ」
(え! 彼女なんだけどね……爺さんの孫では確かにあるけど……)
「はい! 頑張ってね」
と急に愛想が良くなり、俺にギルドの印が押された依頼書を手渡してくれた……
(前えはいくら口説いて相手にしてくれなかったのに今頃色気を見せられても…やはりドラゴン倒した男はモテるな~ ただ今度はマロンとの関係性バレたら大変だぞ、完全に無視される……
ハッキリ言った方が良かったかな……)

受け付けカウンターから少し離れたら爺さんは、俺の肩に手を回し、
耳元で「お前モテるのう」と囁き、懐から取り出した一発装弾の豆銃を俺の腹部に押し付けてきた。

「わかっとるのう」

『でたよマフィア』(汗)

 ギルドに併設されている酒場で昼飯を取りながら、爺さんと作戦会議をしたが二人共吸血鬼を相手にした事も無ければ見た事も無い素人である。
作戦会議の内容もハッキリ言って手探りである。
かつては吸血鬼ハンターと言う輩達が存在したそうだが、現在は絶滅している、取り敢えずは吸血鬼討伐記として伝説的に伝わっている代表的な物(アイテム)は用意しておこうと思い、各二個ずつ、ニンニクと小さいキーホルダーの十字架を用意した(ナメてるよね)聖水は近くの教会でお願いしたら、シスターが『勇敢な事ですね、感心します』と無料で香水の空き瓶に詰めてくれた。
聖水は色は神々しいくゴールドだった、流石聖水!
ちなみに銀の杭はどこにも売ってなかった……鍛冶屋に特注したら強度のある銀の釘を作るのは手間がかかると言われ、見積もり価格も高額だった為、断念し。鉄の十寸釘(長さ三十センチ)を二本、代用品として用意した。

 次の日の朝、マロンにはギルドの簡単な仕事に行って来ると言い、待ち合わせした港から老人の木舟に乗り、吸血鬼島へと向かった。マロンは仕事の内容をしつこくは聞いては来なかった。
彼女は本来はインドア派のタイプの性格で、ドラゴン討伐の報酬を受け取る為、最近事務的にギルドにハンターとして登録はしたがハンターの仕事には無頓着な感じだった。
俺が出発する時も「いってら~」と作業的に言い、アパート前でスコップを持ちプランター(長方形の植木鉢)の前にしゃがみ込み子供の様に土弄りをしていた……
海の上でその子供に見えた横顔を思い出し、なにやら哀愁を感じた。
老人は船先で胡座で腕を組み目を閉じていた、何かその姿は今から勝負へと向かう剣豪の様であった。そして途中でエンジンが壊れた木舟を漕ぐのは俺だった……(寝たフリしてないで、お前も漕がんかいー)
[29へ続く]



開示情報・ギルドガール
 国営のギルドに雇われた事務員、採用条件は多少の剣技と体術を身に付けている事と各地に設けられた大半のギルドが酒場と併設している事から酔っ払いの裁き方が上手いと面接で評価された者。
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