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26 交渉

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26 そーさり・交渉

「爺さん身体は大丈夫なのか? 火に包まれた感じだったが」

「ワシとて無謀では無い、万が一の危機を脱する奥の手は用意してたんじゃ、詳しくは言えんがのう、軽く彼方此方火傷は負ったけどの」

(やはりロール盗んだな……)

 一階のリビングに降りたらマロンが爺さんがやりたい放題に散らかした後片付けをしていた。
「お、マロン昨日は戻らなかったから心配してたぞ」
「心配してた人にしてはやりたい放題やってますね」
「寂しくての、つい久々に色々と豪快にやってしまったワイ」
(孫がいないから家にコンパニオン引き込むチャンスだと思って呼んだだろな…ホテル代も浮くし…)

「ところでマロン、なんでコイツと仲良くなったんだ?」
(コイツって…口悪いな、打ち合わせ通り頼むぞ、マロン)
だが俺の思いとは裏腹にマロンはモジモジして何も言わない!
(おい!)
爺さん察してしまった…
「は! まさかマロン」
「はい、想像の通りです、お爺ちゃん…」
(あ! イキナリ言っちまいやがった、打ち合わせと違うでしょマロン!)
「あーそうか、そんなのか」
と爺さん天を仰いだ後、壁の方を向き一人壁ドンをしてうつむき眉間の辺りを押さえてブツブツ言っていた…
(効いてる、効いてる)
そして俺の方をチラッと振り向き手招きをし二階に上がっていた、俺は付いて行った……
殴られるかと思ったが爺さんは俺の首に手を回して来て耳元で囁いてきた、
「で、どうだった、マロンは?」
「どうだったと言いますと?」
「味と言うか、具合と言うか、それだ」
「え! それは祖父の貴方でも知る権利はありませんと思いますが」
「なんじゃ、あそこまで育てたのはワシじゃ、少しくらい知っても、いいじゃろ」
「そう、言われましても…」
「横取りしてといて、それはないだろう」
「横取りって、あんたは孫と、どうなるつもりだったんですか?」
「言葉の綾じゃ気にするな、で、本当のところどうだったんじゃ?」
「…しょうがないな、本当に少し触りだけですよ」
「おお! わかってくれたか、そうじゃ少し触りだけじゃ、で、最初はどこ触ったんじゃ?」
「えーと、たしか…」
「あの~そのくらいにしてください、ヤラシイです、気い狂いそうです」
いつの間にか後ろにいた、マロンが口を挟んだ。
マロンの手には本気の紫電が竜の様に絡み着いていた。
「…」
「…」
爺さんと飛び火を喰らった俺は黙ってリビングに降りた。

 爺さんはため息を付きソファーに座り
「まあ来る日が来たんだな、お前…えー
と、たしかマーク君とか言ったかな? 羨ましい」
それを聞いたマロンかムッとした顔し、
「おじいちゃん、羨ましいてなんですか?」

「……若いお前らが羨ましいと思っただけだ、何を勘違いをしている、急に冷たくなったのうマロン」
「……」
(下着まで荒らされたんだから勘違いもするよな)

俺はそろそろと思い、
「ところで爺さん、ツーヘッドドラゴンの事で話がある」
「わかっておる、聞こう」
もうマロンとの関係もバレてしまったんで包み隠さず今までの経緯を全て話した結果、俺達が新たに知る事実もあった。
それは、爺さんは都市であの空から落ちて来た竜の死体を見て、その死体がツーヘッドドラゴンの半身だと確信し、元王国の兵士だった爺さんはかつての人脈を頼りに、城塞都市防衛軍に援護砲撃を頼んだ事だった。その後すぐにギルドに討伐完了の申請はしていた。(さては爺さんは独り占めする気だったな……)
ただギルドの方では死体のドラゴンが本当にツーヘッドなのか? また討伐に関わってる者は他にいるのか? 色々と調べて検証する必要があると言われ問題が無かったとしても報酬の支払いはまだ先になると言われたそうだ。

まあ爺さんはどの道転んでもいくらかは貰えると打算してエルフコンパニオン迄呼んでこんなに豪勢に前祝いやったのだろうな……
取り敢えずはお互いのここ数日の状況を報告し合い、ひと段落は着いた。

 そしていよいよ話しは本題に入った。
「とりあえずはよくやってくれた! ワシはお前は見込みはあると思ってたんじゃ、で、早速だが皆んなワシのファミリーではあるが、金は別だ、ビジネスの話しをしようかのう」
と爺さんは懐からサングラスと葉巻を取り出してモードを切り替えて来た…悪だね~
交渉は予想通り難航した、爺さんは最終的にツーヘッドを倒せたのは自分が機転を利かせ援護要請して、おこなわせた砲撃の成果だと主張し、自分が6割、俺とマロンの取り分は2割と言って来たが俺は最初の分配は半々だったはずで、マロンが加わった今でもキッチリ三等分にするべきと主張をした事と、マロンがロールの事を持ち出しその事をチャラにする事を条件に交渉した結果、爺さん4割、俺とマロンは3割で落ち着いた。

 ちなみに元の依頼主は王国国防省で、ドラゴン討伐の依頼自体は知っての通り爺さんが王国の兵士だった時からまだ繋がっている人脈を頼りに、爺さんから提案し渋々半信半疑の軍幹部を話に乗せて出させた依頼だったみたいだ。
マロンから勝手に持ち出したロール頼みである事は言う迄もない。

 そしてこの後、俺とマロンが事の顛末を正確にギルドに伝えた事で手続きはスムーズに進み一週間後にはギルドを通じて報酬は問題なく受け取る事ができた。
報酬額は命をかけた無謀な戦いをした割には正直安い気もしたが余り欲をかいてもと思った事と、世の中はそんな物なんだろうな~と思う事にした。

 余談にはなるがマロンと俺が倒したガーゴイル三体のうちの一体はwantedlistいわゆる指名手配者一覧表に載ってた個体でその分の報酬はマロンと俺がそのまま全部受け取る事はできた。

 
 唯一の不満は竜に援護砲撃した国の手数料と最初に地に落ちた竜が正規の国道に落ちた事で壊れた道の補修費を報酬から引かれた事だった国もセコイな~と思ったりして……
一部完[話しはまだ27へ続く]
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