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25 坂道

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 コテージから本宅へ戻る途中の上がり坂でマロンが爺さんが生きていた理由を推測した、話を聞いたらほぼ当たってると思った。
その話しは…
「おじいちゃんは私が持ってた究極兵器召喚ロール以外に緊急脱出魔法のロールも勝手に持ち出してたんですよ」
「その脱出ロールってワープ系」
「はい、そうです、使い方は先にロールに書かれている呪文を唱え、後はロールに戻りたい場所をイメージしながらその住所と起動するための合言葉を書き加えます、後は身に着けてれば、良いだけです、合言葉はなんでも良いですけど『あ』とかの一文字だと誤発動を起こす可能性があるので大体はイチタスイチハニとか少し長めにします、言うまでもなく長すぎると緊急脱出の意味は無くなります」
「便利だね、そのロールもやっぱりあのランダムで出現すると言われてるソロドバの迷宮の遺物?」
「はい、二枚共、古道具屋で私が買った机の隠し入れの中に忘れ去られ入ってた物です、勿論、話したら欲しがるのでおじいちゃんには内緒にして二枚とも納屋と家、別々の場所に隠して保管してたんですが何故隠し場所を知ったんでしょうね? それも一つの方の隠し場所は私の秘密の下着を入れてる所…」(さっき見せてもらった凄い下着ね、しかしあの爺さんは孫の下着を探るなんて変態だろ、後、最初から隠す場所が甘いと言うか上手く隠す魔法ないの?)
「俺も欲しいな」
「え!」
「下着じゃないよ! ロール」
「現代は失われた魔法を使える魔法ロールは欲しくて簡単には手に入らないですよ、一回使ったら燃えて無くなっちゃう貴重な物なので、皆んな手に入ったら家宝にしたり額に入れて飾ったり、コレクターの方も沢山いますし普段は高値で売買されてる物です、私もお金に困ったら売ろうとしてたのに酷い…」

そんな話しをしていたら上空を二体のエルフが飛んで島から離れて行く姿が見えた、彼女らも仕事を終えたのだろう……二体もいっぺんに相手にして、元気だな爺さんは。
ちなみこれは余談になるが、俺が性的に相手するの人間だけだ、エルフはどの個体も容姿が人間と違い、さほどバラツキはなく、綺麗だが一つ俺が気持ち的に拒絶反応を感じる箇所がある。
それはエルフ達は飛ぶ時意外は背にある羽根を普段は身体の内部に収納している。その為の背にある二つの格納器が人間女性の生殖器に似ている。その格納器も虫の羽根そっくりな羽根も両方共どうも俺は生理的に好きになれない。
反対にそれが色んな意味で良いと言う人もいる……
後は読者の方々の想像にお任せする……

程なくして再び玄関ドアの前に立った。
「私が先に入りますね」
「おう、爺さんは俺の事は知ってると思うけどマロンとの経緯は取り敢えずは…その~ 身体の関係と言うのか、その事は隠して紹介してよ」
「別に、いいじゃないですか?」
「取り敢えず、お金の話しをする前に爺さんの感情を揺さぶる様な情報は知らせない方がいいと思うだ、賞金の分配が来まったら時期を見てさ」(半分は少し怖い)
「わかりました、そうしますけど、事実は事実ですからね!」
「わかってるよ」
と中に入ったらリビングには爺さんはいなかった、ソファー前の低いテーブルの上には喰い散らかした食べ物やワインの空瓶は転がっていた、他にはエルフの悪戯と言われ人間が服用すると身体の全身に迸る快感と引き換えに何かと周りに迷惑かけるおかしな行動をしてしまう副作用を起こす事例から王国法で禁止され白い粉、それを吸い取るために使用されたストローも散乱していた……真面目に悪してるね。
「二階の寝室にいますよ」
「俺、見てくるね」
「上がって手前の部屋です、奥は私の部屋です」
俺は二回に上がり、言われた部屋のドアノブに手をかけた、鍵はかかっていなかった、最低限のマナーとして声がけとノックをしてみた…が反応はない。
ドアをユックリと開け、中を覗いたら薄暗い部屋の奥にベッドは見えたが、そこに爺さんの姿は見当たらなかった。
だがこの部屋で直近に淫らな事が行われていたと感じる臭気はまだ残っていた…(人の事は言えないけど、と付け加えて置く)
『屋根裏の倉庫かな』と思った時、背に何か鋭利な物が当てられた感触を感じた。
俺は抵抗の意志がない事を示す為に両手を上にあげた。
後ろから脅される様な低い声質で話しかけられた、
「お前は誰だ、何の用だ」
「爺さん、俺だよ、島でドラゴンと共に戦った」
「お、お前さん、生きてたのか!」
「それは俺のセリフだよ!」
「……だが何故此処がわかった?」
「それを今から話すから、とりあえずその痛いのを仕舞ってくれよ」
「……」
「お孫さんも下に帰って来てるよ、マロン君と友達になったんだ、信じてくれよ」
マロンの名を出したらやっと爺さんは刃物を背から離してくれた。
(この爺さんは誰かに命でも狙われているのか? まったく)

[26へ続く]
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