上 下
15 / 26

15 少女を腕の中に

しおりを挟む
15

 双頭竜は首と尻尾をダランともたげた……
そして二つの首の生え際の中央の辺りからゆっくりと身体が裂けっていた、唯、翼はまだユックリと羽ばたいている……
そしてバリバリと音を鳴らして右首の方の部分が剥がれ落ち下に落下していた、当然、残った半身の方も直ぐ全ての生命活動を停止して落下すると思いきや!
裂けた断面から手、足、翼が瞬間的に生え! もたげていた首と頭が再び上がり出した。
そして目も再び光を取り戻した。
それは脱皮の様だった……

双頭竜から頭も尻尾も単一になり普通の竜にその姿は変わった。唯、体の鱗は全て落下した半身に持っていかれ全体は皮を剥がれた生き物の様になっていた。
そのゾンビの様な竜は上空から睨みつけてきた。
何かその目は双頭の時とは違い知性を帯びた様に感じた。
口元はニヤリと笑った様に思えた……
その時、ピッキーっと耳鳴りを急に感じた。
耳鳴りは俺だけではなかった、横でマロンも耳を塞いでいた。
頭の中で何者かの声が響いてきた……
《おい、やってくれたな、何百年ぶりに半身を捨てたわ》 

…俺は頭の中で竜と会話を始めた。

「お前は何故? 死なない」
 
《……ここまで俺を追い込んだお前に敬意を称し教えてやる、お前はどうせもう死ぬしな! …たしかに死んだよ、半身はな、我を完全に殺すには首を二つ切らなければ殺せない、再生を繰り返えす、我を亡き者にしようと昔は大勢の戦士が王国から差し向けられて来たがどいつも首一つすら切れないで灰になったわ! 一人だけお前と同じやり方で半身は潰す事に成功した者もいたが、その後、結局は絶望して炭になった、そう言う事だ》

トカゲの尻尾切りかよ、まいったぜ……
刃は、もうガタガタだった…弾も使い果たした、竜を舐めていた…
勝手に相手の弱点を都合のいいように決めつけていた……
俺は馬鹿だ……
ダメ元で交渉をした。
「もうこの辺で引いてくれないか! 頼む、今後は絶対にお前には手を出さない」
《それはできない、お前らはガーゴイルを三体も殺した、それも王をだ! 同盟関係にある種族を殺した相手は殺さないといけない》
「じゃあなぜ、今から殺す相手にわざわざ話しかけて来た?」
《聞きたい事がある》
「……」
《お前は、我々が昔、国ごと滅ぼした竜騎兵の生き残りなのか? お前が羽織っているそのマントと武器は間違いなく竜騎兵の物だ、お前は竜騎兵だろ》
「知らない! このマントは人から貰った物だ、武器は先祖から引き継いだ物だ」
《……嘘は言ってない様だな……マントをお前が手にしたのは偶然でもその武器は……お前は竜騎兵の子孫だ! そして我が一族の宿敵、まだ未熟だが脅威は十分に感じる、育つ前にここで死んでもらう! ハッハハハハ》
耳鳴りが強くなって来た!
『頭が割れそうに痛くなり始めた』
マロンはうずくまり動かなくなってしまった、痛みで気絶した様だ……

俺は頭が割れそうな中、頼んだ!
「頼む! 彼女は見逃してくれ、俺が金で雇った唯の案内人だ、関係は無い!」

《その女の槍捌き捨ててはおけんな》

竜は口を開いた、その口の中は輝き出した、もう話しを聞く気はない様だ……
俺は彼女をマントで覆い目を閉じ観念したが彼女は助けたかった最後にできる俺の事は奇跡を信じ神に祈る事だけだった……

ドン! ドン! ドン!
イキナリ爆音が周辺に響いた! 
そして耳鳴りが急に止んだ!
見上げたら竜の頭は無くなっており、身体は火を吹いて燃えていた…

 どうやら竜の半身が街に落下した事で上空の異変に気づいた、城塞都市防衛軍が砲台で援護射撃をしてくれた様だ……

俺はその時、安堵の余り脱力し膝を着き涙を流した……
その涙は腕に抱くマロンの頬に落ちた……
彼女は目を覚まし震えて俺に縋る様にしがみついて来た、俺は彼女を抱きしめた……

脱皮した直後は身体が柔らかく、
一番危険な事は竜でも変わりは無かった……
そんな事も長く生き過ぎたせいなのか? 忘れ、油断し、死んだ哀れな竜の死体は落下しっていった……

急に訪れたあっけない死闘の幕切れだった……
案外戦いとはこ言う物なのかも知れない……
そして歴戦の強者でも戦いに身を置いているのならば弱い強い例外なく死は突然に訪れるのは自然な事なのかもしれない……

《16へ続く》
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...