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⑧武装する俺

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⑧そーさりー・武装する俺
 
 ニ階はコの字の間取りでコの字の中に部屋が二つ。コの字通路に沿って部屋の裏側の突き当たりに回ると屋根裏に繋がる四角い空間にハシゴがかかっていた。
「どうぞハシゴを上がり好きな物を探してください」
「マロンは来ないの?」
「ハシゴを上がってる時、下からあなたに見上げられるのが恥ずかしいんです!」
「なんで?」
「なんでって……言わせようとしてます? 痺れますよ」
「状態だよ、ごめん」
(なんか話し振っといてノリ悪いだよなこの子は……まあまだ子供か)
「私は下で自分の用意をしておきます」と彼女はリビングに降りて行った。

屋根裏部屋は薄暗かったが小さい小窓から見張らせる島の景色は中々爽快で良かった。
この部屋で趣味に没頭し、時折息抜きに、この景色を見れたら最高に思える。
取り敢えず皮の鎧を探したが本格的な物は無く服の上から装着するベルトタイプの肩パッドと心臓の部分を守るだけの簡素な物はあったのでそれを装着した。
やはり軍では暗殺や偵察作業が主な仕事である、魔法剣士の装備は軽量なのだろう。でも動きやすくこれはこれで良いと思った、魔法剣士にも一時は憧れたが修行をやってみると俺に魔法は向いて無い事かわかった。習った先生にも半年程で向いて無いので辞めた方が良いと言われた。先生の話によると魔法は向いて無い者がいつまでも執着してると精神が壊れる事があるらしい……俺の事を思っての言葉だろうと思う。
弾薬は炸裂弾を選んだ。
皮の硬いモンスター類には基本破裂系の弾じゃ無いとダーメジは与えられない丁度六発あった。
後は軽量の鉄兜・小物入れが付いた皮のガンマンベルト・ブーツ・薄い革手袋を頂戴した。他に色々な物が置いてあったが全部見ていると切りが無いのでこのくらいにして下に降りた。

リビングで彼女が白いローブ姿で待っていた。胸には丸めた絨毯を抱え、額にサークレットを装着し背中には先端が球体を咥えたコブラの形を模したシルバーの蛇杖を肩掛けて背負っていた。
剣は帯びていない。
俺は彼女に頂いた物を伝えた。
「それだけで良いのですか? 意外に欲が無いですね」
「余りもらっても持ちきれないしさ」

彼女は俺を上から下まで舐める様に見て、
「うーん少し待っててください」
と2階に上がりマントを持って降りて来てそれを俺に渡し、
「風になびかない防炎効果のある古の竜騎士のマントです、羽織って置いて下さい、これで用意は済みましたね」
「おう!」
彼女は頷いた。
俺も頷いた。
「では庭まで」
「絨毯持つよ」
「すぐそこですからいいですよ、お心だけで、優しくしても何も無いですよ」
「俺は大陸に渡る迄、マロンの気分を害さない様にしてるだけ」
「心配しなくてもいいですよ、ちゃんと送り届けます、マークさんを面倒な事に巻き込んだのは私の祖父ですし、それに翡翠も貰いましたし」
と彼女は左手を俺の前に差し出しニッコリした。
中指には指輪に加工された翡翠が光っていた。💍
俺は少しからかって見ようと思い、
「良く似合ってるよ、君も指輪も美しい……」
「……」
彼女の顔は赤くなった……
そのまま黙って外に出て行ってしまった。
解りやすく単純だな、案外チョロいかも彼女の若い成熟し始めた身体を思い出した……(真顔)
[⑨へ続く]

開示情報・竜騎兵のマント

 マロンの家に伝わる竜騎兵のマントそのマントは風を受け流す効果があり突風の中でも身に付けてて邪魔にならない、また防火効果も兼ね備える。家に伝わるマントではあったがマロンはあっさりマークにあげてしまう。
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